海外でのサッカー取材は、ノートとペンだけあれば、事足りるわけではない。ビザが必要な国もある。蹴球放浪家・後藤健生は、そのビザ取得から「世界のリアル」を学んでいる。■国境での「厳しい」審査 日本人が外国に旅行するときは、日本の旅券(パスポー…
海外でのサッカー取材は、ノートとペンだけあれば、事足りるわけではない。ビザが必要な国もある。蹴球放浪家・後藤健生は、そのビザ取得から「世界のリアル」を学んでいる。
■国境での「厳しい」審査
日本人が外国に旅行するときは、日本の旅券(パスポート)と相手国の査証(ビザ)が必要になります。
日本のパスポートはとても信用度の高いものです。
昔、ハンガリーのブダペストからイタリアのミラノまで夜行バスを利用したときに、ハンガリーとオーストリアの国境で大変に厳しい審査を受けました。
2001年、東ヨーロッパ諸国の共産党政権は崩壊してから10年以上たった頃ですが、まだ東側の国々はEU(ヨーロッパ連合)に加盟していませんでした(ハンガリーの加盟は2004年)。
いったんオーストリアに入ってしまえば、EU域内は自由に移動することができます。だから、EU側は最初の入国ポイントでしっかりチェックするのです。
バスがオーストリアの入国審査場に到着すると、乗客全員バスを降ろされ、建物内の一室に閉じ込められてしまいます。
そして、一人ひとりが呼ばれて、旅券の他にさまざまな証明書を提示しなければなりません。50人くらいの乗客がこの厳しい検査を受けるので、終了するまでに1時間ほどかかりました。で、実際にオーストリア入国が認められずに、バスから降ろされてしまった人も2、3人いたようです。僕も、順番を待っている間、質問に答えらえるように頭の中でイメージトレーニングをしていました。
■日本の「パスポート」の力
ところが、いよいよ僕の番になってパスポートを見せようとすると、入国審査官は“菊の紋章”の表紙だけ見て「はい、よしっ」いうジェスチュアを示します。それで、すべて終わりでした。
日本のパスポートがどれだけ信用されているかを実感しました。
ちなみに、“菊の紋章”は天皇家のもの。パスポートの表紙には、各国の国章が印刷されていますが、日本国には国章がないので天皇家の紋章で代用しているのでしょうか?
さて、日本国のパスポートの信用度は高いのですが、国によっては今でも入国ビザ(査証)が必要になります。パスポートは日本国が「この人は日本人なので、何かあれば日本が責任とります」と保証するもの。一方、ビザは相手国が「この旅券は正規のもので、持ち主はたしかに本人だ」ということを証明するものです。
一般的にビザは出発前に取得すべきもので、日本国内の大使館や領事館、ビザ・センターなどで取ってから出発します。国によっては、到着した空港で入国審査の直前に取得できる「アライバル・ビザ」というものもあります。
最近ではビザが不要な国も多くなりました。たとえば、中国や韓国は日本人の場合、ビザ免除です。
■面倒な「報道ビザ」取得
ただ、報道関係者の入国には報道ビザの取得が必要となる場合が多いのです。たとえ、取材対象がサッカーの試合であっても、ビザが必要なのです(ただし、試合会場で実際にビザを持っているどうかチェックされることはありませんが)。
ビザ、とくに報道ビザの取得は面倒なものです。
今年の2月に中国の深センまでU-20アジアカップを見に行ったときは、「実際にはビザのチェックなんかないだろう」とは思いましたが、中国でトラブルがあると嫌なので(拘束されてしまう?)ビザを取得することにしました。
深セン足球協会から「東京の中国大使館にビザ・サポートを送ったので、早く手続きしろ」というメールが来たのでビザ・センターに行ったら、「まだ書類は到着していない」と言われ、翌日また出向くハメになってしまいました。