■徳島はまったく新しいチームに J2有力クラブの補強を査定する「J2のミカタ特別編」第6回は、徳島ヴォルティスとFC琉球…
■徳島はまったく新しいチームに
J2有力クラブの補強を査定する「J2のミカタ特別編」第6回は、徳島ヴォルティスとFC琉球を取り上げる。徳島は1年でのJ1復帰を目ざすが、移籍市場の収支は厳しい。昨シーズン過去最高の9位でフィニッシュした琉球も、複数の主力選手をJ1、J2のクラブへ手放した(#1、2のうち1)。
徳島は主力を大量に失った。
GK上福元直人が京都サンガF.C.へ、DFジエゴがサガン鳥栖へ、福岡将太がガンバ大阪へ移籍した。最終ラインと中盤の両サイドをカバーする岸本武流は、清水エスパルスへ新天地を求めた。
中盤センターでは、主将でチームに不可欠な岩尾憲が、リカルド・ロドリゲス前監督の浦和レッズへ期限付き移籍した。岩尾のパートナーだった小西雄大はモンテディオ山形へ、藤田譲瑠チマは横浜F・マリノスの一員となっている。
2列目から前線の選手では、鈴木徳真がセレッソ大阪入りし、垣田裕暉が鹿島アントラーズへ復帰したのちに鳥栖に迎えられた。さらに宮代大聖が、川崎フロンターレへレンタルバック後に鳥栖へ進路をとった。
昨シーズンのJ1でリーグ戦出場数トップ10の選手が、全員抜けてしまった。さらに、チーム得点王(8点)の垣田、同2位(7点)の宮代、同3位(5点)の岸本、同4位(3点)の岩尾が、ごっそりといなくなってしまったのである。まったく新しいチームになった、と言ってもいいだろう。
■誰が得点源になるのか?
新戦力で期待を集めるのは、C大阪から育成型期限付き移籍のFW藤尾翔太だ。2001年5月生まれの20歳は、昨シーズンも6月に水戸ホーリーホックへ育成型期限付き移籍し、22試合に出場して8ゴールをマークした。21年10月にはU―22日本代表に選出され、AFC U―23選手権予選に出場している。ゴール前で的確なポジションをとり、チャンスを得点へ結びつけるしなやかなストライカーだ。
J1昇格争いに加わっていくには、得点王を争う選手の出現が理想だ。19年に京都で17ゴールを記録した一美和成、昨年9月に加入した元ノルウェー代表ムシャガ・バケンガ、それに新加入の藤尾の奮闘が望まれる。
藤尾と同じくC大阪から期限付き移籍の新井直人は、19年、20年にアルビレックス新潟でプレーしていた。173センチのサイズながらCBでプレーし、両サイドバックやサイドハーフにも対応するマルチタレントである。
J1初挑戦となった昨シーズンのC大阪では、出場機会が限られた。それだけに、J2再チャレンジとなる今シーズンは、自身の存在価値を示すシーズンとなる。
守備陣は田向泰輝、石井秀典、カカら既存のメンバーに加え、ツエーゲン金沢から石尾峻雅、ファジアーノ岡山からレンタルバックの安部崇士、複数ポジションに対応する新井が加入した。人数に不足はない。あとは、スペイン人GKホセ・アウレリオ・スアレスがどのタイミングでピッチに立てるのか。
上福元に代わるレギュラーと期待される26歳は、1月末の入団発表時点で入国日未定となっている。スアレスの合流が遅れる場合は、経験豊富な長谷川徹がゴールマウスを任されるはずだ。
■岩尾らが抜けた中盤センターは誰に?
【補強充実度】 C 失った選手の数と質を考えると、同レベルの選手を補強するのは現実的に難しい。「A」はもちろん「B」の評価を得るのもハードルが高い。そのなかで、J1、J2から将来性を秘めた選手、経験を持った選手を獲得している。J2降格でもダニエル・ポヤトス監督を続投させ、継続性を担保したことは補強のひとつと言っていいか。
【J1昇格可能性】 C 「B」にするか迷いつつ、現状では「C」とした。ポイントは絶対的存在だった岩尾と、彼のパートナーとなっていた小西、藤田が抜けた中盤センターを誰が担うのか。新戦力では岡山から加入の白井永地、神戸から育成型期限付き移籍の櫻井辰徳らが候補になる。既存のメンバーでは20年のJ2優勝を知るDF田向、石井、MF内田航平、渡井理己、杉森考起、藤田征也、西谷和希らが、メンバーが大幅に入れ替わったチームの先頭に立っていくことになるだろう。20年のJ2優勝時に垣田が17得点をあげたように、確固たる得点源が登場すれば評価は上昇する。さらに言えば、既存のメンバーには「自分たちでJ1昇格をつかむ」との意地があるはず。戦前の厳しい評価をエネルギーに変えていくことで、J1昇格争いに絡んでいく可能性はある。