5か月ぶりの国内参戦で改めて感じた「人柄」と「思い」 女子ゴルフの国内ツアー・樋口久子 三菱電機レディス最終日(埼玉・武蔵丘GC)は33歳・金田久美子(スタンレー電気)の11年189日ぶり、1988年のツアー施行後の最長ブランク優勝で幕を閉…

5か月ぶりの国内参戦で改めて感じた「人柄」と「思い」

 女子ゴルフの国内ツアー・樋口久子 三菱電機レディス最終日(埼玉・武蔵丘GC)は33歳・金田久美子(スタンレー電気)の11年189日ぶり、1988年のツアー施行後の最長ブランク優勝で幕を閉じた。今季から米ツアーを主戦場にし、5か月ぶりの国内参戦となった渋野日向子(サントリー)は9位。最終日には68をマークし、バーディーと笑顔で大勢のギャラリーを喜ばせた。そして、あらためて渋野の「人柄」と「思い」を感じた大会となった。(取材・文=THE ANSWER編集部・柳田 通斉)

 最終9番パー5。渋野はラウンドを終えると、新垣比菜、阿部未悠とハグをした。新垣とは、同学年でジュニア時代からの仲。会見では「同級生がいるという安心感ですかね。昨日も一昨日も『保護者感覚』だったので、今日は最終日にして、『激熱』な感じで回れました」とラウンドの感想を表現した。

 確かに渋野は自分より、ドライバーショットを遠く飛ばす新垣を見て、熱くなっていたように感じた。

「保護者感覚」と言ったのは、第1日が21歳の山下美夢有、19歳の川崎春花とぺアリング。第2日が高2の手塚彩馨、小俣柚葉と同組になったからだ。山下とは一緒にプレーしたことがあるが、他の3人は初対面。どんなキャラクターかも分からなかったが、渋野は積極的に話しかけた。そして、スタートのティーグラウンドから、組の空気が柔らかくなった。ホールを重ね、前組との間が詰まって「待ち時間」ができると、渋野を中心に笑顔の輪が広がった。

 海外メジャー大会覇者の渋野は、3人にとっては「大きな存在」。だが、渋野は彼女のたちの緊張をほぐすように、岡山弁も入れながら話し続けた。そして、好ショット、パットに「ナイス」の声をかけ、拍手もした。自身もプレーになると表情を引き締め、一打に集中し続けた。

「『いいところを見せたい』という思いもありました」

 ラウンド後、川崎は「渋野さんからも話しかけてくださったりして、凄く楽しかったです」と言い、手塚は「本当に凄すぎる人ですが、笑顔で気さくに話してくれて、回りやすかったですし、ああいう選手になりたいと思いました」。小俣は「(同組が決まった時から)凄い嬉しかったです。いろいろ話してくれたんですけど、海外の感じとか『英語はしゃべれるようになりましたか』とかを聞きました」と振り返った。その質問に、渋野は「全く」と即答し、爆笑させている。

1年前に渋野に聞いた“ライバルのミスを期待しない理由”

 なぜ、そこまでできるのか。渋野は「『プロの世界も楽しい』と思ってほしかったから」と言い、手塚、小俣のリアクションを伝えると、照れ笑いした。

「滅茶苦茶うれしいんですけど、ちょっと、こっぱずかしいです(笑)。でも、『回りやすかった』と言ってくれるのが、一番うれしい言葉かなと思います」

 その上で、年下選手の台頭について聞くと、ストレートに思いを語った。

「後輩が頑張ってくれるのは、うれしいです。これからも年下選手が増えますし、アメリカにもいろんな選手が挑戦できる時代になりました。同級生の勝みなみ、(2学年下の)西村優菜ちゃんもそう(米ツアー最終予選会にエントリー)。なので、『私も頑張らなければ』と思います」

 渋野のマインドは、常に「一緒に頑張ろう、盛り上げよう」。前年大会の最終日後半は、優勝を懸けてペ・ソンウとすさまじいデッドヒートとなったが、渋野はソンウがバーディーを決めると「ナイス」と微笑み、パットを逆に外せば、膝を曲げて残念がった。どんな状況でも、ミスを期待しない姿があった。その理由を聞くと、「スポーツマンシップを大事にしていますし、相手のいいプレーには、『自分も頑張らなきゃ』と思わされますから」と返したのを覚えている。

 渋野は1年経っても、渋野のままだった。連日、大勢のギャラリーが付いたが、バーディーを獲った後などは極力、「ナイス」の声が出た方に顔を向け、笑みを返した。宮里藍の父でコーチの優さんは「ゴルファーの前に人格者であれ」を信念に3人の子供を育ててきたが、渋野を見ていると、同様に育てられたことが想像できる。

 11月3日開幕のTOTOジャパンクラシック(滋賀・瀬田GC北C)は米ツアーとの共催大会。渋野は再び同組選手と“激熱”に、そして、気持ちいい態度でプレーするに違いない。(THE ANSWER編集部・柳田 通斉 / Michinari Yanagida)