1点を追う9回1死満塁で起用も併殺でゲームセット■阪神 3ー2 DeNA(CSファースト・10日・横浜) DeNAは10…

1点を追う9回1死満塁で起用も併殺でゲームセット

■阪神 3ー2 DeNA(CSファースト・10日・横浜)

 DeNAは10日、本拠地・横浜スタジアムで行われた阪神とのクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージ第3戦に2-3で惜敗。1勝2敗でファイナルステージ進出を果たせず敗退した。しかし、就任2年目の三浦大輔監督は、昨季最下位から2位に躍進したシーズンを振り返り「昨年と比べると、かなり変わった」と大いなる手応えを口にした。

 1点を追う9回。DeNAは阪神5番手の湯浅を攻め1死満塁に。一打逆転サヨナラ勝ちのチャンスをつくった。ここで三浦監督が山崎康晃の代打に指名したのは、40歳のベテラン、藤田一也内野手だった。藤田は初球の152キロの速球を打って出たが、二ゴロ。ボールが二塁手から本塁、さらに一塁へ転送され、併殺でゲームセット。一塁へ頭から滑り込んだ藤田は、うつ伏せのまましばらく動けなかった。

 代打要員としてはベンチにはまだ、大田泰示外野手も残っていた。しかし、これまでの経緯を含めて考えれば、藤田の“一択”だったのかもしれない。

 藤田は2012年のシーズン中、足掛け8年間在籍した横浜(現DeNA)から楽天にトレードされ、新天地でベストナイン2度、ゴールデングラブ賞3度の名二塁手にスケールアップ。昨季限りで楽天を戦力外となると、古巣からの熱烈な待望論に応えて10年ぶりに復帰した。若手の面倒見がよく、人柄の良さは折り紙付き。今季は7月10日以降、2軍調整が2か月半に及んだが、それでも9月28日に1軍へ這い上がった。

 2日前のファーストステージ第1戦では、ついに6番スタメンで起用され、一塁強襲安打を放ったことを周囲も熱心なファンも見てきた。三浦監督は「(起用の理由は)藤田の経験。全員が準備してくれて、藤田もしっかり準備して、思い切っていった結果ですから」とだけ語った。

CSのハマスタ動員数、3日連続でシーズン中の最多を上回る

 守っては、先発の浜口遥大投手が、5回まで佐藤輝のソロによる1失点に抑えていた。2-1と1点リードして迎えた6回。ブルペンでは、今季開幕投手で中継ぎに配転された東克樹投手、入江大生投手らがスタンバイしていた。三浦監督も試合前には、短期決戦だけに早めの継投を想定していたが、時おり制球を乱しながら2安打2四球1失点と粘っていた浜口を信じ、5回裏の打席に立たせた上で続投させた。結果的には、先頭の北條に左翼線二塁打、続く近本に右翼フェンス直撃の適時打を許し、同点に追いつかれて降板。入江が後を引き継いだが、相手の勢いを止められず、原口に決勝の左前適時打を浴びた。

 阪神は先発の才木から、浜地、岩貞、西純、湯浅と小刻みにつなぎ、DeNA打線をかわした。一方で今季28セーブ、防御率1.96をマークしながら、第1戦の投球で不安をのぞかせた岩崎は、使わずに済ませた。変幻自在の“短期決戦用”の戦術において、阪神に一日の長があったと言えるのではないだろうか。

 とはいえ、ファンはDeNAの戦いを支持していた。このファーストステージ3試合の観客動員は3万3033人、3万3037人、3万2977人。全試合でレギュラーシーズンの横浜スタジアム史上最多記録(3万2819人)を上回った。振り返れば、レギュラーシーズンでは、チーム防御率を昨季の4.15(リーグワースト)から3.48(同3位)へ劇的に改善し、2位躍進の要因となった。

 三浦監督はレギュラーシーズン中、最下位だった昨季と比較されることを良しとせず、「去年は去年。あくまで優勝を狙ってやっていますから」と高い目標を掲げてきたが、最後に初めて「1年でいいチームに変わってきたと思います」とうなずいた。「けれど、もっともっと変わっていかないといけない」と意欲を新たにする。視線の先には、希望しかない。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)