球界を席巻する補強を展開し続けるドジャース。そんな名門への風当たりは強まる一方だ。(C)Getty Images球界内で…

球界を席巻する補強を展開し続けるドジャース。そんな名門への風当たりは強まる一方だ。(C)Getty Images
球界内で広まる戦力格差
米球界で戦力の均衡化に対する懸念が高まっている。発端となったのは、近年のFA市場で多くのスターを手中に収めているドジャースの補強だ。
2023年12月に大谷翔平と10年総額7億ドル(約1015億円=当時のレート)で大型契約を締結したドジャースは、以降も山本由伸、テオスカー・ヘルナンデス、タイラー・グラスノー、ブレイク・スネル、佐々木朗希などFA市場の人気銘柄との契約に成功。フレディ・フリーマン、ムーキー・ベッツら現有戦力も相まって、「銀河系軍団」と呼べるだけの圧巻の陣容が完成した。
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実際、グラウンド上でもドジャースはライバルを圧倒。24年シーズンには2位パドレスと5ゲーム差をつけて地区優勝を飾ると、ポストシーズンでも快進撃は続き、4年ぶりのワールドシリーズ制覇まで上り詰めた。ただ、金満補強によって彩られたスカッドを見れば、「必然の世界一」と言える。
メジャーリーグには戦力の均等化を図るための「ぜいたく税(年俸総額が一定額を超えた球団に課せられる税金)」というルールが存在する。これは各球団の年俸総額に規制を設け、基準をオーバーした際には超過分に応じた支払いを要求するというものだ。
ただ、ドジャースは1億300万ドル(約156億円)を支払った上で、「抜け穴」とされる後払いを駆使した補強を展開。総年俸額8400万ドル(約127億円)弱で、30球団最低とされるアスレティックスとは大きな格差が生じているのは紛れもない事実である。
夢のような補強を展開し、批判を受けるドジャースだが、彼らに現時点で非はない。それはMLBのロブ・マンフレッドコミッショナーも「正しく運営され、成功している組織だ。彼らがやることを批判するつもりはない。やってきたことはすべて我々のルールに沿っている」と認める通りである。
ただ、戦力格差、少なくとも年俸で球団差が生じているのは事実。ゆえに一部の識者からは、批判的な声が飛んでいる。米スポーツ専門局『ESPN』の番組「Fast Take」に出演したご意見番のクリス・ルッソ氏は「レッズやパイレーツ、レイズはどうなるんだ。総年俸が4、5倍もあるような相手とどうやって戦えと言うんだ」と現況を糾弾した。
「こんな状況で公平な競争ができるわけがない。満足に放映権も入らないパイレーツにドジャースと同じだけの金はないよ。つまり収益の流れに大きな格差があるんだ。それがペイロールの根本的な問題だ。アメフトやバスケット、さらにはサッカーも公平に戦える。でも、野球はそうじゃない。いったいどうやって改善するのかはサッパリ検討がつかないね」
サラリーキャップも「すべてが機能しているわけじゃない」
この“不満”を解消するために、かねてから議論されているのが、サラリーキャップ制の導入である。
すでにMLSやNBAなどで導入されている同制度は、特定の選手を除いた全選手の年俸総額の上限が定めるというもの仕組みだ。このプランはMLBでもオーナー側はしきりに導入を訴えてきたが、選手会側が「年俸の上昇を抑える仕組み」として反発。1994年には大規模なストライキに発展するなど、両者の対立の原因ともなってきた。
現行の労使協定は2026年12月2日に失効するため、オーナーと選手会側で、サラリーキャップ制度の導入は議題上がるはずだが、ふたたびストライキを突入する可能性から導入に向けた話し合いが進むかは不透明だ。
この新制度の導入が抱える課題には、米ベテラン記者も疑問の声を上げている。『ESPN』のジェフ・パッサン記者は「ドジャースがやっていることは協定の範囲内だ」と前置きした上で、「だからこそ誰も文句は言えないんだ」と論じた。
「問題を強いてあげるとすれば、投資を後払いだけでなく、契約時のボーナスにも組み込んでいること。こうした他球団との格差は何十年も前からメジャーリーグの根本的な問題だ。そもそもサラリーキャップが問題を解決させるかは不透明なままだ。他のスポーツでは導入されているが、すべてが機能しているわけじゃない。中には競争均衡が取れていないリーグすらある」
さらに「チームだけじゃなく、ファンにとってもダメージになりえる」と切り込んだパッサン記者は、「野球の未来はこの格差をどう解決するかにかかっている」と断言。サラリーキャップ制の導入に関する議論が、格差問題解決の争点になるとした。
ワールドシリーズ連覇を達成した球団は1998年から3連覇をやってのけたヤンキース以来、誕生していない。それだけに今年にドジャースがそれを成し遂げれば、彼らに対する“逆風”はより強まり、サラリーキャップ制導入の議論も本格化していきそうな気配だ。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]
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