サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。重箱の隅をつつくような、「超マニアックコラム」。今回は、サッカーより…
サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。重箱の隅をつつくような、「超マニアックコラム」。今回は、サッカーより熱くなるサッカーについて。
■「机上のサッカー」の面白さ
今回は「サッカーゲーム」の話である。
といっても、いわゆる「ビデオゲーム」や「オンラインゲーム」のことではない。いまや「eスポーツ」はアジア競技大会の公開競技として試行され、オリンピックにもはいるのではないかという日の出の勢い。国際サッカー連盟(FIFA)が「eサッカー」に積極的に関与すれば、日本サッカー協会(JFA)も傘下に収めて「日本代表」まで組織し、Jリーグに「eJリーグ」なるものまで登場して、空前のブームだ。
だが、今回取り上げるのはそうしたデジタルゲームではない。広大なピッチで行うサッカーの醍醐味を、家のなか、あるいは机の上でなんとか実現しようという試みである。実はこれが非常に奥深く、熱いのである。
デジタル時代を迎える前に、机の上でサッカーを楽しむことはできないだろうかとさまざまな人が考えたのは、サッカーの人気、競技への情熱から考えれば当たり前のことのように思える。しかし誰もが熱狂する「ゲーム」をつくりだすことはそう簡単ではなかったようだ。
■欧州各国での試行錯誤
こうしたゲームの最古のものは、1884年にイングランドのプレストンで考案されたという「TOY GAME OF FOOTBALL」らしい。外見はチェスに似たもので、縦14マス、横11マスの盤面にそれぞれ11人のプレーヤーを模した「コマ」を置き、ルールブックに従ってボールのコマを動かしながら相手のゴールを攻撃した。
第一次世界大戦中の英国では、「TRENCH FOOTBALL」なるものがつくられた。よく知られているように、この戦争の特徴はドイツ軍と連合国軍がそれぞれ総延長700キロにもなる「塹壕(ざんごう)=trench」を掘って長期間対峙するというものだった。その塹壕戦の退屈を紛らわせることを目的としたものだったらしい。ゲームの盤面にところどころ穴がある(これは地雷か)塹壕の蛇行を掘り、盤面を傾けて穴を避けながらボールをころがして盤面最上部の「ドイツ軍将軍」にたどり着いたら1点というシンブルなもの。「これがサッカー?」と言いたい気持ちは、まあ、抑えておこう。
1950年代には、「PIN FOOTBALL」なるものが登場した。元はピンボールである。手前に向けてやや傾けた盤面の右手前からボールを突きだし、針で囲まれた地域にはいって止まると、そこに書かれた得点(5点~200点)や失点(マイナス25点)が記録され、何回かやって総得点を比較しあうというものだった。
下って1981年にフランスで考案された「CHAMPIONSHIP SOCCER」は、やや複雑だった。縦20マス、横12マスの盤面上には1個のボール(底が平たくなっていて転がらない)だけ。2人のプレーヤーは、トランプのようなカードを1枚とり、3個のサイコロを振って、それらの結果で順番にボールを動かし、相手ゴールを目指す。
■現在も生き残る「王様」
だがそうしたさまざまなチャレンジも、ひとつのシンプルなゲームには太刀打ちできず、消えていった。シンプルにして人びとの心をとえらえ続けているのは、現在「テーブルサッカー」と呼ばれるゲームである。
仕組みはいたって単純だ。ピッチを模した「盤」は高さ10センチほどの「壁」で囲まれ、そこにピッチを横切るように8本ほどの「横棒」が差し込んである。その横棒のそれぞれに選手を模した人形が固定されている。1チームあたり4本(の「横棒」は、後ろから「GK」「DF」「MF」「FW」となり、両チームの横棒が交互に並んでいる。選手はGK1人、DF2人、MF5人、FW3人というような形である。すなわち、GKを背後において2人のDFは3人の相手FWと、MFは相手MFと5対5で、3人のFWは相手のDF2人と向き合う形である。
横棒を通じて「選手」を操るハンドルは、タッチライン外の「壁」の外側についている。両側に1チームずつ。すなわち、このハンドルを操る「プレーヤー」同士は、それぞれのハンドルがあるサイドの横に立ってハンドルを操ってゲームを行うのである。ゲーム方法はシンプル。ハンドルで「選手」を左右に動かしながらボールを操り、ハンドルをくるりとひねり、「選手」を回すことでボールを「キック」するのである。
力任せでは、目の前の相手「選手」に当たってしまう。その跳ね返りが自陣ゴールに飛び込む事実上の「オウンゴール」は、初心者にはよくある光景だ。熟練者になると、微妙にボールを扱いながら左右に動かしてキープし、相手のスキを見つけて前線にパスを送る。ただボールを正面から「キック」するのではなく、ボールの横を叩いてカーブをかけたり、思いがけない方向に飛ばしたりする。試合は時間制ではない。通常は、5点を先に取ったチーム(プレーヤー)が勝ちとなる。