ストックホルムで公式練習を行なった羽生結弦 羽生結弦にとって、3大会ぶりの優勝を目指す、8回目の世界選手権。3月24日に開幕する今大会は、25日にショートプログラム(SP)、27日にフリーを控える。公式練習後のオンライン取材で、羽生はこう語…



ストックホルムで公式練習を行なった羽生結弦

 羽生結弦にとって、3大会ぶりの優勝を目指す、8回目の世界選手権。3月24日に開幕する今大会は、25日にショートプログラム(SP)、27日にフリーを控える。公式練習後のオンライン取材で、羽生はこう語った。

「家を出る直前に地震があって乗車予定だった新幹線を使えなくなったので、それから飛行機の便を変えたりしてたいへんでした。なので練習プランはちょっとズレているかなと思うけど、こっちの氷ともしっかり対話できましたし、いい感覚で最後は終われました」

 開催地であるスウェーデン・ストックホルムには現地時間21日に到着。翌22日昼にメインリンクで行なわれた最初の公式練習には参加しなかったが、同日夕方、サブリンクの公式練習には姿を現した。

 公開された公式練習の映像はフリー『天と地と』の曲かけで、しっかり跳んだジャンプは中盤の3回転ループのみ。その他はタイミングを合わせて1回転から半回転にとどめ、曲の最後までを通しで滑った。

「最初はちょっと気合いが入りすぎたというか、いつもの空回りみたいなものがあったので、自分のことをいろいろコントロールしながらでした......。もちろん、今回はブライアン(・オーサーコーチ)やトレイシー(・ウィルソンコーチ)もいるのでしっかり話を聞き、自分のペースを守りながら(練習)できたと思います。気持ちとしては割と淡々としていて。(ストックホルムに)来るまでは自分自身思うことはあったんですけど、現地に来て滑るからにはやっぱり、何かしら意味のあるものにしたいなと思います」



公式練習中、笑顔を見せる羽生

"淡々と"という言葉が似合う曲かけ練習の滑りだった。それ自体には力感やキレもあり、彼の気持ちや調子のよさも伝わってくるものだった。

「今は感覚がすごく整っているわけではないので」と話す羽生の表情は、まだ高ぶりのようなものはなかった。

「いい演技をしたいとは思っていますが、(優勝した昨年12月の)全日本選手権みたいにという気持ちは特になく、ここはここで練習してきたことをしっかり出せればいい。これからちょっとずつ感覚と身体を整えながらいい演技をしたいというのが、今の素直な気持ちです。何か、これをやりたい、あれをやりたい、こういう演技をしたい、といった感じでは今はないですね。北京五輪の枠取りには最大限貢献したいです。あとはとにかく、自分が目指しているいい演技を毎日ひとつずつ重ねていって、グラデーションのようによくなっていってくれればなと思っています」

 もっとも重要なのは、「健康な状態でこの試合を終わらせること」と語った羽生。加えて考えているのは、SPとフリー、エキシビションの3つのプログラムをしっかりと滑り、メッセージのあるものにしたいということだ。

「まずは自分が納得できる演技をすることが大前提だと思うので。今の自分の身体と対話をしながら、整えながら......。そこまでたどり着いてこそ、皆さんに何かが伝わる演技だと思うので、それまでは今やるべきことをやっていきたいです」

 羽生は23日の公式練習では4回転ループをしっかり降りたとメディアを通して伝えられた。さらに公開された映像では、SPの『レット・ミー・エンターテイン・ユー』の曲かけ練習で少し力を使うジャンプには見えたが、4回転サルコウと、4回転トーループ+3回転トーループをきれいに決めていた。

 焦らず、自分のペースで着実に身体と気持ちを整え、最初の舞台である25日のSPへ。冷静な気持ちで大会に臨もうとする思いが、強く伝わってくる大会直前の様子だった。