◇女子メジャー最終戦◇AIG女子オープン(全英女子) 最終日(3日)◇ロイヤルポースコール(ウェールズ)◇6580yd…

山下美夢有がメジャー初優勝をあげた

◇女子メジャー最終戦◇AIG女子オープン(全英女子) 最終日(3日)◇ロイヤルポースコール(ウェールズ)◇6580yd(パー72)

美しい夢は確かに有った。母・有貴さんの名前から「有」の文字をもらった山下美夢有はウィニングパットを決めて、ポーカーフェースから泣き顔になった。プレーすれば100を叩く父・勝臣さんが自分と男子プロの弟・勝将、妹・蘭さんのために築き上げた“山下家のゴルフ”を体現した4日間だった。

コロナ禍の2020年3月26日、山下の故郷・大阪府寝屋川市に隣接する交野市にある星田ゴルフセンターで練習する彼女は笑っていた。2019年のプロテストに合格、最終QT13位でツアー出場権を手にしながら、開幕戦「ダイキンオーキッドレディス」から3戦連続中止となってプロデビューを迎えられずにいた。

「私らプラスチックとか言われるらしいです。聞いた話なんですけど、あまり上手い子がおらんとかで『プラスチックやなあ』とか」

2019年「トヨタジュニアW杯」団体戦で優勝

2019年のメジャー「AIG全英女子オープン」優勝の渋野日向子ら1998年度生まれの「黄金世代」。24年のメジャー「エビアン選手権」優勝の古江彩佳ら2000年度生まれの「プラチナ世代」。山下は2001年度生まれ。今では「新世紀世代」と呼ばれるが、当時は「あまり上手くない」のが実感だったらしく「1個上の先輩がすごく上手いっていう尊敬があって。(同じ関西出身の)安田(祐香)さん、古江さん、西村(優菜)さんらとKGU(関西ゴルフ連盟)で一緒やったんで」。力の差を肌で感じていた。

2019年度のプロテスト同期合格に笹生優花西郷真央がいる。笹生は18年「アジア大会」でフィリピン代表として団体・個人で金メダルを獲得。西郷は19年「日本女子アマ」優勝。山下は19年「全国高校選手権」優勝、同年「トヨタジュニアW杯」団体戦優勝。いずれも実績はあったが、フィリピン代表歴がある笹生はもちろん、山下、西郷もジュニアエリートの代名詞・ナショナルチームのメンバーではなかった。その上ツアーではあまり目立ったことがなく、知名度は黄金、プラチナ世代より圧倒的に低かった。

山下(下段右から3人目)は2019年のプロテストに合格

しかし、今ではどうだ。21年、24年「全米女子オープン」を笹生が、今年4月「シェブロン選手権」を西郷が制し、山下が同世代で3人目。日本女子による歴代メジャー覇者6人のうち3人を占める。

19年度プロテストから受験資格が「満18歳以上の者」から「開催年度に満18歳以上になる者」に引き下げられ、高校3年生でもOKに。つまり、同学年の山下、西郷、笹生は“現役高校生プロ第1号”。小林浩美会長体制の日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)の行った規約改正も3人のキャリアアップの上で大きな英断だった。

もう誰も「プラスチック世代」なんて呼べない。(編集部・加藤裕一)