例年どおり、J2では熾烈な戦いが続く。その中で、サッカージャーナリスト・後藤健生はFC町田ゼルビアに注目する。初のJ1…

 例年どおり、J2では熾烈な戦いが続く。その中で、サッカージャーナリスト・後藤健生はFC町田ゼルビアに注目する。初のJ1昇格を狙う町田の戦いぶりと、率いる指揮官、さらにJ2を変化させている外国人監督たちについて考察する。

■首位を相手に激しいゲームを展開

 第12節の横浜FC戦は、相手が首位というだけあって、前半は押し込まれる展開だった。そして、9分に町田側から見て左サイドを崩されて早くも失点してしまう。伊藤翔のクロスを長谷川竜也にヘディングで決められたものだ。

 しかし、全体として押し込まれたものの、町田は守備の局面では両ウィングバックが落ちて、最前線の鄭大世を残して5-4-1で守って決定機を作らせずにしのぎきって、前半の終盤から反撃に出る。

 そして、後半からシャドーストライカーとして入った山口一真の突破力を生かして、後半はボールを縦に縦にと動かしながら決定機を作り続けた。そして、69分には佐野から右WBの翁長聖を経由して、鄭大世と交代したトップのヴィニシウス・アラウージョに渡って同点ゴールを決める。

 両チームが前にボールを付け合い、ボールを巡って激しいプレーの応酬が続く、J2の上位争いらしい激しいゲームだった。

■昨季のJ1チームとも好試合

 第13節の徳島ヴォルティス戦も、横浜FC戦の勢いをそのまま持ち越したスピーディーなゲームだった。

 町田の攻撃は非常にスムーズだった。

 徳島戦は4-4-2で、トップは鄭大世が先発。トップ下に山口。右が平戸大貴、左が太田修介。そこに両サイドバック、右の翁長と左の奥山政幸がオーバーラップしてくる。そして、トップやサイドの選手にパスが渡ると、周囲のスペースにどんどん人が入ってワンタッチ、ツータッチのパスが回るテクニカルな攻撃が続いた。

 20分過ぎには相次いで決定機。21分には翁長からの長いパスを受けた鄭大世が相手GKまでかわして無人のゴールにシュートを放ったが、よくカバーした徳島のDF内田航平にブロックされてしまった。

 一方、徳島の方はこの試合前まで2勝8分2敗の16位と出遅れていたが、昨年はJ1で戦っていたクラブだけに。非常にパススピードが高いパスを使って良質なカウンターをしかけてくるチームだった。とくに左サイドの杉森考起のドリブルは再三チャンスをお膳立てしていた。

■徳島を崩し切れなかった理由

 しかし、後半に入ると、ホームの町田はさらに攻撃の圧を高めることに成功した。山口が左サイドに回って何度も突破に成功して良質のクロスを上げ、セットプレーからも決定機をつかむ。

 だが、町田が再三のチャンスを生かせないでいると、逆に徳島が60分に先制に成功する。自陣からのパスを受けた杉森がスピードドリブルで左サイドを突破して、ゴール前の混戦から最後は坪井清志郎が決めた。町田が攻め続ける中での見事なロングカウンターだった。そして、74分にはペナルティエリアの角あたりから新井直人が強引に撃ったシュートが町田のDFに当たって入るというラッキーなゴールで徳島が追加点を奪って町田を突き放した。

 60分に失点するまでは見事な攻撃を見せていた町田だが、その後は縦に急ぎ過ぎてなかなか良い形が作れなくなって、反撃の機会はほとんどなくなってしまった。

 町田の攻撃力が削がれたのは先制を許したことによる精神的な原因もあったろうし、サイドを上げて攻撃を仕掛けようとすると徳島にその裏のスペースを狙われたため、攻撃の厚みが作れなくなったためでもあるが、何よりも試合前に振り出した強く冷たい雨の影響でピッチに水がたまってグラウンダーのパスが通りにくくなったことが大きく響いた。

■敗戦に重なった訃報

 さて、“ポポヴィッチ節”は試合終了後も続いた。

「試合内容は町田の方が良かった。60分までは町田が攻撃を仕掛けていた。カウンターからの失点をしてしまい、2失点目は不運だった……」

 記者会見の席でポポヴィッチ監督は何度もそれを繰り返した。たしかに、試合内容としては町田が握っている時間が長かったのは事実。前半から何度もあったチャンスで決めていれば、おそらく町田が確実に勝利したことだろう。

 だが、負けた試合の後で「内容はわれわれの方が上だった」と、繰り返し主張し続けるあたりがポポヴィッチ監督らしいところである。

 そんな“ポポヴィッチ節”を聞いて帰宅した夜、イビチャ・オシム監督の訃報に接することになった。これも何かの巡り合わせなのだろうか……。

 ランコ・ポポヴィッチはオシム監督の弟子筋に当たる指導者だからだ。

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