DeNA三嶋、国指定の難病「胸椎黄色靭帯骨化症」の手術 DeNAの三嶋一輝投手は9日、横浜市内の球団事務所で契約更改交渉…
DeNA三嶋、国指定の難病「胸椎黄色靭帯骨化症」の手術
DeNAの三嶋一輝投手は9日、横浜市内の球団事務所で契約更改交渉に臨み、現状維持の年俸1億2000万円(金額は推定)でサインした。3年契約の1年目の今季は、5月に右肩の張りを訴えて出場選手登録を抹消され、その後、厚労省から難病に指定されている「胸椎黄色靭帯骨化症」が判明。8月29日に約6時間にわたる手術を受けた。原因不明の症状に悩まされていた不安、焦り、苦しみを振り返りながら、来季の完全復活を誓った。
異状は、春季キャンプ前の1月中旬から感じていた。「左足に全然力が入らない。データを取ってみると、左足の太さ、筋肉量は右足と変わらないのに、出力は半分以下しかないことがわかりました」と振り返る。やがて、日常生活に支障をきたすまでになっても、三嶋は黙って無理な投球フォームで野球を続けた。「踏み出した左足に力が入らないので、体が流れてしまう。そこで、インステップして体を止めていました。まっすぐ本塁方向へ踏み出すと力が入らないので、真横に踏み出す感覚でした」。
なぜ、検査や治療を優先しなかったのか? それは、当時三嶋が置かれていた立場に理由がある。2020年と2021年の2年間で41セーブを挙げたが、今年のキャンプ前の時点で、守護神を誰が務めるかは白紙。山崎康晃投手らとの競争を求められていた。「負けたくなかったし、クローザーまで務めた立場を、簡単に人に譲りたくありませんでした。中継ぎにしても、ポジションを1度でも人にあげてしまえば、取り戻すのは本当に大変ですから」と当時の胸中を明かす。「どうにかして投げたかったし、“土俵“にさえ立てば、なんとかなると思っていました」と付け加えた。
しかし、ついに限界が訪れる。感覚のない左足をかばうあまり、右肩が悲鳴を上げたのだ。32歳の誕生日の5月7日、三浦大輔監督ら首脳陣に「しっかり検査を受けさせてください」と申し入れ、翌8日に出場選手登録を抹消された。
守護神返り咲きへ「1軍で通用する球をしっかり積み上げていって、勝負はそこから」
最終的な診断は、想像もしていないものだった。胸椎黄色靭帯骨化症とは、背骨付近の靭帯が硬くなり神経を圧迫する病気だ。「不思議なことに、圧迫されていたのは胸の神経で、症状は下半身に出ていたのです。いくら下半身を検査しても、原因がわからなかったのは当然でした」と三嶋は説明する。
今季は13試合2勝2敗5ホールド1セーブ、防御率2.84。手術後、日常生活には支障がなくなったと言う。練習も徐々に強度を上げ、今では1日置きにブルペンで40球のピッチングを行っている。「僕自身は来年の頭(開幕)から、中継ぎのポジションを奪いにいく気持ちでいます」と言い切る。
ライバルの山崎はメジャー移籍を取り沙汰されていたが、6年契約を結びチーム残留を選択した。伊勢大夢投手も今季リーグ最多の71試合に登板して防御率1.72をマークし、守護神の座を虎視眈々と狙っている。そんな中、三嶋は「まずはこの難病と向き合い、復活すること。1軍で通用する球をしっかり積み上げていって、勝負はそこからです」と自分に言い聞かせるようにうなずいた。口には出さなくても、「いずれクローザーに戻ってみせる」と心に決めているに違いない。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)