第77回全国高校バスケットボール選手権大会「ソフトバンク ウインターカップ2024」(特別協力・朝日新聞社など)の男子…

 第77回全国高校バスケットボール選手権大会「ソフトバンク ウインターカップ2024」(特別協力・朝日新聞社など)の男子決勝が29日、東京体育館であった。福岡大大濠は初優勝を狙う鳥取城北を77―57で退け、3年ぶり4度目の優勝を決めた。

 開始直後に榎木璃旺選手(2年)がシュートを決めて攻撃の口火を切った。鳥取城北も多彩な攻撃をみせて第1クオーター(Q)は18―17と互角の戦い。第2Qも一進一退の攻防が続いた。26―30と4点リードを許す場面もあったが榎木選手や湧川裕斗主将(3年)の3点シュートなどで盛り返し、10点リードで終えた。

 第3Qに入っても攻撃はさえ、渡辺伶音選手(3年)の高さをいかした3点シュートなどでじわじわと差を広げた。第4Qも選手たちはコートを駆け続け、3年ぶりの歓喜の瞬間を手に入れた。

 試合後、片峯聡太監督は「最初は少し受け身になる部分が出てしまったが、チーム全体でそれを乗り越えて自分たちのバスケットに持っていけたことが、今日の素晴らしい部分だった」と選手たちをたたえた。

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 3、2、1、0と試合終了を告げるカウントダウンが終わった瞬間、湧川裕斗主将(3年)は持っていたボールを宙に投げ、喜びをかみ締めるように天井を見上げた。そしてコート上の仲間たちと抱き合ったとき、笑顔は泣き顔に変わっていた。

 決勝の前日、湧川選手は「去年ここで負けて、この1年間はこの大会で優勝するためだったと言っていいくらい、熱い思いがある」と話した。昨年の決勝は福岡第一との「福岡対決」だった。当時2年生だった渡辺伶音選手(3年)、高田将吾選手(3年)らとともにチームの中核を担っていたが、あと一歩で優勝に届かなかった。

 苦しい1年だった。

 3年になりチームの主将を任される立場になったが、チームメートにうまく声をかけられず、チームを引っ張ることができない時期があった。アシスタントコーチから「嫌われてもいいくらいチームメートに言わないと、チームは成長しない」と助言してもらったことが転機となり、声かけを積極的にできるようになった。チームキャプテンである見竹怜選手(3年)の支えもあり、徐々にチームがまとまった。また、米プロバスケットボールNBAや国内プロのBリーグの試合を見て知識を増やすことを意識し、プレーヤーとしてのスキルも上げた。

 この日の決勝では、第2クオーター(Q)の途中まで相手に押され、苦しい時間が続いた。タイムアウト時に監督から「受け身になってはだめだ」と言われ、見竹選手とともに仲間へ声を掛けて鼓舞した。それが功を奏し、「第2Qの途中からは、大濠らしいプレーができるようになった」。試合終了後、湧川選手は「チームを良くするためにどうすべきかなどについて、(仲間と)何回も話し合って、苦労して成長してきたので、最後に報われて本当にうれしい」と笑顔で語った。(中村有紀子)