3月19日、2年ぶりとなるセンバツ大会が開幕する。いまだ収束の目処が立たないコロナ禍のなか、開会式は簡素化され、行進するのは初日に出場する6校の選手のみ。また、出場校の関係者は大会前と、初戦に勝利した場合はその後にPCR検査を受け、もし感…

 3月19日、2年ぶりとなるセンバツ大会が開幕する。いまだ収束の目処が立たないコロナ禍のなか、開会式は簡素化され、行進するのは初日に出場する6校の選手のみ。また、出場校の関係者は大会前と、初戦に勝利した場合はその後にPCR検査を受け、もし感染が確認された場合は、不戦敗のケースもあり得るという。観戦者やメディアもさまざまな制限が設けられ、前例のない大会となることは確かである。

 通常どおり行なわれていたら、まず話題になっていたのが今大会から導入される球数制限だ。「ひとりの投手が1週間以内に500球以上投げてはならない」という新ルールである。すでに地方大会では導入されているが、全国大会では昨年のセンバツから導入予定だった。しかしコロナにより大会が中止となり、1年持ち越しとなった。



昨年夏の甲子園交流試合は20人のベンチ入りが認められた

 年明け、今回のセンバツに出場するある高校の監督と話をしていると、この話題になった。その監督は「よほどのことがない限り、今の時代にひとりで500球を投げることはないです」と言ったあと、「それよりも......」と話をつなげた。

「投手の肩、ヒジを考えるなら、ベンチ入りの人数をなんとかしてもらいたい」

 そう語ったのには、今年も変わらず18人となったセンバツ大会のベンチ入り人数が背景にある。

 近年、各地方大会、地区大会のベンチ入りは20人に増えたが、春夏の甲子園大会は18人のまま。とくに夏は、厳しい地区大会を制し、歓喜に包まれた直後に2名がベンチを外れるという悲劇が、毎年繰り返されている。もちろんセンバツに関しても、秋の地方大会、地区大会は20人で戦ったが、甲子園では2人減らされることになる。

 先の監督は「去年の夏からの流れで、今回のセンバツから20人になるんじゃないかと期待していたので、余計にガッカリしました」と言った。

 昨年夏は、春夏とも甲子園大会が中止となり、センバツに出場予定だったチーム1試合のみ戦うという「甲子園交流試合」が開催された。イレギュラーな大会ではあったが、全国大会として初めて20人のベンチ入りが認められたのだ。

 こうしたこともあり、翌年以降につながる流れができたのでは......と考えたというのだが、そうはならなかった。

「当然、冬に伸びた選手がメンバーに入ってきたり、秋のメンバーと顔ぶれが変わることはありますが、そこは選手も納得します。でも、ベンチ入りの枠だけの問題で自動的に2人外さなければならないというのは僕らもつらいですし、選手たちになぜ地方大会と本大会でベンチ入りの人数が違うのかという説明ができない」

 全国大会でのベンチ入り人数の推移を見ると、1928年から長らく14人が続き、78年夏から15人、94年春から16人となり、2003年夏からは現在の18人で続いている。近年は厳しい夏の暑さや、投手の肩、ヒジへの負担を考慮し、地方大会では夏に限らず20人のベンチ入りが認められ、定着するようになった。

 ただ、現在は各地方大会を見ても、少子化問題が大きく影響しているのか、20人に満たない人数で戦うチームも少なくない。ベンチ入り人数を増やすと、選手層の厚いチームとそうでないチームとの戦力差が広がるという指摘は以前からあり、このあたりは球数制限導入によって力のある投手が複数いるチームが優位になるという理屈に通じる。

 とはいえ、選手の健康を最優先する今の流れのなかでは、甲子園大会のベンチ入りも20人とするのが極めて妥当な考えだろう。

 現場の監督、関係者らに「2名増」が実現しないことについて尋ねると、戦力云々よりも別の理由が返ってきた。

 あるベテラン監督はあっさり「お金の問題でしょう」と言った。

「僕らはずっとそう思ってきたし、ほかの理由が思いつきません。18を20にするのは、そんなに難しいことなんですかね」

 近年、大会入場者も目を見張る多さで、これだけの高校野球人気のなか、お金がネックとなって2名増が実現しないというのは、説得力に欠ける。しかし、現場から聞こえるもっとも多くの声はやはり「お金」なのである。

 今回のセンバツに出場する別の監督に聞くと、ベンチ入り選手に対しては、現地からの移動費(往復)と宿泊費の一部が主催者から支給されるという。

「数年前に出場した時は、宿泊については確かひとり4000円くらいの補助が出ていたはずです。ただ、チームが泊まっていたホテルは毎年県ごとに決まっていて、食事つきで1泊1万円以上。だから、その時点で部費や寄付でまかなってきました」

 さらに、こう続ける。

「そもそも、その時もメンバー以外に何人かはチームに帯同して、同じ宿舎で生活していました。試合時のボールボーイや、期間中に練習を手伝う人が必要だからです。これについては、ほかのチームもその費用はもちろんチーム持ちなので、(主催者が)18人分しか出せないというのなら、2人分はチームで出していいのでベンチ入りを20人にしてほしい。ほとんどの指導者がそう思っているはずです」

 現場から多くの要望がある限り、簡単にスルーできる問題ではないと思うし、主催者側に明確な理由があるのならしっかり伝えるべきだろう。

 これまで延長戦についても18回が15回までとなり、さらにはタイブレークや球数制限の導入。選手の健康面に配慮しながら、時代に沿ってルールが変更されてきた。それだけにベンチ入り問題についても、主催者の勇気ある決断に期待したい。