オーストラリア・ブリスベンで開催された「ブリスベン国際」(ATP250/オースラリア・ブリスベン/1月1~8日/賞金総額43万7380ドル/ハードコート)の男子シングルス決勝で、 第7シードのグリゴール・ディミトロフ(ブルガリア)は、い…

 オーストラリア・ブリスベンで開催された「ブリスベン国際」(ATP250/オースラリア・ブリスベン/1月1~8日/賞金総額43万7380ドル/ハードコート)の男子シングルス決勝で、 第7シードのグリゴール・ディミトロフ(ブルガリア)は、いつものルーティンとは少し違った何かを模索しつつ、楽しむことに気持ちを集中させていたという。そして結果的に、それが欠けていたものだったようだ。

 ディミトロフは第3シードの錦織圭(日清食品)を6-2 2-6 6-3で倒し、タイトルを獲れずにいたおよそ2年半に終止符を打った。

 25歳のディミトロフは、運気を変えられたのは、ブリスベン市内のゲームセンターに夜遅く足を運んだおかげだと言う。

 「モーターバイクや自動車レース、バスケットボール…フィットネスコーチといっしょに行ったんだけど、僕らはあそこで一番体の大きな子供だったよ。本当に子供っぽいことだったけど」とディミトロフ。「おかげでベッドに行くたびに、『なんて気分がいいんだ』と思った。本当に小さなことなんだけどね」。

 ロジャー・フェデラー(スイス)に似たプレースタイルゆえ、キャリアの初期には「ベイビー・フェド」とあだ名されたディミトロフは、2013年大会の決勝でアンディ・マレー(イギリス)に敗れた。2014年には彼はツアーで3つのタイトルを獲得し、ウィンブルドンでは準決勝に進出、ランキングを自己最高の8位にまで上げていた。

 ところがその後、調子を落として、昨年半ばには40位にまで落ち込んでいる。

 彼がいくつかの決断を下し、ふたたび集中し直して、目標を立て直さなければならなかったのは、そのときだった。

 最初の目標は、2017年に一大会で優勝するというものだった。そして彼は、その目標をシーズン最初の週に達成した。また、グランドスラムでよりよい成績を挙げるといった、ほかの目標もある。彼は、マレーを倒したがノバク・ジョコビッチ(セルビア)に敗れた2014年ウィンブルドン準決勝以来、グランドスラムで4回戦を超えることができていない。

 今大会には世界17位で臨んだディミトロフは、16日に始まる全豪オープン開始時には15位に浮上しているはずだ。

 「感動的な出来事だった。このトロフィは、僕にとって大きな意味がある」とディミトロフ。

 彼は、プロ選手のツアーにはつきものだと言って、“激しい感情の変化”についてはあまり詳しく語ろうとはしなかった。しかし彼は、自分の時間の使い方を調整する必要があった、とは言った。

 「僕は部屋に閉じこもって24時間テニスのことばかり考えているようなことができないタイプの男なんだ。ここに来て以来、僕は毎晩、例えば1時間半の間、ゲームセンターに行ってゲームをプレーしていた。ものすごく楽しかったよ」とディミトロフ。

 「だからこそ、ここで過ごした10日間――どれほど楽しんだか覚えていないほどだが、同時にすごく集中でき、すべての試合でかなり堅固なプレーができていた。全体的に見て、僕はただただ、いい感じを覚えていたんだ」

 ディミトロフは準決勝で前年度覇者のミロシュ・ラオニッチ(カナダ)を倒し、対戦成績を3勝1敗に向上させた。

 彼は過去3度の対戦で一度も錦織を倒したことがなく、この日も第1、第3ゲームでブレークポイントをしのがなければならなかったが、そのあとはほぼすべてがうまくいった。

 3度準決勝で敗れたあとに、初めてブリスベンの決勝に進んだ錦織は、第1セットとほとんど反対のパターンで、第2セットの出だしにブレークポイントをセーブし、ディミトロフのサービスを2度ブレークした。

 しかし錦織は第2セット終了後、左臀部の治療のためメディカルタイムアウトをとったあとにその勢いを失い、優勢となったディミトロフは第8ゲームで勝負を分けるブレークを果たすと、自分のサービスをラブゲームでキープして勝利をものにした。

 錦織は、第2セットで感じた痛みは強く、メルボルンに向かう前に予定していたシドニーでのエキシビションから棄権することを強いられるかもしれない、と話した。

 「大会をこんなふうに終えるのは少し悲しい」と錦織。「でも、年初めとしては素晴らしい一週間だったと思う。僕はここで、いい4試合をプレーすることができた。来週は健康を保つよう努める。そして全豪オープンに向けて準備を整えられることを願っている」。(C)AP