サッカー日本代表のワールドカップ・アジア地区予選が終了した。すでに本大会出場を決めていたチームは、この6月シリーズを、…

 サッカー日本代表のワールドカップ・アジア地区予選が終了した。すでに本大会出場を決めていたチームは、この6月シリーズを、どのように活用したのか。そこで得た輝かしい未来につながる「希望」と、北中米ワールドカップで勝ち上がるための「課題」は何か? ベテランのサッカージャーナリスト、大住良之と後藤健生が語り尽くした!

■「当然だった」大勝利

――すでに本大会出場を決めた状態で迎えた6月シリーズの2試合で、サッカー日本代表は、どこに重点を置いていたのでしょうか?

大住「3月シリーズが終わったときに、6月シリーズでは1年間ヨーロッパで戦ってきた主力クラスは休ませて、思い切って若い選手を呼んだほうがいいと言ったんだけど、本当にこれほどまでにメンバーを変えるとは思わなかった(笑)。

 しかも、何人か呼んだ主力も休ませて、オーストラリア戦に臨んだのには、本当に驚かされた。ふつう、あれだけメンバーを変えるとチームにならないと思うんだけど、相手の守備をなかなか破れず、最終的に負けたとはいえ、プレー内容は驚くべきものだった。

 物怖じすることなく、日本代表がこれまでやってきたこと、さらに自分たちがやろうとしていることにトライしていて、実際にかなりできていた部分もあった。そういう流れで考えると、インドネシア戦の大勝も当然という感じがする」

後藤「僕は3月シリーズの後、総入れ替えなどしても意味がないという話をしていていたんだけど、それに近い状態になったね。

 そのこと以上に驚いたのは、オーストラリア戦の先発だよ。オーストラリア戦は手堅く勝ちにいって、ホームでのインドネシア戦で若い選手をいっぱい使うと思っていたからね。いきなりあんなに変えたのに、チームとして機能しちゃうし、個人としても通用しちゃう。すごいな、と思ったね。

 その反面、あれだけ攻めながら無得点で終わったというのは残念だったし、続くインドネシア戦で2得点した鎌田大地や交代で流れを変えた久保建英といった、これまでも呼ばれてきた選手との差があることも事実だと思いました。

 とはいえ、基本的には、あのメンツでオーストラリア相手にあれだけできちゃうというのは驚くべきことだと思いますよ」

■「すごかった」サッカーIQ

大住「ビックリだったよね。パリ五輪のU-23代表時代やJリーグにいた頃より遥かに伸びている平河悠のような選手もいるし」

後藤「俵積田晃太なんて年代別代表にも入っていなかったのに、シュートまで行けないとか、まだ足りない点はあるけれど、ドリブルを仕掛けて、けっこう抜けていた。日本の選手のレベルはすごいなと思いますよ。新しく入ってきた選手だけで2年間くらい一生懸命チームづくりをしたら、Aチームに遜色ないくらいようなBチームができちゃうよ」

大住「そうかもしれない」

後藤「一緒にプレーするのは初めて、みたいな組み合わせがいっぱいあったでしょ。それでちゃんとチームとしてプレーできちゃうんだもん」

大住「しかも勝手なプレーじゃなくて、ちゃんと森保ジャパンの形でプレーできているもんね」

後藤「年代別代表もそうだけど、今の選手は本当にサッカーを知っていて、監督がこうやろうとミーティングで話すだけで、実際に結構できちゃう。日本の選手はボールテクニックだけじゃなくてサッカーの戦術眼というか、いわゆるサッカーIQも高い。これはすごいことだよ」

■「別格だった」選手たち

大住「同時に、インドネシア戦を見ていて、遠藤航ももちろんのこと、久保建英と鎌田大地はやはり別格だなと思うよね」

後藤「中村敬斗はシュートを外しちゃっていたけど、それでも今まで出ていた選手はやはり違う」

大住「遠藤はバリバリの主力だったけど、久保も鎌田も、最終予選の半分くらいしか先発していないのにね」

後藤「1、2年前の久保と現在の久保とでは、まったく違う選手ですよ。インドネシア戦でもマン・オブ・ザ・マッチに選ばれて会見に出てきたけど、しゃべる内容が具体的で、ちゃんと中身のある話ができる選手だね」

――この2試合は有効活用はできたと考えていいですか。

大住「すごくプラスになったと思うよ。現時点では久保や鎌田とは差がある選手でも、この試合でつかんだ自信を持って新シーズンに臨んだら、彼らに近づく可能性は十分にあると思うんだよね。

 これからの1年で、新しい戦力が何人出てくるか。本当に先発を争える選手が2人も3人も出てくれば、それだけでチームが伸びる力になる。

 そうなれば、一昨年から、去年からもグッと伸びて、ワールドカップに臨めると思う。そういうベースがこれほどきれいに表れるのを、初めて見たよ」

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