19日開幕のセンバツ大会に出場する盛岡大付(4年ぶり4度目)。昨夏16強入りを果たした強打線(別名:わんこそば打線)は今年も健在で、加えて平松竜也(3年・右腕)、三浦瑞樹(3年・左腕)Wエースの評価も高い。雪の多い岩手の土地で、室内練習場が…

19日開幕のセンバツ大会に出場する盛岡大付(4年ぶり4度目)。昨夏16強入りを果たした強打線(別名:わんこそば打線)は今年も健在で、加えて平松竜也(3年・右腕)、三浦瑞樹(3年・左腕)Wエースの評価も高い。雪の多い岩手の土地で、室内練習場がない中、なぜ強打線が生まれるのか。冬の練習を取材した。(2月8日取材)

学校から自転車で15分ほどの場所にある専用グラウンド。12〜2月の練習は、ほとんど土が見えない状態だ

◆目 次◆

・室内練習場はなく雪の上で練習

・打撃練習は飛距離の出ない竹バット

・ウレタンボールを使用し野手も打撃投手に

・センバツの目標は「ベスト8」

室内練習場はなく、雪の上で練習

日中の気温がマイナス2度位まで下がり、年間100日以上雪が降る岩手県盛岡市。市中心部から6キロしか離れていない盛岡大付属の専用グラウンドも、11月から3月は雪との共存を強いられる。積雪の多い北東北地区は公立高校でも室内練習場を持つ高校が多いが、盛岡大付は室内練習場を持たず、真冬でも雪の上で打撃練習を行っている。春4回、夏9回の甲子園出場を果たし、「強豪校」と呼ばれてもおかしくない私立校だけに、長靴姿で打撃練習をしている選手たちを見て、驚く人は多い。

雪の中、3カ所で行う打撃練習。選手たちは全員、長靴を履いている

「ないものを求めても仕方ない。むしろ、雪があったほうが踏み固まった雪の上で動けるので、助かります。もちろん寒いですが、もう慣れました」。母校を率いて9年目の関口清治監督(39)が笑う。「雪の上では細かい守備練習はできない。ならは打撃を強化しよう」。5年ほど前、そんなシンプルな発想にたどり着き、打撃強化メインの冬練にシフトした。

打撃練習は飛距離の出ない竹バット

打撃練習は竹バットを使用する。耐久性があり、木製バットの半値で購入できる長所があるが、金属バットに比べて芯が狭く、飛距離が出ない。この“ハンデ”付きの練習を公式戦直前まで続けると言う。「竹バットは年間300本使います。飛ばないストレスを背負った中で、どれだけ芯にあてるか。大会2週間前に金属バット解禁にしますが、打撃練習では自分の飛距離にビックリして自信を持つようですよ」(関口監督)。

関口清治監督(39)は1995年夏に捕手として甲子園出場し、東北福祉大を経て2000年コーチ就任。08年に監督に就任した

今大会注目の強打者、通算36本塁打の植田拓選手(3年、右打者)もこの練習で、自分に合った打撃フォームを見つけた。166センチと小柄ながら、チームで唯一、竹バットでフェンス手前まで飛ばせる打者だ。「前の振りを大きくし、レフトスタンドに入れるイメージで打っています。上で野球を続ける時、必ず木製バットを使うことになるので、自分に合っている練習です」と先を見据えている。

ウレタンボールを使用し野手も打撃投手に

「飛ばない竹バット」で打つのは、硬式の球ではなくウレタンボールだ。雪や水に強く経済的だが、やはり飛距離は出にくい。いわゆる「打感」がない。

耐久性が強く、低価格で購入できるウレタンボールを使用して打撃練習を行っている「飛ばないボールが飛距離を生む」。エース平松竜也投手も、ウレタンボールとすっかりお友達だ(?)

打撃投手は約11メートルの近さから、全力で投げ込むことを指導されている。打者に投げる球種も徹底されており、11〜12月は直球のみ。1月からは変化球のみ。2月からミックスと、しっかりとした段階を経て、進められていく。関口監督は「マシンは使わず、うちは3カ所すべて打撃投手です。野手も投げます。通常より7メートルほど近いので、体感スピードは10キロほど速く感じますね。打撃はタイミングが大事。マシン打ちでは得られない『間』をつかむための練習になっています」と説明する。センバツ出場に合わせ、今年は1カ月ほど早めに実戦練習に移ったが、例年だと2月いっぱいは直球+変化球打ちを、時間をかけて徹底的に行う。

打撃で意識させていることは、バックステップだ。後ろ足に体重を乗せ、股関節から身体を回す(右打者なら右足の股関節で回すイメージ)。この打ち方だと速い球にも対応でき、振り負けない。関口監督の大学の先輩・金沢成奉監督(明秀日立)に教えを求め、2011年秋から、盛岡大付に取り入れた。「2012年夏、決勝で大谷翔平投手(花巻東―日本ハム)に打ち勝って甲子園を決めたのも、この打撃改革があったからです」(関口監督)。

センバツの目標は「ベスト8」

近年の甲子園大会を見た時に、上に上がっていくチームは打っているチームなんです。東北地区の高校で、最近決勝まで行ったチームは八戸学院光星(2011年夏、2012年春夏)、仙台育英(2015年夏)、ともに得点力のあるチームなんです。5点以上取る野球をしたい。ウチが東海大相模に勝った時(2014年夏・1回戦)は4対3でしたが、5点目が取れていたらもっと楽だったなと反省しました」。

昨夏の甲子園はチーム最高の2勝を挙げ、ベスト16入り。3試合すべて2ケタ安打を記録し、合計28得点を叩きだした。「何度でもおかわりする」という意味で、地元名物の「わんこそば打線」と報道された。この冬、自信を持って打撃練習を行ってきた選手たちだが、もちろん発展途上。目標は夏の選手権で勝つことだ。関口監督はあえて、目標を「ベスト8」に置いている。

「もちろん1戦必勝であることには変わりありません。でも本番は夏ですから」。選抜出場校発表の時、チームの戦力評価が新聞に載ったが、盛岡大付が「C評価」の記事を目にした。「Cでいいんです。昨夏準優勝の北海もC評価の記事がありましたから」。静かにほほ笑む関口監督は、冷静だ。1回戦は、大会2日目(20日)の第一試合。高岡商(富山)と対戦する。(取材・文/樫本ゆき)

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