ポートランド・トレイルブレイザーズが、故ポール・アレンの遺志に従い、ついに球団売却へ踏み切ることとなった。 ポール・G・アレ…

 ポートランド・トレイルブレイザーズが、故ポール・アレンの遺志に従い、ついに球団売却へ踏み切ることとなった。

 ポール・G・アレン財団は、5月15日(現地時間14日)の声明でフランチャイズの売却プロセスを開始したと発表。投資銀行「アレン&カンパニー」と法律事務所「ホーガン・ロヴェルズ」をアドバイザーに起用する意向とあわせて、売却決定について以下のコメントを残している。

「今回の売却決定は、アレンが生前に示していた『スポーツ資産を最終的に売却し、その収益を慈善活動に充てる』という指示に沿うものです」

 リップシティに、球団を愛したアレンとの本当の別れが訪れる。

 同氏は、ビル・ゲイツと共に「マイクロソフト」を創業したテクノロジー界の巨人として知られる。前述の声明にも表れているように、アレンは生前、宇宙開発や脳科学研究、動物保護、疫病対策など、社会的意義のある数々の活動を支援した慈善家であった。生前の資産総額は、約203億ドル(約2兆9800億円)。ブレイザーズは彼の投資会社「バルカン」を通じて所有に至ったが、アレンはファンとしてもオーナーとして、フランチャイズに並々ならぬ情熱を注いできた。

 アレンがブレイザーズを所有したのは、1988年のことだった。地元ファンの1人としてスタンドに足繁く通っていた同氏は当時、7000万ドル(約103億円)でブレイザーズを買収。「バスケットボールの真のファンにとって、これは夢の実現です」というアレンの言葉は、往年のブレイザーズファンの記憶に今なお色濃く残っていることだろう。

 2000年からの約3年間、“ジェイル・ブレイザーズ”と揶揄された暗黒期には、財政と人的の両サイドから改革を主導。運営会社破綻時にも、赤字を肩代わりしてチームを再建するなど、アレンはブレイザーズへの投資を惜しむことはなかった。また、2016年のプレーオフでゴールデンステイト・ウォリアーズに敗退した際には、声を震わせながらロッカールームで感動的なスピーチを披露し、当時の球団のエースだったデイミアン・リラード(ミルウォーキー・バックス)は「彼は僕らがやり遂げたこと、どれほど勝利を望んでいたかを理解していた。彼は本気であり、それを感じてくれた」と、アレンの真摯な対応を賞賛している。


『Forbes』によるブレイザーズの推定球団価値は、約35億ドル(約5150億円)とされている。しかし、これはボストン・セルティックスが北米プロスポーツ史上最高額となる61億ドル(約8970億円)ドルで売却合意に至る前の資産であり、NBAの価値高騰により、売却額はより高額になる可能性も想像に難くない。

 ブレイザーズの売却といえば、2022年にナイキの創業者フィル・ナイトと、ロサンゼルス・ドジャースの共同オーナーであるアラン・スモリニスキーが買収に強い関心を示していた。ナイトにとって、ポートランドは地元であり、ナイキもオレゴン州に本拠地を構えていることから、バスケットボールに深く精通する同氏のオーナー就任を後押しする声は少なくなかった。

 彼らが再びオファーを提示するのか、それとも異なる富豪が名乗りをあげるのか。ブレイザーズ売却の手続きは、2025-26シーズンにかけて続く見通しとなっており、今後の展望に注目が集まる。

文=Meiji