10月23日~28日、U-23アジアカップ予選が行なわれ、日本は2連勝で1位突破。来年6月にウズベキスタンで開かれる本…
10月23日~28日、U-23アジアカップ予選が行なわれ、日本は2連勝で1位突破。来年6月にウズベキスタンで開かれる本大会への出場を決めた。
今回の予選は、わずか3カ国による総当たり。相手はカンボジア、香港なのだから、日本の予選突破は当然の結果だろう。2試合のスコアがいずれも4-0だったことが物足りなく感じられるくらいだ。
とはいえ、年代別代表の国際大会は新型コロナウイルスが感染拡大した昨年来、次々と中止になっており、公式戦が行なわれること自体、久しぶり。特に初戦のカンボジア戦では緊張からか、「国歌斉唱が終わってピッチに立った瞬間、硬さが見られた。もうちょっと大丈夫かなと思っていたが、予想以上に硬かった」(U-22日本代表・冨樫剛一監督)。無事に予選突破を果たしたことを、まずはよしとすべきなのだろう。
さて、この予選に出場した日本のチームは、名称こそU-22日本代表となっているが、登録メンバー23人のうち、21歳以上(2000年以前生まれ)の選手はわずか4人。残る19人はすべて20歳以下(2001年以降生まれ)で、実質U-20日本代表と言ってもいいチームだった。
なぜ、このような編成になったのか。
それは日本が過去の大会も含め、U-23アジアカップを次回五輪への強化の場と位置づけ、その五輪に出場資格がある年齢の選手で臨んでいるからだ。
次回五輪とは、つまり今回で言えば、2024年パリ五輪。3年後の23歳以下を中心にチームを編成した結果、実質U-20代表になったわけである。
いわば"オーバーエイジ枠"に近い形で21歳以上の4選手を加えたが、大まかな位置づけとしては、パリ五輪に向かっての強化がここから始まったと考えていい。来年のU-23アジアカップ本大会では、パリ五輪で指揮を執る監督が正式に就任し、チームを率いることになるはずである。
今回の予選に関しては、日程をほぼ同じくして天皇杯準々決勝が行なわれたため、必ずしも20歳以下のベストメンバーがそろえられていたわけではないが、それにもかかわらず、登録メンバーからそれなりの充実感が漂うのは、現在のJリーグで活躍する19、20歳の層が厚いからだろう。

J1リーグでもすでに際立った実績を残している松岡大起
なかでも際立つ実績を残しているのが、清水エスパルスのMF松岡大起(出場31試合。うち先発31試合。※出場・得点記録はJ1第33節終了時点。以下同じ)である。
10代だった一昨季から、すでにサガン鳥栖の主力ボランチとして活躍していたが、今季途中に清水へ移籍して以降も、その存在感は薄れていない。キャプテンシーも備えており、今後は"パリ世代"の顔となっていく選手だろう。
同じ清水からは、MF鈴木唯人(出場28試合。うち先発21試合。得点2)も今回のメンバーに加わった。持ち前の優れたテクニックに加え、コンタクトの強さも増しており、今季はさらなる伸びしろをうかがわせている。
また、湘南ベルマーレからは、ふたりの19歳が送り込まれていた。MF田中聡(出場31試合。うち先発26試合。得点2)と、DF畑大雅(出場17試合。うち先発12試合)だ。
田中は昨季すでに17試合に出場し、台頭の兆しを見せていたが、今季は押しも押されもせぬ中心選手として活躍。主にボランチを務めながらもゴール前へ進入する意識を高め、記念すべきJ1初ゴールも記録している。
一方の畑は、スピードを生かした突破力で湘南のサイド攻撃に不可欠な武器となっている。今回の香港戦でも、それを裏づけるように、突破からのクロスで先制点をアシストした。
畑が「代表ではチーム(湘南)と違うポジションをやることもあり、チームでは得られないものがある。同年代とやれて、いい刺激になる」と話しているように、それぞれの活動をうまく組み合わせ、自らの成長につなげている様子が見て取れる。
その他、徳島ヴォルティスのMF藤田譲瑠チマ(出場23試合。うち先発11試合)、今回の予選で2ゴールを挙げた柏レイソルのFW細谷真大(出場25試合。うち先発9試合。得点3)を加えた6人が、今回の招集メンバーのなかでは、J1実績で同世代を牽引する6人衆ということになるだろう。
所属クラブではそれぞれが頼れる先輩とともにプレーしていることもあり、同世代だけのチームに入っても、まだ格の違いを見せつけるには至っていないが、このままJ1で経験を重ねていけば、パリ世代全体のレベルアップにつながるはずだ。
加えて言えば、上記6人衆のうち、細谷を除く5人までもが残留争い真っ只中のクラブに所属しているのも、偶然とはいえ、興味深い。
「チームに戻ると、残留争いが待っている。J1とJ2では選手の評価も違ってくると思うので、しっかり残留できるようにしたい」
畑はそう話していたが、しびれるようなギリギリの戦いも若い選手たちにとっては貴重な経験場となるだろう。ポジティブに考えるならば、たくましさを増し、大きく成長するチャンスでもある。
東京五輪の激闘がまだまだその余韻を漂わせるなか、メダルまであと一歩まで迫った悔しさを晴らすべく、パリ五輪へ向けての新たな戦いがスタートした。
J1での台頭著しいパリ世代に、今後も注目である。