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 昨季は広島がセ・リーグを、日本ハムがパ・リーグを制してそれぞれリーグチャンピオンに輝いた。25年ぶりのリーグVとなった広島の盛り上がりは大きな注目を集め、また日本ハムも二刀流・大谷翔平の投打にわたる活躍などがメディアを多いににぎわせた。ともにディフェンディングチャンピオンとして迎える2017年のペナントレースで、果たして両軍は連覇を果たすことができるのか。データの面から可能性を探りたい。

■連覇の歴史

 1950年のセ・パ両リーグの誕生以来、2年続けてリーグ優勝する確率はセ・リーグで35%(表1)、パ・リーグは42%(表2)。ただし対象とする期間を変えるとその割合は大きく変わり、例えばセ・リーグの1980年以降の連覇確率は19%まで下がる。これはもちろん金字塔たる巨人V9の期間(1965~1973年)を含んでいないために起きた変化となっている。1980年以降の最長連覇は2007~09年の巨人、2012~14年の巨人がそれぞれV3を達成。やはり巨人の強さが際立つが、2015年にヤクルトが14年ぶりのリーグ優勝、そして昨年の広島の戴冠とリーグ内のパワーバランスの変化が見られ、継続的な「常勝チーム」をつくるのは難しくなっていることが分かる。

 パ・リーグの1980年以降の連覇確率は39%で、1950年以降の42%とそれほど違いがない。これは80年代から90年代まで黄金時代を築いた西武の影響が大きい。1990~94年のV5をはじめとして、1982年から1998年の期間で13度のリーグVを果たしている。西武の勢力に陰りの見えた2000年以降に期間を絞ると、16チームのうち連覇を達成したのは3チームで割合は19%。メディアによって「戦国パ・リーグ」と称されるようになったのもこの頃からで、近年は日本ハムとソフトバンクの二強を中心としながら各球団しのぎを削る構図となっている。

■広島の強みとリスク

 連覇の可能性を測るにあたって、両軍の昨季の特長を確認しておきたい。まずはセ・リーグの広島から。シーズン途中から独走状態に入り、結果的に2位の巨人に17.5ゲームの大差をつけてペナントを制した広島だが、あらゆる成績において一頭地抜けた数字を残した。得点と失点のリーグ内の序列を見ると、ともに堂々のナンバーワン(表3)。特に得点についてはリーグ平均よりも1試合あたりで0.85点多く獲得しており、旺盛な打線の破壊力が独走Vの礎となった。このリーグ平均に対する0.85のプラスという数字は、1980年以降のリーグ制覇37チームのうち、4番目の高さにあたる好成績だった。一方の失点もリーグトップの少なさだったものの、他球団とそこまで大きく差をつけた数字ではなかった。リーグ平均に対する-0.53は、同37チームのうち19番目の少なさ。過去の優勝チームと比較して丁度真ん中付近に位置する数字で、2016年の広島は守りよりも攻めに強みを持ったチームであるとみなすことができる。

 次に、得点への貢献と失点阻止への貢献をポジション別に分けて検証したい。それぞれのポジションにおいてリーグの平均的な成績と比較した時、攻撃と守備でどれだけプラスを生み出したか、マイナスを生んでしまったかを表しているのが表4である。評価の物差しとして、攻撃面ではwRAAという指標で、守備面は投手がRSAA、野手はUZRという指標を用いた。各指標の詳細な解説は割愛するが、攻撃は1打席あたりの得点貢献度に機会(打席)を掛け合わせたもの、投手はアウトひとつあたりの失点阻止への貢献、守備は打球一つあたりに対する失点阻止への貢献を、それぞれのリーグ平均と比較したものとなる。得点や失点という統一基準をもとに、チームの強み・弱みがどこに存在しているのかを可視化することを目的としている。

 2016年の広島は先発・救援の投手陣の固さと、外野陣の攻撃力の高さ(丸佳浩、鈴木誠也)、そして攻守に高水準の貢献を果たした二塁手(菊池涼介)の働きが目立つ。丸、鈴木、菊池といずれも20代と年齢的にも充実し、2017年も一定以上の活躍を見込むことができる。主に一塁を守り、39歳にしてMVPに輝いた新井貴浩の40歳シーズンの継続的な活躍を期待するのは難しいが、一塁・エルドレッドというオプションもある。主力に故障が続くようなアクシデントでも発生しない限り、広島の高い得点力の維持は期待できると考えられる。

 2017年に向けてのリスクは、投手となる可能性が高い。高い安定感を誇った先発陣から引退の黒田博樹が抜け、穴埋めの必要が生じた。精神的支柱としての存在感はともかく、3.09の防御率で151と2/3という長いイニングを担うのは容易なことではない。新助っ人として入団したブレイシアも中継ぎとしての起用が見込まれているため、先発復帰の大瀬良大地や九里亜蓮らの現有戦力、または新人投手の加藤拓也や床田寛樹に頼ることになる。

■日本ハムの強みとリスク

 日本ハムの強みは、投手を中心としたディフェンス面の固さにある。昨季の失点の少なさはリーグトップで、リーグ平均よりも1試合あたり0.74少ない失点でやり過ごした。本塁打が出にくく、守りやすい札幌ドームを本拠地としている環境面の恩恵もあり、札幌移転後の日本ハムは守りを重視する基本戦略を続けている。得点が生まれにくい環境は打線にとっては手足を縛る枷(かせ)となるが、そのようなハンデを受けつつも昨季はリーグトップの得点を稼いだソフトバンクに次ぎ、西武と並ぶ2位と健闘した。環境を生かした失点の少なさで耐え抜き、どうにか得点を絞り出すことで優勝候補筆頭のソフトバンクを出し抜いた格好となる。

 広島のケースと同様に、日本ハムのポジション別貢献度を見ていく。目立ったマイナスは若手を中心にやり繰りした右翼手の攻撃面くらいで、さまざまなポジションで着実にプラスを積み上げた。中でも、先発とDHの二刀流で大きなプラスを生んだ大谷翔平の存在感は大きく、今季も投打にわたる高い貢献が期待される。遊撃を守る中島卓也の守備面での貢献も大きく、長打の少ない打撃面での弱さはありつつも、リーグ全体の遊撃手の打撃レベルがそこまで高くないこともあって打のマイナスはそれほど目立っていない。

 投手陣では高梨裕稔の台頭や増井浩俊の先発転向がはまったこともあり、リーグでも上位の安定感を発揮するに至った。故障の影響もあって大谷の野手起用を増やしたにもかかわらず、投手陣の質を維持したのは栗山英樹監督をはじめとする首脳陣のマネジメントの成果といえる。増井の救援復帰やバースの退団などの影響で先発・救援を問わず再構築の必要はあるが、広い本拠地や固いバックの守りもあり、引き続きディフェンス力の高さを前面に押し出した野球を展開すると見られる。

 2017年に向けたメンバー構成の変化の中で、やや気になるのが昨季中堅手でプラスを積み上げた陽岱鋼のFA移籍だ。先に挙げた右翼手のレギュラー不在の状況に加え、外野の2つのポジションを埋める必要が生まれた。故障は多いがポテンシャルの高さを評価される岡大海、本職は捕手ながらマルチプレーヤーとして外野守備まで領域を広げる近藤健介、そして新人の森山恵佑、巨人から移籍の大田泰示らが候補として名前が挙がる。いずれも外野のレギュラーとしてシーズンを通じた活躍の経験はないだけに、首脳陣としては計算が立てにくい。開幕時点の支配下登録選手は67名と余裕を持たせているため(最大70名)、状況次第で助っ人外野手のシーズン途中の補強も選択肢としてある。

■広島のディフェンス力、日本ハムの得点力

 最後に、連覇を達成したチームとできなかったチームの間に、どのような違いがあったのかを検証したい。表9はセ・リーグの1980年から2016年までのリーグ優勝チームを対象として、優勝翌年に得点と失点の両面でリーグ平均との差分にどの程度の変化があったのかを、連覇したケースとそうでなかったケースに分けて示している。少し複雑な見方となっているが、表3や表6にある得点や失点のリーグ平均との差分が、翌年にどれだけ変化しているかという傾向を表現していると考えてほしい。

 結論からいうと、セ・リーグで連覇したチームとできなかったチームとの間では失点の変化がより強く出ていた。連覇したチームは得点力、失点阻止力をキープできていたのに対し、連覇を逃したチームは得点で-0.20、そして失点が+0.40とディフェンス力の下げ幅がより大きい。もちろん得点力を高く維持できるに越したことはないが、どちらかといえば守りに秀でたチームの方が連覇の可能性は少しでも高まる傾向にある。2016年の広島は先述の通り打のチームで、課題は黒田の抜けた穴。失点をいかに増やさないか、という点が連覇に向けたひとつの注目ポイントになる。

 パ・リーグの場合は逆の傾向で、差が強く出たのは得点の方だった。連覇を逃したチームほど、優勝時の打力をキープできていなかった傾向にある。1試合平均6.08点を挙げて優勝した1980年の近鉄や、平均5.44点の2005年ロッテなどは翌年に得点力を大きく落として連覇を逃している。2016年の日本ハムに関しては、打ち勝つというよりも優秀な投手陣と守りの堅さで勝ったチームで、そうした前例には当てはまらない。一方で陽の抜けた中堅や右翼のレギュラー不在という得点力低下の懸念は存在するため、連覇に向けて解消したい課題となるだろう。

※データは2016年シーズン終了時点

文:データスタジアム株式会社 佐々木 浩哉