ゴルフインストラクターの61歳・永井哲二さん 16日まで行われた女子ゴルフの国内ツアー・富士通レディース(千葉・東急セブンハンドレッドC)は、古江彩佳(富士通)の大会連覇で幕を閉じた。20歳のルーキー岩井明愛(あきえ)は、最終日に7バーディ…

ゴルフインストラクターの61歳・永井哲二さん

 16日まで行われた女子ゴルフの国内ツアー・富士通レディース(千葉・東急セブンハンドレッドC)は、古江彩佳(富士通)の大会連覇で幕を閉じた。20歳のルーキー岩井明愛(あきえ)は、最終日に7バーディー、ボギーなしの65で回り、通算15アンダーで2位。双子の妹・千怜(ちさと、ともにHonda)との史上初の双子姉妹によるツアー優勝は持ち越されたが、来季シード権獲得に大きく前進した。活躍の裏には、幼少期から姉妹を見守ってきた男性のサポートがあった。(取材・文=THE ANSWER編集部・柳田 通斉)

 埼玉県毛呂山町のゴルフ練習場・リンクスゴルフクラブ。インストラクターの61歳・永井哲二さんは、富士通レディースを戦う明愛の応援でインターネット中継を見ていた。結果は2位。だが、最後まで諦めずにプレーし、古江を笑顔で称える明愛の姿が嬉しかったという。

「勝負が決まった瞬間に拍手をし、アテストに来る古江さんを待って、グータッチをする明(あき)ちゃんの姿が印象的でした。『やっぱり、岩井さんのお子さんだな』と思いました」

 永井さんは、岩井姉妹を小3から指導し、その成長を見守ってきた。今月3日にも訪ねてきた2人の状態をチェック。明愛には「スイングでリスト(手首)を使い過ぎているね。左手の小指が緩んでいるから、そこを気を付けて。あとは、いつもよりフラットに振っているから、アップライトに振る意識を持って」などとアドバイスを送っていた。すると、すぐに球の弾道が高くなり、方向性も安定。明愛は66をマークした第2ラウンドを終えると、「地元の練習場に行って、コーチに見てもらってドライバーが良くなりました」と感謝を口にしていた。

 昨年6月、姉妹は最終プロテストに一発合格。父・雄士さんは、2人を育成してくれた感謝を込め、永井さんに「これを機にコーチ契約をしていだけませんか」と伝えたという。だが、返答は「いいえ。このままでいましょう」だった。前途洋々の姉妹とのコーチ契約は、永井さんにもメリットがあるはずだが……。

「長く続いてきた関係を崩したくないんです。私はここでの仕事もありますし、プロになった姉妹に影響を与えていくのはどうかと思っています。2人がここまで来たのは、彼女たちの才能と努力があったからこそ。なので、私はアドバイスを求められたら、気付いたことを伝える。それでいいと思っています」

 ツアーを転戦する姉妹が、永井さんのもとを訪ねるのは月曜日、もしくは火曜日に限られるが、多忙で日が空くこともある。それでも、永井さんは「たまに来て、ここでリラックスして安心する。私はそんな場にいる人でいいと思っています」と話した。8月、千怜がツアー史上3人目の初優勝からの2連勝を最年少で飾った後も、「おめでとう」と伝え、明愛にも普段通りに接したという。

「これまでも、どちらかが優勝して2人で練習に来ることはありましたし、明ちゃんに気を遣うことはしませんでした。今回の2位は、久しぶりに明ちゃんらしい『爆発力が出た』という印象です。今後も楽しみです」

 人間性も高く評価される岩井姉妹にとって、永井さんは信頼し続けるアドバイザーであり、心のオアシス。この関係はこれからも長く続くことだろう。(THE ANSWER編集部・柳田 通斉 / Michinari Yanagida)