(6日、第107回全国高校野球選手権大会1回戦 開星6―5宮崎商 延長十回タイブレーク)■■宮崎商の須波奏太さん 腫瘍(…

(6日、第107回全国高校野球選手権大会1回戦 開星6―5宮崎商 延長十回タイブレーク)

■■宮崎商の須波奏太さん

 腫瘍(しゅよう)が少し大きくなっている、と7月下旬に病院で説明を受けた。「ずっと治療しているのに」。次の日、沈んだまま宮崎大会準決勝を見に行った。六回を終えて0―5という苦境を、野球部ははね返した。「あきらめないことは大事」。帰る時には前を向けた。

 小学校4年生が終わるころ、微熱が続いた。肝臓に悪性腫瘍が見つかった。卓球小僧だった。入院や手術を重ねながら、大会にも可能な限り出ていた。「すぐには下手にならない。貯金があった」。高校1年秋の県大会でも、ダブルスで3位に入った。

 だが、その冬、背中が痛くなり、歩けなくなった。腫瘍が神経を圧迫していた。一時は親と話すことも、学校に行くことも嫌になった。

 「割とすぐに立ち直れたんですよ」。卓球の代わりに夢中になれるものができた。数学と物理、そして高校野球だった。

 担任の東大地先生は野球部の部長。見舞いに来ては、楽しそうに部のことを話していたのがきっかけだった。1学年上で昨夏の甲子園で投げた小野壮真のファン。小野さんからもらった甲子園の土は小瓶に入れて、病室に飾っている。

 3年になって登校できたのは10日あるかないか。病院ではもっぱら受験勉強をしている。目指すのは理系難関大。「受験の長距離移動の予行演習にもなる」と医師からも勧められ、甲子園に来ることができた。

 宮崎商は九回に2点を追いついた。「良い試合を見た。良すぎた」。グラウンドに向かって、3年の仲間の名前を何度も叫んだ3時間弱だった。(内田快)