2010年のドラフトで6球団が1位指名し、埼玉西武ライオンズに入団した大石達也投手。2014年は1軍での登板はなく、2015年はわずか3試合の登板にとどまった。だが昨シーズンは、キャリア最多の37試合に登板した2013年に次ぐ36登板。31…

2010年のドラフトで6球団が1位指名し、埼玉西武ライオンズに入団した大石達也投手。2014年は1軍での登板はなく、2015年はわずか3試合の登板にとどまった。だが昨シーズンは、キャリア最多の37試合に登板した2013年に次ぐ36登板。31回32/3を投げ、失点6、防御率1.71と安定した結果を残した。今季7年目のシーズンを迎える28歳は昨季の結果を経てどのような心境の変化があったのか。復活への手応えや新シーズンへの意気込みを語ってもらった。

■大きな期待を寄せられながら「不安」と戦い続けてきた埼玉西武・大石

 2010年のドラフトで6球団が1位指名し、埼玉西武ライオンズに入団した大石達也投手。2014年は1軍での登板はなく、2015年はわずか3試合の登板にとどまった。だが昨シーズンは、キャリア最多の37試合に登板した2013年に次ぐ36登板。31回32/3を投げ、失点6、防御率1.71と安定した結果を残した。今季7年目のシーズンを迎える28歳は昨季の結果を経てどのような心境の変化があったのか。復活への手応えや新シーズンへの意気込みを語ってもらった。

「『何とかやれたかな』という感じです」

 昨季について話を聞くと、大石はそう答えた。入団した2011年から右肩痛に悩まされていたが、昨シーズンは痛みも出なかったという。「今までは毎日不安でしたが、肩の不安はなくなりました」。

 取り組んできたことに今までと変わりはないが、やってきたことがようやく自分のものになってきたと実感しているようだ。「何が正解だったのかは正直わかりません。自分のやってきたことを信じてやるしかないと思っています。昨シーズン、結果はよかったですが、特に変わったことはしていないです」。言葉の端々に、昨季の経験から得た自信をにじませた。

■昨季のキャンプ前が「一番辛かった」

 昨シーズンは5月18日に1軍初昇格。同30日に1度は抹消となったが、6月12日に再昇格し、その後は1度も2軍に降格することなくシーズンを終えた。登板数はプロ入りで2番目に多い36試合。防御率も1.71をマークした。ただ、防御率に関しては「1点台という数字はよかったですが、試合数が少ないので」と、満足はしていない。

 昨年は「投げたいのに投げられないことが一番辛い」と話していたが、ある程度結果が出たことで、今はその辛さはないという。「昨シーズンのキャンプ前が、一番辛かったですね。今年は気持ちの持っていき方が違います。去年ほどの緊張感はないですね」。

 そう話しつつも、今年が本当の勝負だと自覚している。

「昨シーズン、ある程度投げられました。でも、今年だめだったら何も変わりません。『今年やらなきゃ』という気持ちをより一層強く持っています」。

 先発投手陣の柱、岸孝之投手が楽天へ移籍。自身にかかる負担も大きくなるが、それもチャンスと捉えている。「自分の投げられる試合数が増える。そこで結果を残せば、信頼を得られると思っています」。そう力を込める。

■変化した「不安」、「やっと打者と向き合えるように」―

 昨年7月19日のロッテ戦。それまで14試合に登板し連続無失点を続けていたが、満塁の場面でマウンドに上がると井口に逆転満塁弾を被弾。鈴木にも2ランを浴びて3失点と打ち込まれた。そんな苦境でも収穫はあった。すぐに気持ちを切り替えることができた点だ。

「この2人に打たれるのは2回目でした。周りにもいろいろ言われましたけど、それで気が紛れました。本当に深刻な状況だったら、誰も何も言いませんから。中継ぎは毎日投げるので、切り替えが大事です。切り替えるのは苦手ではないです」

 今までで一番辛い状況からスタートした昨シーズンを乗り越え、復活への手応えを得た。7年目のシーズンを前に「不安はまだある」と話すが、「不安」の種類も変化した。「自身」ではなく、「打者」への不安に変わったのだ。「やっとバッターに向き合えるようになった」と大石は話す。

 昨年の9月17日の楽天戦、6回無死一、二塁の厳しい状況で登板し、後続を封じる好救援を見せると、2年目のプロ初勝利の時以来となるヒーローインタビューに立った。「ああいうのが苦手で緊張してしまいましたが、ファンの方の声援が大きくて、本当に嬉しかったです」。そうはにかむ右腕は、そんな経験を糧に着実に成長している。

■新シーズンへ掲げる課題、「しっかり勝負できるように」

 もちろん、新シーズンに向けて慢心はない。今後もレベルアップしなければ、プロとして生き残ってはいけない。

「井口さんは嫌なイメージしかないので、払拭しないといけないと思います。あと大谷(翔平、日ハム)ですね。打たれているイメージが強いので、昨シーズンは際どいところを投げてフォアボールが多かったです。そのあたり、しっかり勝負できるようにしたいです」

 西武ファンならずとも、かつての投球を知る野球ファンは、大石が再びマウンドで輝く日を心待ちにしている。

 苦しい状況を乗り越えて掴んだ、復活への手応え。今季はそれを確信に変えられるか――。いよいよ勝負のシーズンが始まる。

篠崎有理枝●文 text by Yurie Shinozaki