一期一会という言葉がある。蹴球放浪家・後藤健生も、最後の出会いになるかもしれないと思い、取材をすることがある。だが、時…

 一期一会という言葉がある。蹴球放浪家・後藤健生も、最後の出会いになるかもしれないと思い、取材をすることがある。だが、時には期せずして早々と再会のタイミングが訪れることもあるのだ。

■ポーランドへ赴く

 EURO2012はポーランドとウクライナの共同開催でした。

 両国間を行ったり来たりするのは大変なので、僕は準々決勝まではポーランドにずっと滞在して各都市を回っていました。ドイツとの国境に近いヴロツワフを訪れたのは、チェコ対ポーランド戦が行われた6月16日でした。

 ポーランドは0対1で敗れて、グループA最下位で敗退。3日後、もう一つの開催国だったウクライナもイングランドとフランスに敗れて姿を消してしまいました。

 ヴロツワフには約半日の滞在で、試合終了後すぐに夜行列車で泊まっていたウッジに戻ったので、ここで観光はほとんどできませんでした。

 ポーランドは大好きなのですが、それほど来る機会はないでしょう。しかもヴロツワフは首都ワルシャワから350キロも離れています。

 ところが、それから4か月後の10月に、再びヴロツワフを訪れることになるのです。

 アルベルト・ザッケローニ監督の下、ブラジル・ワールドカップを目指していた日本代表が、10月12日にサンドニでフランス代表、同17日にヴロツワフでブラジル代表と対戦することになったのです。

■土地勘はバッチリ

 4か月前に半日だけでも滞在した経験があるので土地勘もバッチリ。EURO期間中は料金が高くて泊まれそうもなかった中央駅前にある重厚な建物のホテル・グランドに泊まり、日本代表がトレーニングに使ったグラウンドのそばにある「スタディオン・オリンピスキ」も見学しました。

 ヴロツワフがドイツ領だった第2次世界大戦前にドイツによって建設され、当時のドイツ代表のホームとして使用され、戦後、この街がポーランド領になると今度はポーランド代表のホームとして使われたという、非常に珍しいスタジアムです(「蹴球放浪記」第146回参照)。

 EUROでヴロツワフを訪れた時、最大の心残りはこのスタジアムを見られなかったことだったので、4か月後に再訪できたのはとても幸運でした。

 ちなみに、試合は日本の完敗でした。

 ブラジルには「日本にボールを持たせておいても怖くはない。奪ってカウンターで攻める」という“勝利の方程式”があったのです。案の定ヴロツワフでの試合でもパウリーニョネイマール(2点)、カカに得点を奪われ、0対4で完敗してしまいました。

 サンドニではフランス相手に1対0で勝利していたのですが……。

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