(6日、第107回全国高校野球選手権大会1回戦 仙台育英5―0鳥取城北) 五回の初球だった。原亜佑久選手(3年)が放っ…

 (6日、第107回全国高校野球選手権大会1回戦 仙台育英5―0鳥取城北)

 五回の初球だった。原亜佑久選手(3年)が放った打球はぐんぐんと伸び、バックスクリーン横のライトスタンドへ。

 右手を突き上げ、ダイヤモンドを1周した。「自分が打つとは思わなかった」。高校入学後初の柵越え本塁打が、今大会初本塁打となった。

 昨夏、体重が落ちるとともに不調に陥り、メンバーから外れた。宮城大会決勝、聖和学園に5―8で敗れ、あと一歩で甲子園を逃した先輩たちの姿を、ボールパーソンとして目に焼き付けた。

 秋は東北大会の準々決勝で、聖光学院(福島)に2―3で敗退。1番センターだった原選手は、最後の打者だった。春の甲子園出場も絶望的となったことで「野球をやめたいな」と思うほど落ち込んだ。

 切り替えるきっかけになったのは、須江航監督の一言だった。「もう一度、はい上がれ」――。

 冬は体を鍛えることに全力を注いだ。チーム練習とは別に、自分で考えたウェートトレーニングのメニューをこなし、1日6合のご飯を食べた。

 おかずは、煮込みラーメンや豚キムチ。夜な夜な他の部員とともに、寮のキッチンで作った。秋から6キロ増え、現在の体重は78キロ。冬に身体面を強化したことが、この日の1本につながった。

 原選手を含め3年生は24人。うち13人はメンバーから外れ、打撃投手などでサポートに回る。そんな彼らに「感謝し、次も期待に応えられるよう活躍したい」。(岸めぐみ)