はたして東京オリンピックで好成績を収めて、満を持して始まる「WEリーグ」に勢いをもたらすことができるのか。メンバーが発…

はたして東京オリンピックで好成績を収めて、満を持して始まる「WEリーグ」に勢いをもたらすことができるのか。メンバーが発表された「なでしこジャパン」に注目が集まっている。東京オリンピック代表は、長らく女子サッカーを牽引してきたテクニック重視のベレーザ色の濃いチームとなった。一方で、目を転じれば、ダイナミックなサッカーを指向する新しい勢力が台頭してきているのがわかる。2021年なでしこリーグ1部はすでに第12節を迎えている。

■1部12チーム、2部8チームの「なでしこリーグ」

 6月19日の土曜日に「なでしこリーグ」の試合を観戦した。

 正式名称は「日本女子サッカーリーグ」。1989年に発足し、「L・リーグ」などと呼ばれた時代もあったが、2004年のアテネ・オリンピックで日本女子代表に「なでしこジャパン」の愛称が採用され、そしてその「なでしこジャパン」がベスト8に進出して注目を集めたことからリーグ戦も「なでしこリーグ」の愛称で呼ばれるようになった。

 つまり、日本の女子サッカーのトップリーグだったのだが、日本サッカー協会は女子サッカーのプロ化推進を決定。2021年秋から初めてのプロリーグとなる「WEリーグ」がスタートすることとなった。そのため、昨年の「なでしこリーグ」に参加したクラブの多くがWEリーグに参入することとなり、「なでしこリーグ」の方は昨年の2部リーグのチームが中心となって、1部12チーム、2部8チームの体制で開幕した(WEリーグは秋春制を採用したのに対して、「なでしこリーグ」は従来通りの春秋制なのでシーズンがズレている)。

 さて、昨年の優勝チームである浦和レッズレディースを始め、上位チームの多くが抜けた「なでしこリーグ」では、いったいどのようなサッカーが展開されているのだろうか……。この日が第12節だったのだが、今シーズン「なでしこリーグ」を観戦するのはこれが初めてだった。

セレッソ大阪堺レディースは10代の選手たち

 この日、観戦したのは昨年の「なでしこリーグ」2部で優勝したスフィーダ世田谷FCと昨年1部に昇格していきなり4位に入って旋風を巻き起こしたもののWEリーグ参入には手を挙げなかったセレッソ大阪堺レディースの対戦。この試合前までの順位はホームの世田谷が勝点20で3位。セレッソは勝点16で5位(ただし、セレッソは消化試合数が1試合少ない)。つまり、上位同士の対戦だった。

 結論的に言えば、予想していたより高いレベルの試合が繰り広げられていた。

 前半のキックオフ直後から主導権を握ったセレッソは、開始2分にいきなりCKから先制ゴールを決め、その後も押し気味に試合を進めた。だが、22分にカウンター気味の攻撃から同点ゴールを許してしまう。しかし、40分、41分と連続ゴールで2点差とし、後半はフィジカル的に勝る世田谷が押しこむ展開となって54分には1点差に詰め寄られたものの、その後はなんとかしのぎ切り、さらに75分に4点目を決めて勝利を決定づけた。

 詳細な試合内容についてはここでは触れないが、特筆すべきは4対2で勝利して1つ順位を上げたセレッソ大阪堺レディースは先発11人の平均年齢が17.7歳という若いチームだということだ。GKの山下莉奈が20歳で、他はすべて10代の選手。最年少は右サイドバックの白垣うので15歳という構成である。

 ちなみに、対戦相手の世田谷は先発11人の平均が25.6歳の“大人のチーム”だった、

 つまり、セレッソはU−18世代のチームなのだ。そのチームがシニアの1部リーグに出場して上位に食い込んでいるというわけだ。男子で言えば、高円宮杯U−18プレミアリーグに出場しているチームがJ2かJ3に出場しているようなものと言える。

■東京オリンピックの中心はベレーザ系

 さて、僕がこの試合を観戦に行った前日の6月18日には東京オリンピックでメダル獲得を目指す日本女子代表(なでしこジャパン)のメンバーが発表された。

 顔ぶれは、ほぼ予想通りだった。これまであまり馴染みのない顔ぶれとしてはMFの塩越柚歩がいるが、先日のウクライナ戦、メキシコ戦のパフォーマンスを見れば選出は当然だろうし、身長が166センチとサイズがあるのも魅力的だ。

 そんな中で、高倉麻子監督が就任してからも招集されることが多かったベテランの(2011年優勝経験者の)DF鮫島彩が選ばれず、代わりにDFとして若い北村菜々美と宝田沙織がそろって抜擢されたところがちょっとしたサプライズだったかもしれない(ともに1999年生まれでまだ21歳)。

 選出された選手を所属チーム別に見てみると、最多が日テレ・東京ヴェルディベレーザ(以下「ベレーザ」)の5人、三菱重工浦和レッズレディース(「浦和」)とINAC神戸レオネッサ(「神戸」)がともに4人。そして、海外組が5人で合計18名という内訳になっている。

 昨年行われた「なでしこリーグ」(WEリーグ発足前最後のシーズン)では浦和が優勝し、神戸が2位、ベレーザが3位だった。WEリーグ初年度の優勝候補なのも間違いない。つまり、今回の代表のうち、国内組はすべて現在の女子サッカー界の“3強”からの選出となっており、人数的にも3クラブからほぼ均等に選ばれているのだ。

 もっとも、海外組の5名のうち長谷川唯と籾木結花の2人は2020年にはベレーザで活躍していた選手だし、今や代表のエースに成長し、オリンピックでは「10番」を着けることになった岩渕真奈も2017年から20年まで神戸に所属していたものの、もともとは中学生時代からベレーザの下部組織である「メニーナ」で育った選手であり、2013年に最初にドイツに渡るまではずっとベレーザに所属していた。

 さらに、メキシコ戦で久しぶりにトップとして先発して積極的なプレーを見せた田中美南は昨年から神戸でプレーしているが、もともとはメニーナ育ちでベレーザで活躍。2016年から4年連続で「なでしこリーグ」得点王となった選手だ。プレースタイルとしては非ベレーザ的ではあるが、田中もベレーザ系の一員である。

 つまり、長谷川、籾木、岩渕、田中の4人を加えれば、ベレーザ勢が9人ということになり、やはりベレーザこそが日本サッカーの中心であり、自身もベレーザで長く活躍した高倉麻子監督はベレーザ中心のチームを作ったと言える。

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