駅伝大会の「周回コース化」が各地で進んでいる。これまでは公道を使用することが多かった中、近年では各カテゴリーを問わず、大…

駅伝大会の「周回コース化」が各地で進んでいる。これまでは公道を使用することが多かった中、近年では各カテゴリーを問わず、大会運営のスリム化や選手の安全対策を優先し、公園内の周回やトラックレースに切り替えるようになったが、同時にミスやトラブルも浮き彫りとなっている。「やっぱり駅伝は公道を使ってこそ」-。公道実施が制限されていく中、各大会関係者も頭を抱えている。

3日に開催された東日本実業団対抗駅伝。2008年から20、21年を除き、埼玉県庁スタートから熊谷スポーツ文化公園陸上競技場ゴールに公道開催をしてきた。

しかし、大会関係者によると、近年、大会運営費の高騰、長時間の公道使用による地域住民への影響や安全面、大会役員の確保など課題が出ていた。そのため、今後は熊谷スポーツ文化公園内の周回コースでの実施に切り替えた。

来年正月の全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝)の予選を兼ねた重要なレースの1つ。公道実施なら、1本道を走るのみだったが、今回のコースでは区間によっては、園内の周回数が異なる。

最長3区(16・4キロ)で区間3位と好走した富士通の篠原倖太朗(23)は「なかなか難しかった」と話す。4度の折り返しには戸惑ったというが、「前との差はすごく確認しやすいので、1周1周すれ違うところで『どこら辺ですれ違ったか』を1個前の周回で覚えておきながらやれたのは、なかなかやりやすかった」。工夫に努めていた。

周回コースでは同じ走路を何度も通過するため、上位争いのチームと、周回遅れのチームが混在することになる。選手の判断力だけではなく、運営者による誘導の正確さも求められる。

3日に行われた全国高校駅伝と関東高校駅伝の予選を兼ねた神奈川県高校駅伝では、男子のレース中に4校の選手を走路員が誘導ミス。正規のコースを外れて次走者に中継したことで、記録無効となる悲劇が起きた。

4区終了時点で、全体4番手につけていた三浦学苑の5区の選手もその誤誘導に巻き込まれた。大会前にコースチェックを徹底して臨んでいたが、走路員から2度にわたって、正規のルートとは異なる走路へと促されて、ショートカットする形でタスキをつないでしまった。

すでに同校は、神奈川高校体育連盟陸上専門部からは謝罪を受けたが、大会には救済措置制度がなく、上位6校に与えられる関東大会の出場権を逃した。

日刊スポーツの取材に応じた安井裕紀監督は「選手もまじめに走っていた中で判断が難しい中、大人から言われたら従ってしまう」と言葉を絞り出した。

また、約5年前から周回コースとなった大会については、「もちろん、公道の発着コースの方がいいが、アクセスの問題や自然災害のリスク、警察とのやりとり、生徒の安全面などを考えると難しい」と厳しい現実を受け入れる。

東日本実業団の現場でも、複数選手がコースを間違えそうになったが、すぐに正規の走路に戻るなどヒヤヒヤしたシーンもあった。

かつては沿道のファンの声援を受けながら、選手が区間ごとにさまざまな特徴のあるロードを駆け抜けるのが魅力だった駅伝。東北地方の大会では選手とクマの遭遇を避けるため、トラックレースに変更して行われていた。

ある関係者は「駅伝がつまらなくなってきている」ともつぶやく。学生の箱根駅伝を代表格に日本独自の発展を遂げてきた競技。もちろん、安心安全の運営も必要だが、トラックレースや周回コースで縮小されるのは、選手ファーストの大会と言えるのか。陸上界では模索が続く。【泉光太郎】