プレミアリーグ第13節は日本人対決となった。三笘薫所属のブライトン対菅原由勢所属のサウサンプトン。5位対最下位の一戦である。 4-2-3-1の左ウイング(三笘)対5-4-1の右ウイングバック(菅原)。ただの日本人対決ではない。両者はまさに…

 プレミアリーグ第13節は日本人対決となった。三笘薫所属のブライトン対菅原由勢所属のサウサンプトン。5位対最下位の一戦である。

 4-2-3-1の左ウイング(三笘)対5-4-1の右ウイングバック(菅原)。ただの日本人対決ではない。両者はまさに対峙する関係にあった。

 欧州で初めてプレーした日本人選手は奥寺康彦さんだ。1977-78シーズン、ケルンでの話になるが、それから47年の時を経るなかで、日本人選手同士がここまできれいにマッチアップした例は何回あっただろうか。プレミアリーグという欧州一の舞台で直接対決する姿を見せられると、新たな感激を覚える。



マッチアップした三笘薫(ブライトン)と菅原由勢(サウサンプトン) photo by Rex/AFLO

 先発が危惧されたのは菅原だった。開幕から2カ月、10月まではコンスタントに90分プレーしたものの、11月に入ると一転、ベンチスタートが続いていた。前節のリバプール戦も交代出場で、ハンドを犯し決勝弾となるPKを与えている。一方、日本代表では先のインドネシア戦で6試合ぶりに先発出場を飾り、ゴールも決めるなど活躍。プレミアリーグでプレーする選手としての格の違いを見せた。

 開始6分。その菅原に早速、災難が襲いかかる。自軍がコーナーキックのチャンスを得た際、身長179センチの菅原は、ブライトンの反撃に備えて最後尾にひとりで残っていた。

 サウサンプトンのMFマテウス・フェルナンデス(U-21ポルトガル代表)がシュートを放つも、ボールはブライトンのDFに当たり、その跳ね返りをヤシン・アヤリ(スウェーデン代表)が拾った。その瞬間だった。誰よりも反応鋭く、疾風のごとく駆けだした三笘の鼻先にアヤリがロングボールを蹴り込むと、菅原もその動きに蓋をするがごとく対応した。

 ブライトンの速攻は失敗かと思われたその矢先だった。三笘は菅原のトラップに狙いつけて奪い、マイボールにする。そして間髪入れず、半分空になっていたサウサンプトンゴールにシュートを打ち込んだ。ただし次の瞬間、頭を抱えたのは菅原ではなく三笘で、シュートは枠を外れて終わった。

【神出鬼没な動きで得点シーンに登場】

 続いてふたりがマッチアップしたシーンは27分だった。ブライトンのGKバルト・フェルブリュッヘン(オランダ代表)の糸を引くようなフィードが三笘の鼻先に滑るように送られた。走り勝ったのは菅原で、スライディングタックルで三笘の走路を潰し、タッチラインに逃れた。

 ブライトンボールのスローイン。ブライトンの先制点はその流れから生まれた。

 得点したのはおよそ1分前、菅原にタックルを浴びたばかりの三笘だった。右サイドのSBタリク・ランプティ(ガーナ代表)が比較的浅い位置でボールを持った時、菅原はプラスのアーリークロスが蹴り込まれてくるとは予想していなかったに違いない。同様に三笘が背後からそこに狙いをつけ、走り出していたことも察知できていなかったように見えた。

 三笘のシュートシーンへの現われ方は、開始6分のプレーとそっくりだった。前節のボーンマス戦でゴールを決めた瞬間もそうだった。舞台の袖からササッと現われる忍者然とした神出鬼没な動きである。動き出しのスムーズさに定評のある菅原も、この抜け目ない動きに置いていかれることになった。三笘はクロスボールのコース上に入ると、ワンバウンドしたボールに頭で反応。身体を捻って投げ出しながら、ゴールネットを揺るがした。

 菅原はその後、よく健闘した。3度ほど高い位置に進出し、折り返しを決めている。縦への滑らかな推進力に目を奪われることになった。10点満点で採点すれば、三笘との攻防に敗れた段階で5点台だったのが、じわじわ6点台に回復。能力の高さを示すことになった。

 しかし、ブライトンの両SBに比較すると、そのプレーは専守防衛気味にしか映らなかった。攻撃に絡む絶対的な回数が少なかった。

 試合の結果は、後半14分、フリン・ダウンズ(元U-20イングランド代表)のゴールで1-1の引き分けに終わった。5位をいくホームチームにとって、最下位チームに引き分けることは、歓迎すべき結果とはいえないが、可能性を感じるサッカーをしていたのは、やはりブライトンのほうだった。

【サイドバックの菅原を見たい】

 ブライトンの活躍選手として、三笘以上に筆者の目を捉えたのは両SBだった。三笘が菅原と対峙すれば、三笘の背後で構えるペルビス・エストゥピニャン(エクアドル代表)に活躍する環境が生まれる。逆サイドも同様だ。ランプティが送ったクロスボールを三笘が得点に結びつけたシーンは、この試合の特徴を集約したシーンと言える。

 菅原も専守防衛になりがちなウイングバックではなく、SBとしてプレーする姿を見たかった。縦へのスムーズな推進力が持ち味の菅原が、フルに魅力を発揮できぬまま、後半20分という早い時間にベンチに引き上げる姿は、なんとも残念に映るのだった。

 三笘は例によってフル出場を果たした。99分(アディショナルタイムは10分)には、ルイス・ダンク(元イングランド代表)のサイドチェンジのボールを、トップスピードで受けながら、右足のアウトでナイストラップ。勢いそのままに縦に突進。対峙するカイル・ウォーカーピーターズ(イングランド代表)のチェックをものともせず、決定的とも言えるマイナスの折り返しをライン際から送り込んでいる。

 サイモン・アディングラ(コートジボワール代表)のシュートはゴールポストをわずかに逸れたが、これが決まっていればブライトンは勝者になっていた。三笘はヒーローになり損ねたと言うべきか。
 
 三笘について言えば、日本代表でもウイングバックではなくウイングでプレーするプレーが見たいと、あらためて思った次第だ。同じ三笘でも、ブライトンの三笘のほうが断然、光って見える。

 ウインガーにとってSBの下支えは不可欠。ウイングバックでは、相手が強者になると専守防衛に陥る恐れがある。つまり、この日の菅原になってしまう可能性がある。プレミアの大舞台で日本人選手同士がサイドで直接対決する姿に、あらためて日本代表の現状に疑問を覚えるのである。