わかる人にはわかるフォートナイトの「プンプン」 47歳の「おじさん」が、ポップな見た目のeスポーツにハマる――。ゲームが身近になった昨今では珍しいことではない。だが、「おじさん」がゲームをプレーするYouTubeチャンネルに10万人以上の登…


わかる人にはわかるフォートナイトの

「プンプン」

 47歳の「おじさん」が、ポップな見た目のeスポーツにハマる――。ゲームが身近になった昨今では珍しいことではない。だが、「おじさん」がゲームをプレーするYouTubeチャンネルに10万人以上の登録者がいるとなれば話は別だ。

「フォートナイト下手くそおじさん」という名のそのチャンネルは、吉本新喜劇の座長を務める小籔千豊さんが2020年2月に開設した。『フォートナイト』は基本無料でスマホ、PC、家庭用ゲーム機など様々なデバイスでプレーできる三人称視点(操作しているキャラクターの姿が見える)のシューティングゲームだ。昨年、海外のeスポーツ大会で16歳のプレーヤーが優勝し、3億円超の優勝賞金を獲得したことで大きな話題となった。

 今なお多くの人々の心を掴んでいるフォートナイトの魅力はどこにあるのか。小籔さんに「下手くそ」でもプレーを続けられた理由や、YouTubeチャンネル開設の意図などを聞いた。

――フォートナイトに触れたのはいつ頃ですか。

 フォートナイトにハマったのは今からだと大体2年くらい前ですかね。子供の頃はめっちゃゲームが好きやったんですよ。おじいちゃん、おばあちゃんに甘やかされて育ったんで、家にはファミコンのソフトが200本以上ありました。高校くらいからは少しずつゲーム欲が落ち着いてきたんですけど。

――200本はすごいですね。高校以降はゲームをやらなくなったということですか。

 そうですね。でも、若手芸人の時にまたハマりまして。その時はコーエー(現:コーエーテクモゲームス)のゲームなどをようやってました。『三國志』『信長の野望』『蒼き狼と白き牝鹿』『大航海時代』あたりですかね。コーエー以外やと『大戦略』『A列車でいこう』とか。あとスポーツゲームだと『パワプロ(実況パワフルプロ野球)』『ウイニングイレブン』『ダビスタ(ダービースタリオン)』、ほかにも『桃鉄(桃太郎電鉄)』やお相撲さんを育てるゲームとかもやっていましたね。

 ただ、漫才師としてネタを考えるようになってきたら、シミュレーションはやめたり、RPGもやらなくなって、サクッとできるスポーツゲームをちょっとやるくらいになってきたんですよね。結婚してからはゲームをほぼやめてしまって......。

 上の子が生まれてからは触る機会が少しだけ増えましたけど、ちょっとだけです。「マリオでクッパが倒せないから手伝ってほしい」とか、「このステージクリアできひんから一緒にやって」とか。息子がフォートナイトにハマった時も最初は「ふ~ん」って思っただけでした。息子に付き合って1回やってみましたが、「もうええわ」って思いました。「俺はジェニーハイでレコーディングとかあるから忙しい」って断ったんですよ。

――なるほど、最初からハマったわけではないんですね。

 そこから2週間くらい経っても息子がフォートナイトをプレーしていました。後ろから眺めていたら「ここに壁を建てて、敵からの攻撃を防ぐんだよ」と息子が頑張って説明してくれて、ゲームに誘ってくるんですよ。ただゲーム自体が難しそうに見えたんで「いや、おもろいやろうけど時間ないから」と断ろうとしたんですね。それでも何回も誘ってくるんで、さすがに根負けして。「ちょっとだけや」と息子の前でプレーしてみたわけです。

――息子さん、本当にお父さんと一緒にやりたかったんですね。

 そうなんでしょうね。でも息子は上手いから、俺のプレー見て「あかんそれ!」って言うわけですよ。俺からしたら「いや、この(仮想)世界で生存したいとかまったく思ってへんから」としか思わへんわけで。「デカポを先に飲むんじゃなくてミニポを先に飲む方がいい(※)」と言われても、ようわからんし......。

※フォートナイトでは、「ポーション」という回復アイテムが登場する。大きい回復アイテムは「デカポ」、小さいものは「ミニポ」と略されることが多い。

――でも、そこから少しずつハマっていったんですか。

 はい。最初はようわからんので、息子に見てもらいながらプレーしてたんですよ。それが何週間か続くと、段々おもろなってきて......。気付いたら自分用のニンテンドーアカウントを作って、息子が寝てから自分一人でプレーするようになってしまいましてね。当時はSwitchが1台しかなかったんで、「はよ息子寝ぇへんかな」と思うようになっちゃって。昔は父親の責任として「はよ寝なさい」と言っていたのに、フォートナイトをやりたいがために「はよ寝なさい」と言うようになりました。

――それはあまり息子さんには言えないですね(笑)。でも、そうなると自分用のSwitchが欲しくなりますよね。

 まさにそうです。購入に踏み切るまでに何回も迷いました。新幹線に乗っている時とかも、気付いたら「コントローラーの色はこれかな~」ってAmazonでSwitchのページを開いていたり......。ふと正気に戻って「あかんあかん、今はドラムの練習せんと」とページを閉じて耐えたりしてました。

 ほんで、2019年6月にシンガポールに行く機会があったんです。行き帰りの機内で何か読もうと思って、空港の本屋さんに寄ったんですよ。2冊選んでレジに並んだら、なぜかレジの後ろの棚に置いてあったんですよ、Switchが。実物が目の前にあって、もう辛抱ならんくて......。「買ったらあかん、買ったらあかん」と思いながらも、いつの間にか買っちゃってました。

――空港でSwitchを購入する方は珍しいと思います。それだけ、既にハマっていたということですよね。

 その時はシンガポールで4泊したんですが、みんなで朝ごはん食べてから夜中までカジノをするスケジュールで、俺だけカジノ終わりに部屋でフォートナイトをやってました。さすがにヘロヘロになって、帰りの飛行機では完全に爆睡していました。

 で、一緒に行ったスタッフが「YouTubeやりませんか」って言ってきたんですよ。最初は「(本業と関連性の高い)トーク系のチャンネルにしませんか」って話でした。でも自分は本業をYouTubeでやるつもりはなかったんです。だから「フォートナイトならいいですよ」って返事しました。

 家でフォートナイトをしようものなら、「そんなんする暇あったら真剣にネタ考えろ」「ドラム練習せい」って、もう一人の自分がめっちゃ騒ぐわけです。この自制心をどうにか黙らせたいと思っていたときにYouTubeの話が出てきて、「これなら堂々とフォートナイトできる」と思いました。

――そうして始まったのが「フォートナイト下手くそおじさん」だったと。

 そうです。YouTubeチャンネルを始めた時は、ゲーム仲間でもあるスタッフたちと3人でプレーしていたんですけど、どうすれば上手くなるのかすら全くわからんくらい、みんなあまりにも下手くそだったんです。すると息子が「YouTubeの動画を見たほうがいい」と言ってくれて、いろんな動画を見ていたら、めちゃくちゃ上手くなりたいと思うようになってきたんです。今の俺は、「堂々とフォートナイトをやりたい」、そして「本気でフォートナイトが上手くなりたい」という二つの気持ちを原動力にYouTubeチャンネルをやっているんですよ。

【Profile】
小籔千豊(こやぶ・かずとよ)
1973年9月11日生まれ、大阪府出身。吉本新喜劇座長。バンド・吉本新喜劇ィズとジェニーハイのメンバー。
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