元ロッテ薮田氏が語るセットアッパーとクローザーの違い 日米で計17年間にわたりプロで活躍した薮田安彦氏は、30代に入ってからセットアッパーやクローザー等厳しいポジションをこなしてきた。現役を引退し現在は解説業をこなす。セットアッパーとクロー…
元ロッテ薮田氏が語るセットアッパーとクローザーの違い
日米で計17年間にわたりプロで活躍した薮田安彦氏は、30代に入ってからセットアッパーやクローザー等厳しいポジションをこなしてきた。現役を引退し現在は解説業をこなす。セットアッパーとクローザーの違い、そしてロッテの後輩でもあるドジャース・佐々木朗希投手の現状を分析した。
「体力的にはクローザーの方が楽かな。投げるのは9回と決まっているし、同点か勝っている場面しかない。セットアップは1点負けていても落とせない試合だと登板もあるし、ランナーがいる場面で投入されることもあるので、体力的にはキツいです」
精神面での厳しさも似たようなものがあるという。「クローザーは、3点差あったら2点までは取られても良い。でも8回を投げて1点差にされると、流れが相手に行ってしまう可能性がある」。セットアッパーを務めていた際にはいかにいい形で次につなげるかを考えていたという。
日米での経験から、セットアッパーならではの難しさを感じていた。「データはとってないのですが、8回は良いバッターが回ってくる気がします。クリーンアップとか上位打線とか。自分は8回に投げることが多かったので、そういう感覚はあるんですよね」と、興味深い考察も教えてくれた。
近年は野球にまつわる計測やデータも目覚ましく発達しているが、そこに警鐘を鳴らす。「数値を目安にするのは良いと思います。ただ、あくまで目安であって、数値を求める競技ではない。投手がおこなっているのは、打者を抑える競技です。タイミングをとりづらい、打ちづらい、と打者に感じさせるように、タイミングを外すとか、ボールを見にくくするとか、やるべきことはあります」。
数値を求めるトレンドはプロだけではなく、アマチュアでも当たり前の世界になっている。「数値が出ていてもボールが見やすいピッチャーなら打たれてしまいます。逆に140キロ台中盤でも、メジャーで抑えている投手もいる。ボールが見やすいか見えにくいか、タイミングが取りづらいというのは重要だと思います」と話す。
米国は「ボールが滑る」…怪我に繋がるリスクも
オフにはロッテの後輩でもある、佐々木が海を渡った。「能力が高いのは間違いない。活躍するでしょう」とエールを送った一方で気になる点もあった。「体力面はこれからでしょうね。ロッテでもプラン通りに中6日で1シーズン通して投げることができなかった」。投手の層が厚いドジャース。「慎重にプログラムを考えて、実戦経験を積んでいくことになるんじゃないかと思います」と育成プランを推察した。
加えて重要なのは故障対策だという。「ボールは滑るので、グリップはどうしても日本にいる時より強くなってしまう。結果、前腕が張って肘の怪我に繋がることもあるので、常にうまくケアしていくことが必要でしょうね。僕もやっぱりアメリカでは、前腕の張りは感じました」。万全のケアが求められる。
投球の幅についても言及してくれた。「スライダーの精度がどのくらい上がるか。日本でも最後の方はスライダーを投げていましたけど、フォークと同じように自信を持って投げられれば、さらに打ち崩しにくくなるでしょうね」。最後は“令和の怪物”のさらなる飛躍に期待を込めていた。(伊村弘真 / Hiromasa Imura)