『特集:Jリーグが好きだっ! 2021』外国人選手の国内移籍に見る明と暗2月26日に開幕するJリーグ。スポルティーバでは…

『特集:Jリーグが好きだっ! 2021』
外国人選手の国内移籍に見る明と暗

2月26日に開幕するJリーグ。スポルティーバでは、今年のサッカー観戦が面白くなる、熱くなる記事を、開幕まで随時配信。さまざまな視点からJリーグの魅力を猛烈アピール!

今回は、外国人選手の国内移籍、つまりJクラブから他のJクラブへの移籍によって、思わぬ覚醒を見せた選手と、期待を大きく裏切った選手にスポットを当ててみたい――。

 ジョアン・シミッチ(名古屋グランパス→川崎フロンターレ)、レアンドロ・ペレイラ(サンフレッチェ広島→ガンバ大阪)、ジュニオール・サントス(横浜F・マリノス→サンフレッチェ広島)、マルティノス(浦和レッズ→ベガルタ仙台)......。

 ここに挙げたのは、いずれも昨季(あるいは、昨季以前から)J1クラブに所属し、それぞれ実績を残していながら、今季新たなクラブでプレーすることを決めた選手たち。つまりは、外国人選手の移籍組である。

 Jリーグでは日本人選手同様、外国人選手の移籍が珍しくない。当然、移籍をきっかけに突如ブレイクする選手も現れる。日本のサッカーへの適応が進んだり、新たな所属クラブとの相性がよかったりと、理由はさまざまあるだろうが、時に前年までとは見違えるような成績を残す外国人選手が出てくるのだ。

 実際、過去の得点王を振り返ると、移籍をきっかけに"化けた"選手が少なくない。



清水からG大阪に移籍し、大ブレイクしたアラウージョ

 例えば、2005年のJ1得点王、アラウージョ。

 2004年、清水エスパルスに新加入したブラジル人ストライカーは、年間14位と低迷するチームにあって思ったように数字を伸ばせず、29試合出場9ゴールに終わっていた(それでもチーム最多ではあったが)。ところが、翌2005年にG大阪へ移籍すると、33試合出場33ゴールという驚異的な成績を残し、得点王とMVPの個人二冠を獲得している。

 さらに近いところで言えば、2016年の得点王、ピーター・ウタカ(現・京都サンガ)も移籍で化けたひとりだ。

 2015年、清水に新加入したウタカの成績は、28試合出場9ゴール。しかし、翌2016年にJ2降格となった清水を離れ、広島へ移籍すると、得点数は倍増。33試合出場19ゴールを記録し、レアンドロ(ヴィッセル神戸)と並び、栄えあるトップスコアラーの座に就いている。

 また、現在もJ1でプレーするドウグラス(現・神戸)は、ハンパない化けっぷりで強烈なインパクトを残した選手だ。

 2010年、徳島ヴォルティスでJリーグのキャリアをスタートさせたドウグラスだったが、その舞台は主にJ2。最初の3シーズンはいずれも4ゴール止まりで、初めてふた桁ゴール(12点)を挙げたのは、徳島がプレーオフを勝ち抜いて初のJ1昇格を果たした2013年のことだった。だが、好調は続かず、初のJ1挑戦となった2014年はリーグ戦ノーゴール。シーズン途中に京都サンガへ移籍となり、再びJ2への"個人降格"も味わっている。

 ところが、J2ですら目立たなかったドウグラスが、移籍をきっかけに突如覚醒するのだからわからない。

 翌2015年、広島へ移籍したドウグラスは21ゴールを挙げ、大ブレイク。難易度の高いゴールを次々に決め、広島の3度目のJ1制覇に大きく貢献したばかりか、得点王にはわずかに届かなかったものの、ベストイレブンに選出された。

 移籍が吉と出るケースもあれば、凶と出るケースももちろんある。つまり、前の所属クラブでの活躍が認められ、別のクラブへ移籍したにもかかわらず、期待を裏切って"コケる"選手も決して少なくない。

 例えば、マルシオ・リシャルデス。

 2007年、アルビレックス新潟に加入したブラジル人MFは、Jリーグ1年目から28試合出場9ゴールと活躍。3年目となる2009年には29試合出場10ゴール、翌2010年は26試合出場16ゴールとふた桁ゴールを続け、点の取れるMFとして名をはせた。

 しかし2011年、背番号10を託されて浦和レッズに移籍するも、奪った得点はわずかに3ゴール。30試合に出場し、1シーズンを通して主力としてプレーはしたものの、その内容は期待どおりとは言えないものだった。

 以後、移籍2年目の2012年に残した31試合出場9ゴールをピークに、3年目以降は出場試合(時間)、ゴール数ともに激減。期待に応えられないまま、2014年を最後に浦和から去ることとなった。

 また、最近の例で言えば、エウシーニョ(現・清水)がそれに当たる。

 右サイドバックながら切れ味鋭い攻撃で、2017年、2018年と川崎のJ1連覇を支えたエウシーニョは、連覇を置き土産に清水へ移籍。だが、清水での2シーズンを振り返ると、ケガもあったとはいえ、期待どおりの活躍を見せたとは言い難い。

 思い切った攻撃参加は川崎時代に比べて質量ともに減り、むしろ中途半端なボールロストを増やした。チーム全体の不振もあり、すべての責任が彼個人に帰するものではないとしても、2年連続ベストイレブンに選出されたJ1屈指の右サイドバックが、移籍を境に自身のパフォーマンスを低下させたことは確かだろう。

 今季のJリーグでは、冒頭に記した4選手だけでなく、多くの外国人選手がJクラブ間での移籍を選択した。

 はたして、移籍で化けるのは誰か。はたまたコケるのは誰か。

 せっかくならアラウージョやドウグラスのように、いい意味で期待を裏切る選手に数多く出てきてもらいたいものである。