◇女子メジャー最終戦◇AIG女子オープン(全英女子) 最終日(3日)◇ロイヤルポースコール(ウェールズ)◇6580yd…

プレッシャーがかかる局面でも、明るい表情を崩さなかった

◇女子メジャー最終戦◇AIG女子オープン(全英女子) 最終日(3日)◇ロイヤルポースコール(ウェールズ)◇6580yd(パー72)

「何か得たもの、あったのかな…」。昨年9月の「NWアーカンソー選手権」で、勝みなみはテレビカメラを前に悔し涙をこらえきれなかった。優勝が見える位置から出た最終日に「72」と伸ばせず、37位でフィニッシュ。ふがいなさにポロポロと涙が止まらない隣で、母・久美さんがバッグからハンカチを取り出した。手渡す前に“くんくん”と、においをかいで「臭くないから、大丈夫」とおどけたシーンが印象に残っている。「こっちに来てから、もう何回も悔し涙は見てきたから」(久美さん)。頑張っている娘に必要なのは、なぐさめの言葉でも、励ましの言葉でもない。

いつも母は見守っている

米ツアーに主戦場を移して3年目。母娘2人で転戦する中で、久美さんが心がけていることがある。「コースに来たら“仕事”と割り切る」。親子だからといって、ゴルフに口を出すことはほとんどない。もともと教員だった経験も手伝って「色々言っても良くないから」と笑ったが、本音は「一生懸命やっているのは、分かっているから」。練習場でも数歩離れたところで見守っている。

唯一注意することがあるとしたら、マナーに関すること。どれだけスコアが悪くても、納得いかないショットが出ても、露骨に態度に出すのはいただけない。それを正せば、悪い流れを断ち切れると知っているから、マナーだけは口を酸っぱく伝えてきた。

優勝するために、前向きに

メジャー優勝を懸けた18ホールは、そんな久美さんの教えの片鱗が見えた。3日目に「65」をマークして一気に優勝争いに浮上すると、首位と3打差で迎えた最終日はキャリアの中で最もメジャー優勝に近い位置。2番でボギーをたたいても、5番(パー3)でバーディパットがカップ間際でわずかに逸れても、しゃがみ込んで悔しそうなリアクションこそ見せたが、次のホールに向かう表情は前向きだった。

4番ではグリーンの外からパターで打ったパーパットをカップに入れて、力強く握った拳に会場が湧く。気持ちが張り詰めるはずの戦いでも、ギャラリーに魅せることを忘れなかった。

自己最高2位で終えた

2位フィニッシュは、自身20試合目のメジャーで最高位。「納得はいかないですけど」と詰め切れなかった3打差の大きさを悔やんだが、「自分がいいプレーをして(山下)美夢有ちゃんがもっといいプレーをしたというだけ」と潔く話す様子を、久美さんは後ろで見守った。

「自分の性格も一番分かっているから。いろいろ言いたいことはあるんでしょうけど、言わないで我慢してくれたり。そういう気遣いも、助かっています」と話したのは、最終日と母の日が重なった5月の「みずほアメリカズ・オープン」(15位)でのこと。「異国の地で自分のサポートをしてくれる親って、特別だなって」と勝は言う。悔しさをこらえて前を向けるのは、ロープの外で見守る母の存在を感じているからだ。(ウェールズ・ポースコール/谷口愛純)