レスラー以上にアイデアマンとして、プロレス業界では名を轟かせるマッスル坂井。今年、2.5次元ミュージカルを超えた“2.9次元ミュージカル”を「まっする(=ひらがなまっする)」で開催。プロレスファンに衝撃を与えた。レスラー・経営者・タレント・…

レスラー以上にアイデアマンとして、プロレス業界では名を轟かせるマッスル坂井。今年、2.5次元ミュージカルを超えた“2.9次元ミュージカル”を「まっする(=ひらがなまっする)」で開催。プロレスファンに衝撃を与えた。レスラー・経営者・タレント・演出家等、複数の顔を持つ坂井選手。後編は来年3月に開催が発表された「まっする4」について伺った。

<前編はこちらから>

<中編はこちらから>

--今年2020年は「まっする」のための1年だったと思いますが、そもそも「2.9次元」とは何でしょうか?
マッスル坂井(以下、坂井):2.5次元ミュージカルよりも0.4現実寄りで、3次元の現実よりも0.1ファンタジー、それが2.9次元ミュージカルです。

--あっ…何となく分かったような気がします(笑)。ちなみに2004年にスタートした「マッスル」は、どのような経緯で始まったのですか?
坂井:最初はDDTの新たな選手を団体の内外・プロアマチュアを問わずに発掘する興行でした。200人からスタートした会場も、興行を重ねていくうちに会場が少しずつ大きくなり、1年半後に後楽園ホールでできることになりました。
高木三四郎社長と話しているうちに「後楽園ホールでやるからには大物のゲストが必要なのではないか?」となり、そこで百獣戦隊ガオレンジャーのガオブラック役の酒井一圭さん(現・純烈リーダー)がプロレスに興味を持っている、という話を聞いて東映のプロデューサーさんに紹介してもらいました。
酒井さんとお会いし「プロレスやりましょう」と、すぐに決まりました。お互いの話題作りにもなるのでゲスト参戦して頂くことになりました。

--その「マッスル」が、昨年11月に記者会見が行われ「まっする」として再開することが発表されましたね。
坂井:「マッスル」も「まっする」も根本は同じ。「DDTの若い選手と一緒に普段のプロレス興行とは違うアプローチでプロレスを表現する」というコンセプトです。
あと、単純にプロレスを使ってもっと色々な表現が出来ないか…というのが基本の基本の基本です。他のプロレス団体では出来ない、DDTでしか表現できないものですね。

--先日11.9後楽園ホール「まっする3」を、ドラマやアニメを担当したテレビプロデューサーと観戦させて頂きました。彼曰く「これはかなり練習しているはず。出場している選手は通常興行を休んでいるのか?本当に一回だけの興行なのか?」と興味津々でした。
坂井:本当に出場している選手たちは頑張っています。通常のミュージカルでは技は当てずに効果音だけが付きますが、2.9次元ミュージカルでは技が本当に当たっています。ドロップキックも当たっているし、ボディースラムもしっかり受け身の音がする。それなのに、その音をかき消すように大きな効果音をつけるという一見、無駄なことをしています。でもそこにプロレスラーにしか出来ない演劇のようなことをやっている気持ちはありますね。

--通常の興行もある中で「まっする」を行いましたが、どのくらいの練習期間があるのですか?
坂井:一番時間がかかるのは企画です。最終的に僕がまとめますが、選手やスタッフなど、みんなに意見を聞いて、その企画をやってくれるか確認します。
実際の通し稽古は丸々三日間ですね。でも歌舞伎の公演の稽古や吉本新喜劇もそれくらいの短期間に一気に集中してやると聞いていますので、短すぎるとは思っていません。

--カンペは出てないですよね?
坂井:出てないですよ。11月は「まっする」の一週間前に大田区体育館でビッグマッチがあって、「まっする」の前日にも配信試合の収録がありました。その中で、膨大な量のセリフを覚え、さらには歌やダンスの練習もやり、なんならプロレスの試合のための準備までしなければいけません。毎回やるたびに、これをやり切ってくれる選手たちのポテンシャルの高さに驚かされています。

--そして「まっする4」が、2021年3月に決まりました。どんな内容になりそうですか?
坂井:もちろんこの一年で蓄積されてきたノウハウを生かしつつ、その世界観を踏襲したものになると思います。これまで漫才から始まって2.9次元ミュージカル、そして前回5vs5のグラップリングまで行っていますから、どうしようか悩みますね。ただ次は東京と大阪2公演あって、基本的には同じ内容で行くと思います。

--来年3月は、2ヶ所で初の複数公演。今後坂井さんとしては、同じ公演で回数を増やしていきたいと考えていますか?ロングラン公演というか。
坂井:そうですね。何度もやれるロングラン公演。そのほかにも「まっする」は過去4回やっていますから、どれを再演しても良いクオリティだと思っています。

--本当にクオリティが高いですよ。音楽も浜崎あゆみさんやm-flo等、数多くのアーティストと仕事しているRAM RIDERさんでレスラーの皆さんも歌っていますよね。次回公演も楽しみにしています。
坂井:次は何をやりましょうかね?逆に何をやったら良いですか?

--えっ!僕、圧倒的に坂井さんよりアイデアないから…「まっする3」でグラップリング勝負を見せて頂いたから。解説席にいた青木真也さんが真剣にリング上の戦いを観戦していましたよね。
坂井:本当にありがたい話ですよ。次回の「まっする4」、どうなるのかは観にきてのお楽しみですけど、お客さんには毎回同じような、楽しい気持ちになって帰って欲しいとは思っているので、これからじっくり考えます。

--また一から台本を作るんですよね?
坂井:また同じことをやったら怒られそうですから。色々考えてやるしかないですよね。

<インフォメーション>

来年3月に開催が決定した「まっする4」。大会に先駆けて過去の「まっする」を動画配信サービスWRESTLE UNIVERSEでご鑑賞ください。→https://www.ddtpro.com/universe

また大会チケット等の詳細は、DDTプロレスリング公式サイトをご覧ください。→https://www.ddtpro.com

スーパー・ササダンゴ・マシンTwitter→https://twitter.com/abulasumasi

取材・文/大楽聡詞

写真提供/DDTプロレスリング