◇米国男子プレーオフ第1戦◇フェデックスセントジュード選手権 最終日(10日)◇TPCサウスウィンド(テネシー州)◇7…

ジャスティン・ローズはJ.J.スポーンとの3ホールに渡るプレーオフを制した

◇米国男子プレーオフ第1戦◇フェデックスセントジュード選手権 最終日(10日)◇TPCサウスウィンド(テネシー州)◇7288yd(パー70)

ジャスティン・ローズ(イングランド)は4月の「マスターズ」で、目の前のグリーンジャケットをさらったロリー・マキロイ(北アイルランド)を心からたたえた。「君がキャリアグランドスラムを成し遂げる姿を見られて良かった」――。

しかしあの時、ただグッドルーザーであり続ける気はさらさらなかった。4カ月後にシーズン初優勝を飾って思う。「プレーオフで負けても、自分のプレーを誇らしくは感じただろうが、オーガスタでのフラストレーションは倍増していたかもしれない」。メジャーでの惜敗の記憶は先月45歳の誕生日を迎えても、決して消えなかった。

一時は3打差をつけられた同じ最終組のトミー・フリートウッド(イングランド)を、ローズは5mを沈めた14番(パー3)から猛追した。6mを流し込んだ17番まで圧巻の4連続バーディ。最終18番で“決めれば勝ち”の4mを外し「67」としてJ.J.スポーンと通算16アンダーで並んでも、プレーオフも終始優勢に進めた。カップの位置が切り直された3ホール目も3mのバーディチャンスを逃さず決着。「最後の90分は驚くべきものだった。ベストプレーができれば、世界屈指の選手たちに勝てると分かっていた」と拳を握りしめた。

2シーズンぶりに手にしたPGAツアー通算12勝目。今週は開幕前に体調不良でプロアマ戦を棄権した。「水曜日の朝は、今ここ(優勝会見の席)に座っているとは想像できなかった」。回復を優先しながら辛抱強くプレー続け、要所でライバルたちを追い込む強さ。「人生は一生懸命になりすぎると、うまくいかないことがある。じっと待ち続けなきゃいけない」というベテランらしさがプレーオフシリーズの大舞台で光った。

優勝した後、手に取ったスマートフォンの向こうにはギリシャ旅行中の妻と娘の姿があった。「向こうは午前2時だったけど喜んでくれたよ」。次週メリーランド州で行われるシリーズ第2戦「BMW選手権」の会場があるボルチモアには16歳になる息子が来てくれるという。「彼女たちがいない間、僕たちは男ふたりで過ごすつもり。家族の顔を見ると胸が締め付けられる。でもそれが(自分の)すべてなんだ」

2018年には年間王者に輝いた最終戦「ツアー選手権」(ジョージア州イーストレイクGC)への6年ぶりの進出も決まった。加齢を嘆く様子はない。「45歳から50歳のあいだに第一線でプレーした選手はほとんどいない。その時期は多くの人がシニアツアーへの準備段階と捉えていた。でもフィル(ミケルソン)はその流れに負けず、51歳(正確には50歳)でメジャーを勝った(21年・全米プロ)。それはものすごいモチベーションになる」と大きな目を輝かせる。「僕はこれからキャリアの黄金期が始まるような気もするんだ」。まだまだ力強い。(テネシー州メンフィス/桂川洋一)