きっとそれぞれに幸せな物語があるはずだ。17歳以下のラグビー日本代表に選ばれ、サクラのジャージィーをまとって世界と戦う――。高校1、2年生にして、そんな稀有な経験をしたのだから。
 
 関東学院六浦高(神奈川)の2年生、CTB/WTB松下怜央(まつした・れお)もそんな幸福を経験した一人だ。
 関東ブロックのトライアウトを経て、U17関東代表として長野・菅平での「KOBELCOカップ2017」に参加。活躍が認められ、そのまま菅平に残ってU17 TIDユースキャンプ(代表候補合宿)でのセレクションへ――多くの選抜試験を経て、U17日本代表へ、花園出場経験のない高校から唯一選出された。
  
 小学校時代はサッカーに夢中だった。
 当初は中学でもサッカーをするつもりだったが、進学した中高一貫校の関東学院六浦中で、ラグビー部の垂れ幕を目にした。
「学校に『関東大会出場』みたいなラグビー部の旗が張ってありました。気軽に『ラグビーやろう』と入ったのがきっかけです」
 気軽にラグビー部の門を叩いたその日から、4年と数か月後、U17日本代表として日の丸を背負うことになった。
「すごいですよね。最初は弱かったんですが、高校でウエイト(トレーニング)を始めて、いい感じになりました」
 身長180センチ、体重88キロ。神奈川県下ではすでにマークされる存在だ。

 2008年創部の関東六浦高は目下、県下の強豪に成長中。
 U17のチームメイトには、秋には花園出場を懸けて争うことになる桐蔭学園のメンバーもいる。
「ジャパンになった以上は仲間としてやらなければいけないので、秋のことは置いておいて、ジャパンだけに集中してやってきました」
 そんな心掛けで臨んだ本番。
 U17日本代表として、8月24日から4日間、茨城・水戸市立サッカー・ラグビー場でおこなわれた「第25回日・韓・中ジュニア交流競技会『ラグビー競技』」に参加した。
 
 113-0で完勝したU18韓国代表戦では、先発WTBで出場。3日後のU19中国代表戦では、後半8分から途中出場した。
「(U19中国代表は)横流しのディフェンスが上手かったです。そこで合わせると相手の思うツボなので、最初はどんどん縦に切ってディフェンスを寄せていこう、という話をしていました」
 73-5という快勝劇を振り返る16歳は堂々としていた。

 U17日本代表を率いた浅野良太監督(國學院栃木)は、TIDキャンプの期間中、スタッフ陣へ「選手を幸せにしたい」と指導のコンセプトを語った。それは教員を務める國學院栃木でも変わらぬ、自身の指導哲学だった。
 では2017年の夏を通して、WTB松下は幸せになったのだろうか。
 本人に直接訊ねると、満面の笑みが返ってきた。
「なりました。幸せになりました。コベルコ(KOBELCOカップ/U17関東代表)に入って、TID(キャンプ/U17日本代表候補合宿)に入って、それからジャパンになれたということで幸せでしたし、ジャパンでは韓国戦のスタメンになることができました。ジャパンとして誇りをもって出場した、ということは本当に幸せでした」
 地域のトライアウトから世代の頂点へ昇りつめた。ピッチに立つ頃にはジャパンとしての誇りが芽生え、本当に幸せだった。
 わずかひと夏で自分でも驚く高さまで羽ばたいた。2017年の夏のことを、笑顔の16歳はきっと忘れない。(文/多羅正崇)