<Vリーグ女子:A北海道3-1福岡G>◇22日◇北ガスアリーナ札幌46アルテミス北海道は、福岡Gに3-1で勝ち、24年2…

<Vリーグ女子:A北海道3-1福岡G>◇22日◇北ガスアリーナ札幌46

アルテミス北海道は、福岡Gに3-1で勝ち、24年2月24日以来となる2季ぶり勝利を挙げた。同年3月に全選手が退団しており、全敗だった昨季を経て、新チームにとっては記念すべき初勝利となった。

先にセットポイントを握られた第4セットも、アルテミス北海道にうつむく選手はいなかった。一進一退の末、最後は30-28。ベンチメンバーを含めた全員がコート内に駆け寄り、歓喜の輪を作った。クラブにとっては2季ぶり勝利も、現所属は全員がそれ以降に加わった選手たち。28戦全敗の昨季を経ての初白星に、主将の山田菜那光(23)は「去年から待ち望んでいた勝利。本当にうれしいです。絶対に勝ち取るとみんなで決めていた試合だったので、確実に勝利をつかめたのはうれしかった」。両チーム最多の26得点を挙げた久保花音(20)も「鳥肌が立つくらい」と喜びに浸った。

昨季から強化を重ねたディフェンス面では善戦を繰り返してきた一方で、青島賢司監督(37)は「点の取り方が今季のポイント」と言い続けてきた。11月に入ると、山田をオポジットからミドルブロッカーにポジション変更。旭川市大時代に経験のあるポジションとはいえ、山田にとっては「すごく難しい」挑戦だったが、ミドルからの攻撃力がチームの課題であることも認識していた。指揮官の提案を受け入れ、「わからないところは他の選手と話して補って」新ポジションに対応。この日も5得点を挙げ、何度もブロックに飛んだ。

今季6敗目を喫した後、青島監督は選手たちに「相手を見る時間を1秒でも長く」と声をかけた。「みんな一生懸命打ってるんですけど、相手あってのスポーツなので。どれだけ相手がいないところに打てるか、相手が嫌がることをやれるかが大事。効率の悪さみたいなところはあるかなと思った」。強打がブロックにかかり、レシーブで拾われ、結局ラリーの末に点を失ってきた。そこで選手に求めたのは、駆け引きで得点を重ねること。この日26点と爆発した久保は「相手が何枚ブロックなのか、手の出し方(はどうか)が今日はしっかり見えていた」と胸を張った。

その久保は10月25日の開幕戦、相手の徹底マークに合い、アタック決定率13・3%でわずか2得点と苦しいシーズンの幕開けだった。責任も感じ「気持ちが落ちた」というが、「まだ始まったばかりだから」と前を向いてきた。クラーク高1年時から主将を務め、大声を出し続けてつぶれたのどは、いまも治らない。「みんなに酒焼けだって言われます」とガラガラ声で笑うが、真摯(しんし)にバレーボールに打ち込んできた“勲章”でもある。

チームは昼間にそれぞれが仕事を抱え、夜に集まって限られた時間で練習を重ねる。開幕前、山田主将は新加入のセッター長尾のどか(27)とともに、各選手に学生生活の係活動のような“役割”を与えた。「ひとりひとりが責任と自覚を持たなければいけないと思った」(長尾)。社会貢献活動を考える係や週刊MVPを決める係など、それぞれは小さなことでも、チームの仕事を分担することで、杉浦由奈(24)は「誰かのために…って考えるようになった」、丸山桐果(19)も「チームメートのことを見るようになりました」。自然とコミュニケーションが増え、チームとしての結束を強めていった。

昨季から数えて35戦目で、ようやくつかんだ1勝。山田と久保は「この1勝は大きい」と声をそろえる。青島監督は「勝ちきるというところでは悶々としていたと思う。肩の荷が下りたというか、もうちょっとリラックスして、冷静に試合ができるきっかけになるのかなと思います」。23日も同じ福岡G戦。若く明るい選手たちだからこそ、連勝で上昇気流に乗る。