(14日、第106回全国高校野球選手権大会2回戦 石川・小松大谷3―0大阪桐蔭) 打ち上がる飛球に、長打を期待する相手スタンドがわく。でも、打たせた本人の小松大谷・西川大智にしてみれば、狙い通りだった。 「新基準のバットはフライが伸びない…

 (14日、第106回全国高校野球選手権大会2回戦 石川・小松大谷3―0大阪桐蔭)

 打ち上がる飛球に、長打を期待する相手スタンドがわく。でも、打たせた本人の小松大谷・西川大智にしてみれば、狙い通りだった。

 「新基準のバットはフライが伸びないんで。僕は三振は取れないから、打たせて取って、打線にリズムをつなげるのが仕事だった」

 打席を重ねれば対応してくるのが大阪桐蔭の強力打線。序盤は手の内を隠し、ほぼスライダーと直球だけで組み立てた。五回に初めて長打を浴びると、六回からは隠していたチェンジアップを多投。タイミングをずらしつつ、130キロ台の直球を高めに投げて打ち上げさせた。

 胸に抱いた思いがあった。元日に大きな震災が起きた石川県。その代表である自分たちが甲子園で勝つことで、明るいニュースが届けられる。相手が春夏通じて9度の優勝を誇る大阪桐蔭となればなおさらだ、と。

 だからと言って、変に力まないのがこの右腕のいいところ。マウンドで「自分の好きな曲ばっかやってくれるな」と相手の応援を楽しむ余裕ぶり。ひょうひょうと投げ、わずか92球で、選手権大会で大阪桐蔭を完封した史上初の投手になった。

 「(大仕事を)やってしまったなーって感じですね。次勝てばベスト8ですよね? もっともっと、元気が届くようにしたいです」。ニコニコ顔で言った。(松沢憲司)