五十嵐亮太氏が迫るDeNA三嶋の胸の内「いやぁ、三嶋投手いいですね! 去年のキャンプとは全く違う」 DeNAのキャンプ最…
五十嵐亮太氏が迫るDeNA三嶋の胸の内
「いやぁ、三嶋投手いいですね! 去年のキャンプとは全く違う」
DeNAのキャンプ最終日だった23日、投手陣のキャッチボールを見終えた後にこう言い切ったのは、ヤクルトやソフトバンク、メジャーで活躍した五十嵐亮太氏だ。昨年もDeNAのキャンプ地を訪れ、三嶋一輝投手と言葉を交わしていた五十嵐氏がうれしそうに笑う。
「実は去年はすごく上半身に頼った力任せの投げ方になっていたし、表情も明るいとは言えなかったので気になっていたんです。それが今年は晴れ晴れとした表情で、投球フォームも無理なくスムーズ。バランスよくキャッチボールをする姿を見て『今年はかなり良さそうだ』と思いました」
三嶋は昨季、開幕からセットアッパーや守護神役を任されたが、5月に右肩痛で戦線離脱。国が難病に指定する胸椎黄色靱帯骨化症であると診断され、8月に切除手術を受けた。そこからリハビリを重ね、11月にはブルペン投球を始めるなど順調に回復。22日にロッテとの練習試合で約4か月ぶりに実戦マウンドに立つと、1イニングを3者凡退とする好投を見せていた。
昨春にはすでに難病の影響を感じていたのか。五十嵐氏はプロ11年目を迎える右腕に直接、その状況を確かめてみたという。
「やはり体に異変は感じていたそうです。股関節の可動域が制限されてしまい、以前よりも投球の際に踏み込む左足がインステップ気味になっていた。そうなると下半身の力をうまく利用した投げ方ではなく、上半身の力を使って球速150キロを超える出力の高いボールを投げようとしてしまう。だから、上半身に頼って『エイッ!』と投げるフォームになっていたんですね。それが手術した後は股関節の可動域が戻り、ホームに向かって真っ直ぐ左足をつけるようになったので、上半身と下半身がしっかり連動した動きが取れるようになったそうです」
「ポジションを譲りたくないという想いは強かった」
腰に痛みを感じ、前屈するのもままならなかったという。だが、それでも三嶋がマウンドに立ち続けたのは、自分が置かれた立場を誰にも譲りたくなかったからだ。
「2020年から2季は守護神として41セーブを記録。昨季は開幕からセットアッパーを任されていましたが、やはり守護神をしたい、ポジションを譲りたくない、という想いは強かったと言います。山崎康晃と切磋琢磨する中で、戦列を離れることはしたくなかったようです」
だが、その想いだけで乗り切れるほどプロの世界は甘くない。腰の痛みが投球に与える影響は明らかで、戦列を離れざるを得なかった。椎間板ヘルニアなどの可能性を探ったが、胸椎黄色靱帯骨化症との診断。あまり復帰例のない病気だっただけに不安を感じたようだが、一縷の望みを託すしかなかった。
懸命なリハビリや周囲のサポートもあって、今では「手術をして良かった」と三嶋は晴れやかな表情を浮かべる。五十嵐氏も「昨年のキャンプでは表情も暗く、何かに悩んでいる様子だったのが、今年は別人。最高の笑顔をしていますよ」と嬉しそうだ。
「キャッチボールを見れば、フォームも球筋も全く違うのは一目瞭然。能力の高い投手はうまく下半身が使えなくても、上半身に頼った投げ方でなんとなく乗り切ってしまうこともある。ただ、それは小手先の解決でしかなく、シーズンを通して続けることはできないし、成績の浮き沈みも激しくなってしまいます。投手はいかに体に負担の少ないフォームで投げられるかが大事。今年はまたマウンドで躍動する姿を見られそうですね」
チームが1998年以来となる日本一を目指す上で、三嶋が欠かせないピースとなることは間違いない。(佐藤直子 / Naoko Sato)