東京六大学野球秋季リーグは12日、14年ぶりに優勝決定戦が行われ、早大が4-0で明大に快勝。春秋連覇を達成し、リーグ最多の通算優勝回数を「48」に伸ばした。先発したエース・伊藤樹投手(3年)が9回3安打無四死球完封の快投を演じた。両チーム…

 東京六大学野球秋季リーグは12日、14年ぶりに優勝決定戦が行われ、早大が4-0で明大に快勝。春秋連覇を達成し、リーグ最多の通算優勝回数を「48」に伸ばした。先発したエース・伊藤樹投手(3年)が9回3安打無四死球完封の快投を演じた。両チームは勝ち点4、8勝3敗2分(勝率.727)で首位に並んだまま今季全日程を終えていた。

 勝った方が優勝の大一番で、伊藤樹は相手に付け入る隙を与えなかった。味方打線が2回に1点を先制した後、5回の守備で1死から相手の5番・小島大河捕手(3年)に二塁打されたのが、唯一のピンチだったが、続く木本圭一内野手(3年)にカウント1-2から104キロのカーブを振らせて三振。続く榊原七斗外野手(2年)も一ゴロに仕留めて脱出した。

 今季明大に対しては、10月19日の1回戦に先発し8回3安打1失点。中1日で臨んだ同21日の3回戦も8回7安打無失点に抑え込み、連勝していた。それでも今季3度目の対戦となったこの日、明大・田中武宏監督が「今までとは違う変化球を多く使われました」と脱帽したように、配球を大幅に変えていた。伊藤樹自身は「過去2度の対戦で(相手打者に)ストレートと縦の変化球を狙ってくる素振りが見えたので、きょうはカーブ、カットボールを増やしました。冷静に相手が見えていたことがよかったと思います」とうなずいた。

 最速151キロのストレートと多彩な変化球を操るが、特にスプリット、チェンジアップといった“縦の変化”に特長がある。この日は相手の裏をかくカーブ、カットボール攻めが功を奏したわけだ。

9回3安打無四死球完封の快投を演じた早大・伊藤樹【写真:小池義弘】

 10月のドラフト会議で5球団競合の末に楽天から1位指名された相手の3番・宗山塁内野手(4年)も3打数無安打に封じた。中でも初回2死走者なしの第1打席では、初球に高めの111キロのカーブで見送りのストライクを取り、ファウルを2球打たせた後、4球目にも内角低めへ100キロのカーブを投じ二ゴロに打ち取った。宗山は「初球のカーブとか、緩いボールで簡単にカウントを稼がれてしまった感じです」と唇をかんだ。

 伊藤樹は試合後「(宗山は)打席内でホームベースから離れたり、間を詰めたりして工夫していました。なるべく相手の狙いを外すことと、しっかり強いボールを投げることが大事だと思っていました」と“種明かし”。そして「きょうは確かにカーブが多めでした。僕という投手にスプリットなど縦の変化が得意という認識がある中で、カーブは一番効きますから」と微笑んだ。観察眼の確かさと、投球スタイルを自在に変えられる技術の高さに驚かされる。

「この投球ができるなら、土曜(9日の慶大1回戦)にやっておけよ、という話ですよ」と苦笑したのは早大・小宮山悟監督だ。伊藤樹は今季開幕から快調で、無傷の6連勝を続けていたが、最終週の慶大1回戦に突然乱れ、7回5失点で敗戦。チームが完全優勝を逃し、優勝決定戦にもつれ込む事態につながった。「最後にこういう投球になってしまうかと落ち込みました」と明かしたが、中2日で見事に修正。「優勝決定戦の大一番でこれだけのピッチングできたことは、自信になりますし、成長できたところかなと思います」と納得の表情を浮かべた。

 宮城・仙台育英高時代に3度甲子園出場を果たし、「ドラフト1位でプロへ行く」目標を掲げて早大に進学した。プロで通算117勝をマークしている小宮山監督との二人三脚は、来年ラストシーズンを迎えるが、その前に、今月20日開幕の明治神宮野球大会に東京六大学野球連盟代表として出場する。今春のリーグ戦を制した後、6月の全日本大学野球選手権大会で決勝に進みながら、東都大学野球連盟代表の青学大に敗れた経緯を踏まえ、小宮山監督は「春に勝てなかった相手に、なんとかリベンジしたい。頑張らせます」とボルテージを上げた。

 これを聞いたエースは「優勝するには(初戦、準決勝、決勝が)3連戦になります。初戦に先発し、中1日で決勝となるのかもしれませんが、僕自身は3連投するつもりで準備します。監督の期待に応えたいです」と頼もしく請け合った。

(Full-Count 宮脇広久)