ヒロド歩美さんインタビュー(全2回)前編・高校野球取材の思い出『熱闘甲子園』(テレビ朝日系)キャスターとしてお馴染みのヒ…

ヒロド歩美さんインタビュー(全2回)
前編・高校野球取材の思い出

『熱闘甲子園』(テレビ朝日系)キャスターとしてお馴染みのヒロド歩美さんにインタビュー。前編では、9年にわたる高校野球取材での印象深いエピソードを語ってもらった。


高校野球取材を続けているフリーアナウンサーのヒロド歩美さん

【球児の

「大事な甲子園」を伝える】

ーーさて、日本全国で予選大会がスタートし、夏の甲子園が近づいてきました。ヒロド歩美さんといえば『熱闘甲子園』。やはりこの季節になると胸の奥が騒めいたりするんですか?

ヒロド歩美(以下同) はい。季節で感じるというか梅雨の時期に地方大会が始まって、明けると甲子園だなって機運が高まっていきますね。いよいよだなって。

ーー今年はどこの高校に注目していますか?

 もちろんどこの高校にも頑張ってもらいたいのですが、まず今年の春のセンバツを制した健大高崎(群馬)に優勝後すぐにお邪魔して、いろいろとお話をお聞きしたんです。

 健大高崎は2015年以来、夏の大会には出場できていないので、夏への想いの強さというのをすごく感じましたし、そのあたりも含めまた違った視点で取材ができるのではないかといった発見もあり、すごく刺激を受けました。

ーー春夏連覇できる唯一の資格を持った学校ですからね。

 春は春、夏は夏だと思うんですけど、監督や選手からするとやっぱり違うものだと言いますね。だから夏の甲子園に懸ける思いというか、取材してみて、すごく早い段階で夏を見据えているなと感じたんです。準備を進めてきた健大高崎が県大会からどういう戦いをしてくれるのか注目しています。

ーーヒロドさんは『熱闘甲子園』のキャスターを務めて今年で9年目になります。長い間見てきて、球児たちの気質に何か変化みたいなものを感じたりしますか?

 どうでしょうか、毎年いろいろな高校球児と出会うのですが、時代っていうのはあまり考えたことないですね。それに私の球児たちに対するアプローチや感情もあまり変化はないんです。

 ほとんどの学生が初対面になりますし、極論を言うと、たとえば、「今年は記念大会です」って世間的には特別感があったとしても、その時の高校3年生の球児にとってみれば最後の年ですし、実際あまり関係ない。だからいつの世も学生たちにとっては、大事な夏。それは変わらないと思います。

【甲子園の宿舎取材に力を入れる理由】

ーーヒロドさんのことは、球児も存在を知っているでしょうから、取材もしやすくなっているのでは?

 以前、取材に行った時に球児から「小さい時から見ていました」って言われたんですよ。ああ、確かにそうだよなって。少年野球をやっていた子が高校球児になっているわけですし、その言葉を聞いた時は年を重ねたなって実感しました(笑)。

ーーヒロドさんの取材は球児との距離感が独特ですよね。彼らのパーソナルに迫るような。

 球児はあまりメディア慣れしていないので、私的な取材ポイントを言えば、よりぐっと近づきたいというか、素の部分を引き出したいということを心掛けています。

 初々しさであったり、一生懸命さであったり、ありのままの空気感を伝えられればなって。私が高校野球取材において意識しているのは、試合中というよりもオフの顔なんです。

 高校生らしさとか、彼らのリアルな会話や思いを伝えるのが自分の役割だと思っています。プレーに関しては、元プロ選手の古田敦也さんや斎藤佑樹さんがいらっしゃいますからね。

ーーだから選手たちの宿舎に取材に行ったりしますものね。

 彼らが一番素になる場所ですからね。基本的に負けたチームの宿舎に行くんです。甲子園球場で泣いて終わるのではなく、そのあとに笑顔で過ごしていたり、「甲子園は最高だった」と言っている様子を伝えることが、私たちの務めだと思っています。きっと高校野球ファンの方々も気にしていることだと思います。

ーー負けたら終わりのトーナメント。非情かもしれませんが、そういった緊張感のなかで戦う彼らの必死さが、甲子園大会のひとつの魅力でもあるんでしょうね。

 それもそうですし、本大会に出場できるメンバーが限られているなか、応援する側やサポートにまわる球児たちもいます。

 ベンチに入れなかった選手の親御さんの気持ちだったり、いろんな思いがチーム内にはあって、高校野球取材をしていて強く思うのは、自己犠牲の気持ちを自分のなかに落とし込んで、チームのために一緒に戦う姿というのは、いつも美しいなって。注目選手ばかりではなく、そういったところもしっかりと伝えていきたいですね。

【甲子園とは? 宮城大弥の独特な回答】

ーー球児たちに対する、マスト質問ってかりますか?

 やっぱり「あなたにとって甲子園とは?」ということですね。大会を終えた選手たちは、どんな負け方をしようと「最高でした」って言うことが多いんですけど、興味深いのがまだ出場していなくて、どんなイメージを甲子園に持っているかと聞く時なんです。

ーー普通は、「夢」や「憧れの場所」って答が多そうですね。

 そうなんですけど、面白かったのはロッテの佐々木朗希選手が「行ってみないとわかりません」と答えていたり、あとオリックスの宮城大弥選手は「涼しいところ」って言っていたのが印象に残っていますね(笑)。

ーーああ、宮城選手は沖縄出身ですから、あの灼熱の甲子園でさえ涼しいところかもしれない。

 彼にしか言えない答えですよね。

ーー彼らのようにのちにプロになった選手も多いでしょうし、ヒロドさんもいろんな視点や感情で現在の状況を見つめることもできるんでしょうね。

 そういう意味では、今季復活したヤクルトの奥川恭伸選手の涙のヒーローインタビューは胸に来るものがありました。私は星稜(石川)時代の奥川選手の涙を節目節目で見てきたんです。

 高校3年生の石川大会で優勝した時の涙、そして甲子園で準優勝して流した涙とか、喜怒哀楽をたくさん間近で見てきて、そしてプロになり苦しい時期を味わってのあのインタビューですからね。

 昔から取材していなければ湧くことのない感情が生まれました。でも、あの奥川選手の泣き顔は高校時代から変わってないですし、これからも感情豊かに活躍してくれることを願っています。

【かつて取材した球児たちの成長に感慨】

ーー高校野球だけでストーリーが完結するのではなく、それを踏まえ、その後の人生を垣間見られるのもこの仕事の醍醐味ですね。

 はい。だから最近は、あの球児たちは今どうしているんだろうって大学野球の取材にも行ったりしているんです。

 たとえば昨年夏準優勝校の仙台育英の尾形樹人選手と高橋煌稀選手のバッテリーが早稲田大学に進学し、一方で優勝した慶応の丸田湊斗選手たちが大学に進んで、六大学というステップアップした場所で対戦するとか、すごく興味深いなって。

ーー現場で懐かしい顔に出会えるのもうれしいですよね。

 年齢が違うので言葉づかいとして正しくはないんですけど、どこか同窓会的な感覚なんですよね。先日、西武の今井達也選手の取材を報道ステーションでしたんですけど、2016年に作新学院で優勝した以来のインタビューだったんです。

 もちろんこれまで今井選手とはキャンプとかでお会いしてはいたんですけど、腰を据えて話を聞くのは本当に久しぶりで。再会をし、当然当時とは受け答えが変わっていましたし、高校のエースがプロのエースに成長したんだなって感慨深いものがありました。もうあれから7〜8年年経ったんだなって。

ーー成長を経て、あらためて接すると刺激を受けたり学ぶことも多いのではないですか?

 いやもう、本当それしかないですね。プロ野球や高校野球だけではなく、アスリートの取材で感じるのは、人それぞれに極め方があるということです。

 たとえば、アスリート全員が「この競技が好き」というわけでもなく、なかには「好きではないけど、やるしかないんです」って方もいたり、いろんなアプローチがあるんだなって。スポーツキャスターとして、そういう意味では学びも多いし、どんな発言をするのか楽しみなので、本当興味は尽きませんね。

後編<阪神・岡田彰布監督のボヤキにも「根拠はないけど信じてる」 ヒロド歩美がブレイクを願う「甲子園のスター」とは>を読む

【プロフィール】
ヒロド歩美 ひろど・あゆみ 
1991年10月25日生まれ。兵庫県宝塚市出身。早稲田大学国際教養学部卒業後、2014年に朝日放送テレビ(ABCテレビ)入社。2016年に『熱闘甲子園』のキャスターに就任。その後は『サンデーLIVE!!』『芸能界常識チェック!〜トリニクって何の肉!?〜』『芸能人格付けチェック』などに出演。2023年からフリーとなり、現在まで『報道ステーション』のスポーツキャスターを務めている。