ウシク(中央)が新たな金字塔を打ち立てた。これにより井上(左)とクロフォード(右)の2強と見られていたPFP論争が再燃している。(C)Getty Images、(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARAnext 凄ま…

ウシク(中央)が新たな金字塔を打ち立てた。これにより井上(左)とクロフォード(右)の2強と見られていたPFP論争が再燃している。(C)Getty Images、(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARAnext

 凄まじい激闘を制し、偉業は達成された。

 現地時間5月18日、ボクシングのヘビー級世界4団体統一戦がサウジアラビアの首都リヤドで行われ、WBA・IBF・WBO統一王者のオレクサンドル・ウシク(ウクライナ)が、WBC王者タイソン・フューリー(英国)に12回判定勝ち(2-1)。ヘビー級史上初の世界4団体統一王者になるとともに、男子ボクシング史上3人目の2階級での世界4団体統一王者という快挙もやってのけた。

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 決して簡単な試合ではなかった。フューリーとは身長15センチ、リーチ18センチ、体重17.5キロという小さくない差があったウシクだが、冷静だった本人は序盤から打って出て、主導権を握った。

 それでも“不死身”のフューリーを前に中盤に押し込まれて苦戦した。だが、ウシクは9回にワンツーの流れから左フックを炸裂。ふらついたところに容赦ない連打を浴びせ、なんとかダウンをもぎ取る。

 結果的にこの1ダウンがジャッジを変えたと言っていい。決着は115―112、114―113、113―114とき僅差判定。フューリーとの紙一重の攻防でウシクの決定打が評価された形となった。

 難敵との大一番を制し、まさしく金字塔を打ち立てた37歳には、SNSを中心に「永遠の王者だ」などと称賛が殺到。“ボクシングの本場”である米メディアでは、パウンド・フォー・パウンド(階級差のない最強ランキング。PFP)を巡る議論が早くも噴出した。

 これまで2強と見られてきたのは、WBAスーパー・WBC・WBOスーパー世界ウェルター級統一王者のテレンス・クロフォード(米国)と、世界スーパーバンタム級4団体統一王者の井上尚弥(大橋)だ。ともに2階級での4団体統一という偉業をやってのけ、歴史に名を刻んできた。

 そうしたなかで、ウシクも記録上で彼らに“並んだ”わけである。1位の座を巡る論争に食い込まないわけがない。米ボクシング専門サイト『Bad Left Hook』は「ウシクはまたしても傑出したパフォーマンスを披露し、その功績と称賛のリストに加え、現在の世界No.1パウンド・フォー・パウンド・ボクサーと呼ばれるにふさわしい明確な根拠を示した」と絶賛。そして、井上とクロフォードとの比較も展開している。

「もちろん、ナオヤ・イノウエやテレンス・クロフォードから何かを奪うわけではない。彼らはみな、正真正銘の偉大なるファイターなのだ」

 おそらくファンを中心に今後もPFPを巡る議論は続く。その渦中に日本人選手がいるのは実に誇らしい。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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