◆大相撲 ▽九州場所千秋楽(23日、福岡国際センター) 新関脇・安青錦が初優勝を果たした。本割で大関・琴桜を内無双で破る…
◆大相撲 ▽九州場所千秋楽(23日、福岡国際センター)
新関脇・安青錦が初優勝を果たした。本割で大関・琴桜を内無双で破ると、横綱・大の里の休場による不戦勝で12勝3敗で並んだ横綱・豊昇龍との優勝決定戦を送り投げで制した。ウクライナ出身として初めて賜杯を抱き、場所後の大関昇進も確実となった。所要14場所での初優勝は年6場所制となった1958年以降初土俵で2位の速さ(付け出しを除く)。26日の番付編成会議と理事会を経て、ウクライナ出身初の大関が誕生する。安青錦は技能賞と殊勲賞も受賞。来年の初場所は1月11日から東京・両国国技館で行われる。
優勝を決めた安青錦は目に涙を浮かべながら花道を後にし、付け人と抱き合った。本割で大関・琴桜を破り、3敗で並んでいた豊昇龍との優勝決定戦。持ち前の前傾姿勢で、横綱の力強い立ち合いを受け止めた。相手の突き押しをはねのけ、引きに乗じて背後をついて送り投げ。横綱の膝をつかせた。両目を閉じ、歓声をかみ締めた。「言葉に表せない気持ちになった。今年最後の場所で優勝できてうれしい」と喜びを口にした。
14日目を終えて、3敗の大の里、豊昇龍とトップで横並び。しかし、豊昇龍と結びの一番が組まれていた大の里が休場した。知ったのは宿舎を出発する前だったという。「本割で勝たないといけないことは変わらない。本割に勝つことに集中していた」。今場所見せていなかった得意の内無双で琴桜を撃破。ウクライナで過ごした子どもの頃に習得し、得意の決まり手で大一番を制し、優勝決定戦へ。そして年6場所制となった1958年以降で4番目の年少となる21歳8か月での初賜杯を手にした。
ウクライナ出身の安青錦はロシアの侵攻による戦禍を逃れて22年4月に来日した。徴兵対象となり、原則出国が認められなくなる18歳の誕生日が迫る同3月、関西大相撲部主将だった山中新大さん(26)にメッセージを送り、避難した。山中さん宅に身を寄せ、関大や報徳学園中、高校で稽古を重ねた。安治川部屋に入門した2022年12月から3年足らず。本名の「ヤブグシシン・ダニーロ」をもじって「ダーニャ」の愛称で呼ばれてきた新鋭は、映像から相撲を学ぶなど立派な力士へと成長した。「自分の選んできた道は間違いではなかった」。感慨深げに振り返った。
大関昇進を諮る臨時理事会の招集が決まり、26日にウクライナ出身初の大関が誕生する。所要14場所での大関昇進は58年以降の初土俵で付け出しを除くと最速の快挙。「自分のやるべきことをやってきて良かった。さらに上の番付を目指していく」と最高位をも見据える。八角理事長は「もっと立ち合いの当たりが力強くなれば、来年は横綱になって(福岡に)帰ってくる予感がする」と評価。まだまだ伸びしろ十分の21歳。若さと個性にあふれた大関が誕生する。(大西 健太)