第1回に登場するは、早大漕艇部を引っ張る船木豪太主将(スポ4=静岡・浜松北)と川野柊(法4=東京・早大学院)だ。花形種…

 第1回に登場するは、早大漕艇部を引っ張る船木豪太主将(スポ4=静岡・浜松北)と川野柊(法4=東京・早大学院)だ。花形種目の男子エイトもリードするお二人に、これまでの取り組みやラストレースへの意気込みなど伺った。

※この取材は10月16日に行われたものです。

失うものが無い挑戦者という気持ちで


今春の早慶レガッタ

――今回の取材は早慶レガッタ以来となります。その早慶レガッタでは対校エイトで惜しくも敗れましたが、その後の春夏をどのように過ごしてきましたか

船木 早慶戦に負けたのは僕自身立ち直るのに時間がかかりました。今でも叶うものならもう一度やり直したいという気持ちもあります。ただ、その負けを引きずって今回もだめだと一生引きずるなと思っていて、その負けを忘れないようにきつい練習も一生懸命やってきました。

川野 監督とテクニカルアドバイザーとともに早慶戦の敗因を洗い出しました。漕ぎの長さが新たな課題に見つかったのでそこにフォーカスして課題を解決するために半年間取り組んできました。

――8月には合宿も行ったと伺いました

船木山梨県の河口湖で行ったのですが、富士山が見えるとても良い環境でした。普段の練習よりもボリュームは少し多めで長い距離を漕いで内容もきつめのメニューをこなしました。

川野どれだけ他の大学よりも長く漕げるかというところを課題として取り組みました。あと、キャッチのところで下半身を中心にボートを進めていきたいのですがどうしても上半身が起き上がってしまうという課題が8人に共通してあったので、そこを解決できるように臨みました。もう一つは1年生から4年生まで寝食を共にすることでコミュニケーションを図りました。 

船木 大会まであと3週間ですが、だいぶ課題は改善されてきました。ですがまだ、残りの期間でつめていかないといけないと思っています。 

――春と比べて違うなと感じる点はありますか

川野 危機感はあると思います。当時は自分たちが強いのではないかという気持ちがあって、驕りみたいなものがありました。しかし今は危機感が常に頭の片隅にあって練習しています。

船木 メンバーを個々に見ると実力のある選手や高校時代から活躍していた選手が揃っていると思います。だから早慶戦までは大丈夫だろうという驕りがあったのかもしれないです。そこで自分たちの実力がまだまだ足りなかったということを感じました。内田監督(内田大介監督、昭54教卒=長野・岡谷南)が「最強のチャレンジャーになろう」とおっしゃっていたのですが、まさに失うものが無い挑戦者という気持ちで上を目指して頑張っています。今まで僕が言ってやっていた部分があったと思うのですが、こうしたらどうですかみんなから意見が出てくるようになりました。 

スタートの爆発力を生かして


川野選手は自身初のインカレにかける思いを熱く話してくださいました

――ご自身にとってのインカレや全日本はどのような舞台ですか

船木 インカレと全日本が今年は同時開催なので整理がつかないところはあります。やはりインカレで言うと、去年も出場したのですが男子エイトで優勝を狙ってきている部分があります。去年は4位で優勝まで届かなかったので悔しい思いをしました。当時自分は3年生だったのですが4年生の先輩に勝たせてあげられなかったというか、自分がもう少し強かったらせめてメダルくらい取れたのではないかという思いが強いです。そういう意味では今年は自分が最上級生なので雪辱を果たしたいという思いも強くあります。 

川野 僕は今回が初出場なので思い出がないです。しかし、早稲田の歴史とか自分が見てきたことを考えるとすごくチャレンジングな大会なのかなと思います。強豪校が何校も出ていて今年は全日本との共同開催ということでトップクラスの早さを持つ社会人のチームが何チームも出ます。一瞬たりとも気が抜けないレースが続くのではないかなと思います。

船木 やはり早慶戦で負けたという意味では慶大をすごく意識しています。例年以上に力があるクルーだなと感じていて、だからこそなんとか勝ちたいなと感じています。

――実際に8月の後半、今大会の延期と共同開催が発表された際には、選手として戸惑いや不安は大きかったですか

船木 まずは開催されるかという不安があったのでひとまず形と時期は違えど開催していただけるということに、感謝しなければいけないと思います。ただ、僕自身9月末というゴールを決めて全力疾走で走ってきたつもりなので、そこからさらに1カ月と言われたときには戸惑いや混乱がありました。ただ10月末にピークをもってこなければならないという条件はどこの大学も同じなので気持ちを切り替えて1カ月やっていこうという気持ちで今はいます。5日ほどのオフがあって、そこをリフレッシュの期間としました。僕自身もその期間で、もう一度頑張るぞという気持ちを入れ直しました。

――川野さんもその5日間のオフを有効に使われたのですか。

川野 僕自身戸惑いとかはなくて、むしろやったーというか。客観的に見てみると全然完成してない状態で9月を迎えていたので、どちらかというとこのままだと失敗していたものをもう一回挑戦権を与えられて、さらにいいものにできるなという思いがありました。5日間のオフも満喫しつつ次の1カ月をどう過ごすかを考えていました。

――また今回の延期に伴い、本来は10月末に開催されるはずだった新人戦が中止となりました。主将として下級生にはどのように接したりされましたか

船木 特に2年生は昨年も新人戦が中止になって、今年も同様の状況になってしまいました。一度も新人戦を経験できないのは少しかわいそうだなという気はしています。ただ上級生の立場から見て、今の下級生はとても意欲的にコーチから聞いたり自分たちで練習したりする姿があります。そういう姿を見て一緒に練習していくというか、仲間だと思って明るく前向きに練習しています。

――今回のインカレ・全日本での目標をお願いします

船木 やはり学生で優勝したいというのは目標としてあります。去年4位になったときから自分の中では一つの大きな目標としてやってきました。今回は実力のある社会人のチームと一緒にレースをしてその中で大学の順位をつけるというかたちになるのでなかなか難しいところもありますが、大学チャンピオンは成し遂げたいです。

――通常の形式ではないなかで、どのような意識をもって臨まれますか

川野 このクルーはすごくスタートの爆発力があります。先々週に2000メートルの練習レースが行われたのですが、そこでも社会人相手に最初の300メートルは先行できました。コンスタントという1400メートルをたんたんとひたすら漕ぐ区間があるのですが、その精度がまだ足りないのでスタートの強みを生かして、終盤自分たちの弱みを出さずにとにかく長く強く漕ぎたいです。それを予選から表現できればおのずと結果はついてくるのかなと思います。

――コックスとしてはどのような想定をされていますか

川野 スタートの爆発力という長所を驕ることなく生かして、そこからはとにかく気持ちでキープしたいです。愛と友情と努力と気合いと勝利でいきたいなと思います(笑)。

一歩ずつの前進


船木主将の優しい口調には闘志がみなぎっていました

――今大会で4年生は引退となります。ここで少し4年間を振り返っていただきたいのですが、まず特にきつかった時期はありますか

船木 僕自身は高校時代から大して体力も無いですし特にうまい選手でもなかったです。下級生のころはタイムトライアルで記録をなかなか更新できなくて、高校生の時の記録を更新できたのが2年生の秋でした。それまでの一年半の間はやれどもやれども高校生の時の記録を抜けずにいました。もしかしたら自分は大学で成長できないのではないかという不安はすごくありました。ただ、その中でも諦めずにやっていたら一回記録がポンと出て、そこからは記録が着実にステップアップして今までずっと自己ベストを更新し続けることができました。下級生のころは過去の自分との比較で苦しい思いをしました。

――2年秋に記録がポンと出た要因は何だと思いますか

船木 とりあえず数をこなしました。タイムトライアルは多くても年に5、6回しか行わないのですがそれとは別に自分でとりあえず数をたくさんこなすようにしました。毎回記録が良くても悪くても一喜一憂せずにトライアルを続けていたらだんだんときつくないように感じ始めて、あるとき3秒ほど更新することができました。

――川野さんはいかがですか

川野 3年生のインカレの時期はつらかったというか自分の中でもやもやした時期でした。早慶戦でセカンドエイトに乗ることになっていたのですが中止になってしまいました。その後部内でのコックスの選考があって二人の先輩が乗ることになって、自分の中では大会が無い中、なぜ選考からもれてしまったのかともやもやしました。それを自分の中で論理的に乗り越えたわけではないのですが、次に自分が最高学年になるという時に、必然と責任のあるポジションになるという覚悟を含めて、乗り越えていったかなと思います。

――そんなつらい時に支えになったことはありましたか

船木 先輩、同期、後輩からの何気ない一言です。言っている本人は本気じゃないかもしれないですが、そういう一言が自分の努力を見ていてくれていると感じました。

川野 一番はコックスに後輩が増えて、必然と自分が早稲田の漕艇部で教わったことを継承しないといけないことが、自分を奮い立たせる要因にもなりました。あとはマネージャーさんが部のために運営してくださっているので、それを自分自身の励みにしているというか、それを含めて早稲田で戦いたいなという思いが自分の中にあります。

――逆に好調であった時期はいつごろでしたか

船木 僕はそういう時期が思いつかないというか、本当に一歩ずつという感じでした。一方で、どんな時でも前進しているというのは分かったので、最後まで積み重ねていこうという気持ちでここまでやってきたつもりです。

川野 3年のインカレの時期にもやもやしていた時期ではあったのですが実は一番乗りに乗っていた時期が3年生のインカレ選考の時でした。自分自身も振り返ってみるとコックスとして冴えていたというか、逆に今の方が調子を落としているくらいで。だからこそ3年生のインカレ選考で落ちてしまって何でだろうという思いがありましたね。

――コックスとして冴えているとはどのような状態ですか

川野 手に取るように分かるという感じです。コックスは視角でオールの動きとかを判断するのですが、ボートがこんな動きをしているからこの人がこういう動きをしているんだろうなということが分かりました。感覚がすごく過敏になっていた時がその時期だったと思います。

最後まで全力でやる姿を

――最後の方の質問となってきました。取材日からはあと3週間ほどで大会となります。この期間をどうしていきたいですか

船木 練習の内容で言うと今が一番きつい時期で、大会前の最後の追い込みになります。この時期はきつい練習を目の前にして後ろ向きな発言をしたくなったりとか、前向きな気持ちになれなかったりすることも多いです。そんな時に部を引っ張る立場として自分が前向きにやっていかないといけないので大会まで自分が先頭に立ってやっていきたいなと思います。

川野 この1、2週間はかなり良いクオリティの練習ができていて、一皮むけたところがクルーの中にあります。それをいかに伸ばしていけるか。今の抱えている技術的な問題と、みんなかなり疲労がたまっていると思うのですがフィジカルの問題の両面を伸ばして行けたら、かなり実りのあるものになると思います。そのために一番大切なことは9人がコミュニケーションを取ってお互いが自分のことをどれだけ知ってもらえるかだと思います。ボート以外のくだらないことや全然関係ないことでもコミュニケーションの積み重ねが少しずつ信頼や信用に変わってより良いクルーに、強い瞬発力に変わっていくと思います。それがボートの面白さでもあるので、やっていきたいです。

――そして迎える今大会ですが、どのような最後の姿を目指しますか

船木 もちろん目標は大学チャンピオンですが、それとは別に最後まで全力でやる姿を後輩たちに見せたいです。僕自身は歴代のキャプテンに比べて成績も良くないですし、入部したころも目立たない存在でした。大学から始めた後輩や、高校時代にそこまで活躍できなかった後輩に対して、そんな人でも最後までやり続けたらここまで行けるぞということを示せたらいいかなと思います。全力でやって終わったときに納得いくようにしたいです。

川野 将来、子供から「パパかっこいい」と言われるような姿になりたいです。大学時代は、社会に出る前に自分が主人公として最後に輝けるものだと思っていて、すごくそんな大学スポーツの魅力を感じています。かっこいい姿を写真に収めてもらって、将来かっこいいと言われるような姿を見せたいと思っています。

――では改めて、意気込みをお願いします

船木 今まで積み重ねてきたものを最後の最後まで出し切ることで、その先に結果は待っていると思います。3週間という短い期間ですが、一歩ずつ成長しているということを意識して最後まで集中してやっていきたいと思います。 

――ありがとうございました!

(取材・編集 吉岡直哉、 写真 平林幹太 樋本岳)

◆船木豪太主将(ふなき・ごうた)(※写真左)

静岡・浜松北高出身。スポーツ科学学部4年。ここまで全力疾漕してきた船木主将。昨年惜しくも表彰台入りを逃した雪辱にも燃えています。早スポの取材にも終始優しく答えてくださる船木主将は、最後までやりきってくれることでしょう!

◆川野柊(かわの・しゅう)

東京・早大学院出身。法学部4年。4年生になったことで、背負うこととなった責任感が、自らを突き動かしてきたという川野選手。延期の1か月を完成させる期間と受け止め、最近では手応えを感じているとのことです。社会人とのレベルの高いレースが予選から想定されますが、力強く率いてくれることでしょう!