2回戦で関西大に完勝し、見事に5年ぶりとなる全日本学生選手権(インカレ)ベスト8進出となった早大。そんな早大に準々決勝…
2回戦で関西大に完勝し、見事に5年ぶりとなる全日本学生選手権(インカレ)ベスト8進出となった早大。そんな早大に準々決勝で待ち受けていたのは中大だった。関東学生秋季リーグ(秋季リーグ)では守屋雄司(スポ2=神奈川・法政二)が試合終了3秒前にゴールを決めて劇的勝利を飾った相手だ。しかし中大は現在インカレ2連覇を成し遂げており、そう簡単に同じようにはいかない。中大の多彩な攻撃に翻弄(ほんろう)され、13―19と6点差で前半を終えると、後半も中大に圧巻のプレーを見せつけられ、点差は平行線をたどる。結局打開策を見出すことはできず、タイムアップ。こうしてベスト8の成績で大会を終えた。
函館アリーナに舞い戻ってきた早大は最大の山場を迎える。固唾(かたず)を飲んで見守る中、戦いの幕が切って落とされた。先制点を決めたのはやはりこの男、中大の泉本心(3年)だ。先日行われたパリ2024オリンピック男子アジア予選で優勝した日本代表メンバーである泉本が緩急を使ったキレのあるフェイントで1点を挙げると、さらに速攻で連取。試合開始1分経たずして2点をもぎ取る。早大も狩野直樹副将(スポ4=埼玉・浦和学院)のミドルシュートで1点目を挙げ、出だし好調のように思われたが、その後は相手GK野上遼真(4年)に3連続でシュートを止められてしまう。セットオフェンスでは中大による白築琢磨(文構3=東京・早実)を中心とした早大バックプレーヤー陣への厚いマークで得点に伸び悩むと、ディフェンスではUー21日本代表のCB伊禮颯雅(2年)とサイドプレーヤーを中心とした相手の攻撃で点差を離される。それでも前半13分、相手のペナルティスローを渡辺航平(人3=神奈川・桐光学園)がセーブ。会場を沸かせると、その直後に相手が退場者を出したことでチャンスが舞い込む。相手オフェンスのミスなどから外種子田峻汰(スポ2=鹿児島・国分)が速攻を3つ決め、前半19分に11―12と1点差まで迫った。追い打ちをかけたい早大だったが、今度は早大にオフェンスでのミスが目立ち、流れに乗ることができない。泉本、伊禮颯、伊禮雅太(4年)の攻撃で再び点差は開き始め、13―19の6点ビハインドで試合を折り返した。

シュートを放つ田井
2回戦の関西大戦では後半の修正力で勝利し、後半の巻き返しに期待がかかる。しかし、その期待とは裏腹に、中大による一方的な試合展開となった。安定感のある王者のプレーに苦戦する早大。中大の圧倒的な個人技になすすべがない。それでも早大は走り続けた。走って勝つーー。それこそが早大のハンドボールだからだ。奥崇大(スポ4=北海道・札幌月寒)、外種子田の速攻で必死に食らいつく。後半14分に鍋島弘樹(スポ1=福井・北陸)がミドルシュートを決め、もどかしい状況を一変させようとするが、同じく北陸高校の元チームメートである中大の長谷川惣唯(1年)がサイドシュートで応戦。中大が流れを渡さない。そのまま点差は縮まらず、試合は終盤へ。後半28分に白築がディフェンスの間を割ってゴールを奪い、雄叫びを上げる。29―35とすると、早大はマンツーマンディフェンスを仕掛けた。残り2分で6点差。試合はすでに決着がついていた。しかし早大は諦めない。三津英士監督(平8人卒=久留米工業大附)からは「最後!最後!」と檄(げき)が飛び、それに呼応するように田井健志主将(スポ4=香川中央)がアウトカットインで得点。最後は相手のパスミスから外種子田が無人のゴールにシュートを突き刺すも、無念のゲームセット。31―37で中大に完敗を喫し、早大は道半ばにしてベスト8で姿を消すこととなった。

雄叫びを上げる白築
31―37と関東学生春季リーグ(春季リーグ)と同じスコアでの敗北となり、王者に王者のハンドボールをされた今回の試合。2度目のアップセットを演じることはできなかった。それでも田井主将は「1年間チームとしてやってきたことを発揮できた試合」と語るように全ての力を函館アリーナで出し切り、中大に真っ向勝負を挑んだ。振り返ってみれば、秋季リーグでは8位に終わった早大。しかしインカレでは早大よりも上位の大学が次々と敗退していく中、早大はここまで仕上げてきた。「自分たちがやってきたことは間違いではないと証明できた」(田井)。その通り、試合を追うごとに確実に成長し、8強入りを成し遂げたのだ。この悔しさを胸に3年生以下の選手は来年以降、再び日本一を目指す。早稲田らしく、泥臭く。これからもエンジの系譜は継がれていく。
(記事 丸山勝央 写真 澤崎円佳 大村谷芳 取材 渡辺詩乃)

4年生の集合写真
| 全日本学生選手権 | ||||
|---|---|---|---|---|
| 早大 | 31 | 13―19 18―18 | 37 | 中大 |
| GK 塚本智宇(スポ4=富山・高岡向陵) CP 外種子田峻汰(スポ2=鹿児島・国分) CP 田井健志(スポ4=香川中央) CP 小柴創(スポ1=千葉・昭和学院) CP 狩野直樹(スポ4=埼玉・浦和学院) CP 奥崇大(スポ4=北海道・札幌月寒) CP 白築琢磨(文構3=東京・早実) | ||||
コメント
田井健志主将(スポ4=香川中央)
――今の率直なお気持ちを聞かせてください
もちろん負けて悔しい気持ちもありますが、1年間チームとしてやってきたことを発揮できた試合だったので悔いはありません。
――今日の試合を振り返っていかがですか
終始相手にペースを握られ、自分たちの理想通りの展開にはなりませんでした。特にエースの白築琢磨(文構3=東京・早実)へのマークが厚く、速攻への意識も高く、対策をされていたのだなと感じた試合でした。
――全日本学生選手権(インカレ)を振り返ってみていかがですか
初戦と2回戦を通して間違いなくチームは成長しましたし、今まで勝ち切ることができなかった早稲田から勝つことのできる早稲田へと成長したインカレだったと思います。
苦しい時期も多くありましたが、自分たちがやってきたことは間違いではないと証明できた、そんな大会だったと感じました。
――試合後三津英士監督(平8人卒=久留米工業大附)からは何を話されましたか
4年生はよく頑張ってくれたと、そして3年生以下はこの悔しいという気持ちを忘れて欲しくないということを強く言ってくださりました。
――来年もインカレを戦う後輩たちに向けてメッセージをお願いします
やる気がなくなる時、モチベーションが下がる時など、ハンドボールに向ける感情がブレそうになる時があると思いますが、そんな時こそ踏ん張って欲しいと思います。いましか頑張ることのできない、学生ハンドボールという特別な期間を、早稲田らしく泥臭く精一杯頑張ってほしいです。
狩野直樹副将(スポ4=埼玉・浦和学院)
――今の率直なお気持ちを聞かせてください
やり切ったという気持ちと悔しい気持ちがまだあります。4年間の集大成ってことで、自分たちのチームでやれるとこまでやれたのかなと思います。
――今日の試合を振り返ってください
個人としては余計な退場を2回して、 チームのリズムを崩してしまって反省する点が多いのですが、チームとしてはしっかり1つにまとまって、最後まで戦えていたのかなと思います。
――これまでのインカレを振り返ってください
2、3年のインカレはどちらも1回戦敗退で、2年生の時なんて自分はほとんど試合出ていませんでした。僕たちの代になって、春リーグ(関東学生春季リーグ)、秋リーグ(関東学生秋季リーグ)共に弱くて、周りからも弱いと言われ、入れ替え戦も行くのではないかと言われる程度の強さだったのに、ここまで頑張ってベスト8という結果にできたのは、4年生が頑張ったのもあるし、下級生が頑張ってくれたのが大きいです。
――来年もインカレを戦う後輩に向けて、最後にメッセージをお願いします
主力の選手も多く下級生から出ているので、最低ベスト8まで行ってもらって、ベスト4、そして優勝まで頑張ってもらいたいなと思います。