後半31分。スコアは14-45。対するキヤノンに、大きく差をつけられていた。

 このまま芝を去るわけには、いかなかった。直後のキックオフ。NECのWTBである後藤輝也は、敵陣深い位置まで弾道を追った。こぼれたボールをさらう。人垣をステップで振り切り、次の瞬間にはインゴールを陥れた。トライ。

「(キックオフを)競られる位置に蹴ってもらっていた。マイボールをキープして、いけるところまで前進する、と」

 12月18日、東京・秩父宮ラグビー場。国内最高峰トップリーグの第12節を21-45で落とした直後、当の本人はあの場面を語る。試合は前半に38失点を喫する苦しい内容だっただけに、笑顔はなかった。

「うーん…。ずっと、ボールキープができなかった。アタックする時間が短く、自分たちの(練習などで)やってきたことができなかった」

 今夏は、男子7人制日本代表としてリオ五輪4強入り。果敢なランで何度もスコアを奪っていた。そこで得られた自信と自覚の表れか。NECで戦ういまの心境について、以前の自分と比べながらこう明かす。

「以前はチームに助けられてもいたのですが、いまは自分がもっといいプレーをして、チームを引っ張って行ければ」

 今年6月に15人制の日本代表入りを果たしたSHの茂野海人、2012年以後ずっと国際舞台で戦うSOの田村優ら、チームのキーパーソンの隊列に加わりたい。そう願う後藤に、願ってもない話が舞い込んできた。

 国際リーグのスーパーラグビーに今年度から初参戦した、日本のサンウルブズからのオファーである。

 2019年のワールドカップ日本大会を見据えてか、後藤はかねて「15人制でそういう(大きな)機会をもらえれば」と考えていた。「急に決まった」と話す今度の契約は、さらに世界を広げる大きなチャンスとなり得る。

「スーパーラグビーについては、まだ『通用するのかな』というくらいのイメージしかない。まずはチーム内で高いレベルのプレーをする。その先で、スーパーラグビーを見ていけたら」

 身長177センチ、体重80キロとインターナショナルレベルにあっては決して大柄ではないが、その迷いなき走りが期待される。関東大学リーグ戦2部の山梨学院大からスーパーラグビーへ上り詰めた、売り出し中の25歳。NECでの中心選手を目指しながら、新しい世界に挑む。(文:向 風見也)