<大相撲九州場所>◇12日目◇20日◇福岡国際センターウクライナ出身の関脇安青錦(21=安治川)が初優勝し、大関昇進を確…

<大相撲九州場所>◇12日目◇20日◇福岡国際センター

ウクライナ出身の関脇安青錦(21=安治川)が初優勝し、大関昇進を確実にした。

本割で大関琴桜を内無双で倒して12勝3敗。優勝決定戦は横綱豊昇龍を送り投げで破り、賜杯を手にした。戦禍を逃れて来日して約3年半。初土俵から所要14場所での大関昇進は、琴欧州の19場所を抜いて史上最速記録(年6場所制以降初土俵、付け出し除く)。あこがれていた大相撲の舞台で結果を出し、母国に朗報を届けた。

◇    ◇    ◇

安青錦の師匠、安治川親方(47=元関脇安美錦)は、弟子の初優勝をかみしめた。福岡県久留米市の部屋の千秋楽パーティー会場で安青錦を出迎え、「おめでとう」と声をかけて抱き合った。

22年12月1日付で伊勢ケ浜部屋から独立し、安治川部屋を新設してから初めての幕内優勝力士が誕生。「よくやった。自分で(優勝を)つかみ取ったと思う。本人の強くなりたいという思い。それが稽古を重ねてきて結果になったのではないかと思います」。

もともと、外国出身力士は受け入れない意向だった。外国出身力士の所属枠は、原則的に1部屋1人。不在の部屋には、世界中から有望者からの売り込みが絶えない。安治川親方は入門希望者を断り続けていた。

どの部屋も1枠しかないため、学生相撲で実績があったり、運動神経に優れて体の大きい有望な新弟子が入る。多くの兄弟子たちが一瞬で番付を抜かれていく。相撲文化を理解していないと、いざこざが生じる場合もある。安治川親方は「初めは受け入れる気はありませんでした。断っていました。まずは、部屋の基盤を作らないといけないから。下の者に教える人を育てなきゃいけないので」と話していた。

ところが、信頼できる人からの勧めで考えを変えた。報徳学園の元監督、福田耕治さんから紹介があった。それが、安青錦だった。

「私が高校の時から(福田氏を)知っていて、その方が勧めてくれたので、じゃあ1度お会いしましょうかと。ただ話を聞くだけと思って会ったんですけど、いい目をしていた。真っすぐな目をしていた、すごく相撲が好きだという気持ちが伝わりました」

安青錦は22年4月の来日後、関西大や報徳学園中高の相撲部で稽古を積んでいた。間近で見ていた福田氏の勧めなら信じられた。

「日本に来た経緯とか、出会ったタイミングとか。そういう面では、出会うべくして、出会ったのかな」

22年12月に研修生として採用した。あれから約3年。「これからが大事ですから。一緒に稽古積んで、私もいろんなことを勉強して、一緒に上を目指していきたい」。安治川親方の決断は間違いではなかった。【佐々木一郎】