1979年にハクタイユーが日本の競馬界で初めて白毛と認定されてから、これまでの競馬シーンに登場した白毛は30頭ほど。希…
1979年にハクタイユーが日本の競馬界で初めて白毛と認定されてから、これまでの競馬シーンに登場した白毛は30頭ほど。希少な存在ゆえ、折に触れて話題になることはあったが、昨年から今年にかけてのシーズンほど、白毛が脚光を浴びたことはない。
それもこれも、すべてはソダシ(牝3歳)の活躍によるものだ。
白毛と言えば、大レースの誘導馬を務めるような、いわば"飾り物"。競走馬としては、長い間「走らない」という烙印を押されてきた。
だが、その謂れのない中傷を、ソダシは完全に払しょくした。
デビュー以来、ここまで4戦4勝。それも、白毛馬としての記録づくめである。
白毛馬として、芝の新馬戦で初の勝ち馬となったのを皮切りに、2戦目のGIII札幌2歳S(札幌・芝1800m)では、白毛馬で初めて芝の重賞勝ち馬となった。そして4戦目には、GI阪神ジュベナイルフィリーズ(阪神・芝1600m)を勝って、ついに白毛馬初のGI馬となったのだ。
ソダシにとってはデビュー以来、一戦、一戦が「白毛は走らない」といった固定観念との闘いだった。それを、ここまでの4戦の走りを通じて、見事に打ち破り、そのたびに新たな歴史を築いてきた。

白毛馬初のクラシック制覇を狙うソダシ
そのソダシがまもなく、再び"高い壁"に挑む。
GI桜花賞(4月11日/阪神・芝1600m)への挑戦。つまり、白毛馬として初のクラシック制覇なるか、である。
過去に越えてきた"壁"に比べて、今度の"壁"は一段と高く、分厚い。現実的に、ソダシが戴冠を遂げる可能性はどれぐらいあるのだろうか。
その可能性を探るべく、まずはソダシが競走馬として優れている点を見ていきたい。
「この馬の一番いいところは、先行できるところです」
そう語るのは、関西の競馬専門紙記者である。確かにソダシは、初陣からスッと好位につけて、先行抜け出しといった勝ちパターンが多い。この戦法は手堅く、取りこぼしが少ないという利点がある。
若い馬はある程度の位置で我慢させようとすると、引っかかったり、折り合いをかいたりすることが多いが、ソダシはデビュー当時からそうした心配がなく、この戦法をしっかりと身につけている。
これが、この馬の何よりの強みだ。
ただ、そうやって我慢がきくからといって、性格的に素直とか、大人びているというわけではない。普段は、幼くてやんちゃ。母のブチコはレース直前にゲートにぶつかって出走除外になるほどゲート難のある馬だったが、ソダシもその血筋どおり、ゲートはうるさい。
「でも、この馬は走り出すと、途端に真面目で、一生懸命になる。オンとオフの使い分けがしっかりできている。そこが、次にいいところ」と、先の専門紙記者は言う。
さらに、勝負根性にも見るべきものがある。
いい例となるのは、ゴール前が際どかった阪神JF。一度は内から強襲してきたサトノレイナスにかわされたかのように見えたが、ソダシはそこからもうひと伸びして、結果的にはハナ差前に出て勝った。
「馬というのは、他の馬に横に来られると怯むことが多い。でもこの馬は、横に来られると、逆に力を発揮する。ゆえに、僅差の競馬に強い。これも、この馬のいいところですね」(専門紙記者)
総じて言えば、ソダシの長所は"完成度が高い"ということか。
阪神JFの勝ちタイムも1分33秒1。レシステンシアが記録したレコードより、コンマ4秒遅いだけ。ウオッカが勝った時と同じ優秀なタイムで走っており、時計面での裏付けもある。
これなら、桜花賞はかなりの確率で「勝てる」――そう言いたいところだが、実はこれがそう簡単ではない。
その障壁となる最たるものが、桜花賞のペース。「魔の桜花賞ペース」という言葉があるように、まだ成長途上の、未熟な乙女たちのレースは、とかくハイペースになりやすい。
もし、これまでどおり先手を奪ってレースを運ぶとなると、その"魔の"ハイペースに巻き込まれる危険が生じる。その時、どう対応するのか。
次に心配なのは、「完成度が高い」ということ。言い換えれば、これ以上の"伸びしろ"があまり期待できないということでもある。
3歳のこの時期は、急激な成長を遂げる馬が多い。要するに"完成度"を上回るような、驚異的な"成長力"を見せた、強力なライバルの出現も考えられる。はたして、そうした相手に太刀打ちできるのか。
前出の専門紙記者はこう語る。
「桜花賞で、ソダシはいい競馬をすると思う。確実に上位争いに加わると見ています。ただ、勝てるか? となると、確率は五分五分といったところではないでしょうか」
8種類あるサラブレッドの毛色のうち、白毛は全体の0.1%にも満たない、ごくごく少数の勢力だ。そんな"奇跡の勢力"から、競馬界に長年あった定説を覆したヒロイン、ソダシが登場した。
彼女が演じるミラクルは、まだ続きがあるはずだ。
桜花賞の最後の直線――あの真っ白な馬体が力強く、馬群を割って抜け出してくる姿を、再び見届けたい。