ラグビー日本代表(世界ランク13位)が、10年前に歴史的勝利を挙げた強敵に挑む。11月1日(日本時間2日)、英ロンドンで…

ラグビー日本代表(世界ランク13位)が、10年前に歴史的勝利を挙げた強敵に挑む。11月1日(日本時間2日)、英ロンドンで南アフリカ(同1位)と対戦する。国立で25日に行われた秋の5連戦初戦のオーストラリア戦(同7位)は15-19で惜敗。強豪4カ国と対戦する欧州遠征は、W杯2連覇中の王者との一戦からスタートする。金星を挙げた15年W杯で日本代表コーチを務めていた沢木敬介氏(50)が、オーストラリア戦で出た課題と、南アフリカ戦のカギを分析した。

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オーストラリアに勝つチャンスはあった。こういう試合を勝ち切らないといけない。ディフェンスはハマっていた。タックル成功率は96%。218回のうち208回を成功させた。両軍最多24回のフッカー江良(東京ベイ)、2位で23回のロック、コーネルセン(埼玉)らFWが体を張って相手の強みを消した。WTB石田(横浜)ら大外の選手も思い切り飛び出し、1対1で迷わずタックルできていた。雨でパスを回されなかったこともあるが、素早く相手に寄せる戦術が機能していた。防御の第1関門は突破したと言える。

経験の浅い選手にチャンスを与えたオーストラリアより断然強い南アフリカ戦では、タックルの質が求められる。15年W杯でも、防御の“大前提”としていた膝下を狙う低いタックルが効果的になる。南アフリカの選手が「嫌い」と口をそろえる日本の武器を徹底したい。また、前に出る防御はリスクもある。1対1の局面が増えて背後のスペースが空き、初戦では危険な場面もあった。裏へのキックなど、次の手を打たれた時の対応力が第2関門突破のカギを握る。

攻撃のポイントはキック。タイミングは改善されたが精度はまだまだ。相手の頭上に高く蹴る球を多用するが、落とし所を間違えれば19年W杯で3トライのコルビ(東京SG)らにフリーで球を持たれる危険もある。世界レベルでは1メートル単位の精密さに加え、バリエーションも必要になる。テンポがあるうちに背後のスペースに蹴り込むと、スピード感が生まれて、有利な展開を作ることができる。

セットプレーも重要だ。南アフリカはスクラムに自信がある。7月のイタリア戦ではキックオフをわざとミス。反則で相手ボールとなってでも、スクラムで試合を開始させた。相手の土俵で後手を踏まないようにしたい。相手はラインアウトも強いが、高さでは負けていない。かつて日本は小柄とされたが、欧州遠征から合流が期待されるロックの208センチのホッキングス(東京SG)、201センチのディアンズ(ハリケーンズ)ら空中戦が強い選手は多い。

難しい戦いになることは間違いない。10年前は日本はなめられていたが、今回は違う。1度負けており、オーストラリアにも善戦した日本に対してしっかり準備してくるだろう。ホーム、中立国、アウェーで戦い方は全然違う。他競技では敵地で引き分けを狙うこともあるが、ラグビーは白黒はっきりする。環境も変わり負荷がかかるが、タフな4連戦を戦い切ってほしい。(15年W杯日本代表コーチングコーディネーター)

○…オーストラリア戦は今季最高のタックル成功率96%を記録した。昨秋は世界ランク2位のニュージーランド戦で76%、同4位のフランス戦で74%、同5位のイングランド戦で77%と苦戦。今季は7月の同12位のウェールズとの第1戦は87%、第2戦は85%、9月の同9位のフィジー戦は82%と格上相手でも健闘。オーストラリア戦は雨の影響もあったが、高い数字をマークした。

◆25日のオーストラリア戦VTR 雨が降る中、前半はラインアウトやモールに苦戦。イエローカード(10分間の一時退場)も2枚あり2トライを許した。3-14の後半12分にプロップ竹内、21分にフランカーのガンターがトライを挙げたが、15-19で惜敗した。

◆15年W杯の南アフリカ戦 29-32の後半終了間際、敵陣深い位置でPKを獲得し、主将リーチらは同点のPGではなくスクラムを選択した。パスを受けたWTBヘスケスが左隅に飛び込んでトライを挙げ、34-32と逆転。スポーツ史上最大の番狂わせと呼ばれた。