早慶戦を終えて、4年生は引退。3年生を中心とする新体制がスタートした。来年の状況は不透明だが、全日本大学対抗王座決定戦(王座)に向けて男子部は16連覇、女子部は王座奪還を目指して1年間を戦っていく。今回は、新たに主将に就任した松本妃那(ス…

 早慶戦を終えて、4年生は引退。3年生を中心とする新体制がスタートした。来年の状況は不透明だが、全日本大学対抗王座決定戦(王座)に向けて男子部は16連覇、女子部は王座奪還を目指して1年間を戦っていく。今回は、新たに主将に就任した松本妃那(スポ3=福岡・柳川)、畠山尚(スポ3=神奈川・湘南工大付)に話を伺った。新チームの状況や、チームづくりのことなど、さまざまなことを話していただいた。

※この取材は10月31日に行われたものです。

『責任のある立場』


新主将に就任した2人

――主将就任が決まってどのように感じましたか

松本 やはり責任感が大きいというのがあって、みんなの目標である王座奪還を達成できるように、しっかり責任ある行動を取っていきたいなと思いました。

畠山 僕は正直、すごい仕事を任されたなと最初は思って。歴代のすごい先輩たちが主将を務めて、ずっと王座連覇をしてきているので、すごく責任のある立場になるのだなと感じました。

――主将になるにあたって理想の主将像はありますか

松本 私が1年生の時に4年生の大矢希(平31スポ卒=愛知・名経大高蔵)さんという方が主将をされていたんですけど、やはりその方は全てのことにおいて全力で。オンコートでも引っ張っていけるような、プレーでも引っ張っていけるような先輩でもありました。全ての行動において完璧というか見習いたいと思える先輩だったので、そういう主将になりたいです。

畠山 僕も1年生の時の4年生の先輩で、坂井(勇仁、平31スポ卒=大阪・清風)さんが主将だったんですけど、寮も同じで主将としてどんなことをしているとか、どういうことが大変とか、いろいろ聞いていました。坂井さんみたいな主将になりたいと思っていますし、坂井さんを越えられるぐらい自分なりに工夫して頑張りたいと思っています。

――今の代のチームの雰囲気はいかがですか

松本 団体戦でプレーしているのは、2年生の子が主になっているので、2年生の力も借りながら3年生と協力してチーム一丸となってやっていこうというチームです。一丸となってやっていくというのもありますし、練習で試合を意識して緊張感をもって、というように言っています。

――いい意味で緊張感があるということですか

松本 オンコートとオフコートでしっかりメリハリをつけるというのがあって。試合の時に緊張していいプレーができないというのが一番もったいないので、練習からしっかり気合を入れてやるようにしています。

――男子の方はいかがですか

畠山 男子はみんな仲がいいという感じです。学年の壁みたいなのがあまりなくて、全員仲がいいという感じのチームです。いいところでもあるんですけど、たまにゆるすぎる時があるので、そういう所はしっかり注意していくし、その良さを潰さないようにしていくのが僕の仕事かなと考えています。

――仲がいいという話でしたが、ムードメーカーのような選手はいますか

畠山 ムードメーカーですか(笑)。ムードメーカーは…。小林大修(文構2=東京・早実)とかですかね(笑)。

松本 (笑)

畠山 とにかくうるさいです(笑)。うるさくてよく喋る。早実上がりの人が多くてみんな仲がいいので、誰か一人というよりはみんなという感じです。

――女子の方はいかがですか

松本 私は安藤優希(スポ2=東京・日出)だと思っています。練習でもやる気がありますし、すごく元気がよくて笑顔でいい雰囲気にしてくれています。ちゃんとメリハリがあるのでそこは私も見習いたいと思えます。

――今の代の強みはどこにあると考えますか

畠山 さっきも話したんですけど、仲がいいというのが一番の強みというか。変な気遣いがなくていろいろなことが言い合えるようなところがあるので、先輩の意見を押しつけるだけじゃなくて、後輩の意見もちゃんと聞いた部活づくりができるというのが強みになっているかなと思います。

松本 強みなのかはチームが代わってすぐなので分からないですけど、今年は1、2年生の下級生の意見もしっかり取り入れた練習メニューとか、練習メニュー以外にも意見をしっかり聞くようにしています。全員が同じ意識でできるようにするので、そこが強みになるようにしていきたいです。

――今のチームの課題はありますか

松本 やはり、今年は早慶戦も負けましたし、昨年もリーグ(関東大学リーグ)で負けて王座に行けなかったので。一人一人の選手の強化はもちろんなんですけど、やはり団体戦で出る下位の3、4、5辺りをしっかり強化していくのと。ダブルスの下地(奈緒、社4=沖縄尚学)さんとか清水(映里前主将、スポ4=埼玉・山村学園)さんが抜けたので、ダブルスをもっと強化していく必要があるなと思いました。

畠山 男子も強い4年生が抜けて、戦力的に昨年よりは大丈夫だろうというところが今年はまだないので。僕も含めて、まだ団体戦に出たことがないメンバーとか、そういう人たちを強化していくことが課題かなと思います。

――松本さんにお伺いします。女子は2年生が力をつけてきていると思いますが、そのことについてはいかがですか

松本 2年生が主になって団体戦にも出てくれていますし、今回の春関(関東学生トーナメント)も、勝ってインカレ(全日本学生選手権)の本選の枠を勝ち取っているのは2年生がほとんどです。1年生の神鳥(舞、スポ1=東京・早実)もすごく頑張ってくれていますし、それに関してはチームとしてもうれしいんですけど。やはり3年生の選手で頑張っている田中(李佳 スポ3=兵庫・相生学院)や、私もしっかり結果を出していかないといけないと思って、いい刺激をもらっています。

――神鳥さんの話も出ましたが、ルーキーについてはいかがですか

松本 すごくいい選手で、コートに立つと負けず嫌いというのが伝わってくるくらい勝ちにこだわっている選手です。これからも伸びしろがあると思いますし、期待しています。

――畠山さんにお伺いします。4年生が抜けるという話がありましたが、そのことについてはいかがですか

畠山 戦力的に信頼できる選手が抜けてしまったというのは、みんなにとってもこれから団体戦が始まっていくにつれて不安ではあると思います。それでも今まで出られなかった人からしたら、逆にチャンスでもあると思うので、貪欲にレギュラーの座を勝ち取るというように、部活の雰囲気やそういうのをうまくつくっていければと思います。

――チーム内の競争は強化していきたいと考えているのでしょうか

畠山 練習試合はよくやるんですけど、それをどうつなげるかということで、新しい取り組みとして男子部でランキングをつけて、試合の結果によってランキングが変化するということをやろうかなと思っています。そうすることでライバル心を持たせたり、それでレギュラーが決まるかはわからないんですけど、そういうのを決める1つの指標にできたらなと思います。

――ランキングについてはどのように決まるのでしょうか

畠山 今のところは、春関やインカレといった大きな大会の結果もいろいろ加味しつつ、基本的にはここ(東伏見)のコートでやる試合をメインに考えています。

――男子の1年や2年についてはどのように考えていますか

畠山 すごく信頼できる選手が多いです。ジュニアの頃から全国とか世界で活躍している選手が多くいるので、4年生が抜けて不安ですけど、そういう選手が強くなってくれると思うので僕らも負けずに付いていきながら引っ張っていければなと思います

「練習から試合を意識して取り組めていた」


笑顔で話す松本

――先日行われた早慶戦について伺っていきます。早慶戦を振り返ってチームとしていかがでしたか

松本 清水さんの主将の代はすごくいい雰囲気で、みんながみんなのために頑張れるというような雰囲気だったので今年は勝てるんじゃないかと思っていた部分もあったんですけど、慶應の方が大事なところで強かったです。私は試合に出ていないので選手の立場としてあまり言えないんですけど、もう少し勝ちに拘っていきながらサポートも選手と一丸となって、みんなで最後の最後まで勝利に貪欲になるということがもっと大切だなと思いました。

畠山 早慶戦前の練習もすごくいい雰囲気でできていました。例年通りだったらリーグがあって、団体戦というものを全員で経験しているんですけど、早慶戦はいきなりぶっつけ本番であったにも関わらず、サポートも選手も全員で戦えている雰囲気が出ていたので、これが来年もできればいいなと思います。

――勝利に貪欲になるということでしたが、その部分は慶大との差にもなってくるのでしょうか

松本 慶應は最後の最後まで諦めないので。早稲田の選手も最後まで諦めないんですけど、例年慶應の応援はすごいので応援で選手を勝たせるぐらいの気持ちでやっていかないといけません。選手も成長しないといけないんですけど、一丸となることが大事だなと思います。

――団体戦を戦っていく中で、シングルスとダブルスそれぞれで重要だと考えている選手はいますか

松本 ダブルスでは、昨年のインカレインドアで2年生の石川(琴実 社2=神奈川・白鵬女子)が優勝しているので石川を中心にダブルスを強化していきたいなと考えています。シングルスでは昨年から出ている吉岡が団体戦では引っ張ってくれているなと感じているので、吉岡や1年生の神鳥の活躍を期待しています。田中も最近(調子が)上がってきているので、田中もしっかり頑張ってほしいなと思います。

畠山 男子は、シングルスは2年生の白石(光、スポ2=千葉・秀明八千代)、丹下(将太、教2=東京・早実)がチームを引っ張ってくれる存在なのでその2人を中心に。ダブルスは1年生の池田(朋弥、スポ1=愛知・誉)とかが勢いがあってチームに元気をもたらしてくれる存在で、高畑(里玖、社1=兵庫・相生学院)もダブルスでは全国で戦績を残しているので、そういう1年生をうまく使えるようにしたいなと思います。

――1年生の活躍はチームの勢いにもなりますか

畠山 そうですね。1年生は主力が2人なんですけど、他にも田中瑛大(スポ1=神奈川・湘南工大付)とか強い選手がいるので、そういう選手たちも一緒に底上げできたらいいなと思います。

――慶大と対戦するときには、吉岡希紗(スポ2=三重・四日市商)選手は佐藤南帆(2年)選手という強敵と対戦することになると思いますが、その部分についてはいかがですか

松本 今後は吉岡と佐藤南帆さんがずっと戦うことになると思うので、早慶戦だけに関わらず日頃の練習から。佐藤南帆さんを倒すための練習メニューとか、吉岡も試合前に言っていたんですけど分析するのが遅いので、もっと早めから分析して。他の人もそうなんですけど、どうやったら佐藤南帆さんに勝てるかというのを意識しながら取り入れていきたいなと思います。

――早慶戦を戦った中でチームとして良かったことはありますか

松本 今年は、いつもナンバー1で出てくださっている清水さんがけがで出られなかったんですけど、その分4年生の下地さんや倉持(美穂、商4=東京・早実)さんがチームを引っ張ってくださって、いい雰囲気でいけました。それと練習からしっかりピリピリと試合を意識して取り組めている選手が多かったので、そこはよかったなと思います。

畠山 僕はチームの雰囲気が一番良かったなと思っていて、全員が「僕たちが絶対に勝つんだ」という思いで早慶戦に臨めていました。サポートが選手を信頼して、サポートできていたと思いますし、選手もサポートを信じてコート上でプレーで表現してくれていました。信頼関係ができていたのがいい点だなと思いました。

――お二人は早慶戦には出られませんでしたが

松本 昨年は私も選手としてプレーできていたんですけど、今年はけががあってコートで引っ張ることができなかったので。来年はしっかり試合に出て、最上級生としてチームを引っ張っていきたいなと思います。

畠山 僕は1年生の時からサポートで、2年生の時に少しずつ試合で結果が出始めました。今年はコロナとかの影響で試合がなくて、アピールできる場が少なかったように感じます。確かに出たかったんですけど、今年出られなかったことに関しては、まだまだ実力が足りないので、今年1年でプレーもそうですけどチームに安心感を与えられるような選手になりたいなと思います。

――早慶戦だけでなくリーグや王座を戦っていく際に、慶大に勝つために必要なことは何だと考えますか

畠山 今のチームはテニスが強い選手が多いというのもすごくいいポイントなんですけど、テニスだけになってしまう時が多くて。自分のことに集中してくれるのはいいんですけど、なんのためにこの早大庭球部でテニスをしているのかということを一人一人が考えたうえで部活動ができればなと思います。ただなんとなく練習するのではなくて、なんのために練習しているのかをみんなが明確に分かったうえで練習に臨むことが大事だと思うので。慶應だけじゃなくて、インカレや春関で結果を残すためにも今どういうことをしなければいけないのかということをしっかり伝えていくことが、大事かなと思います。

松本 慶應は大体出る順番が分かっているので、早めから倒すための分析やそれに向けてのショットの強化をやって、自信を持った状態で早慶戦などの試合に臨めるようにチームをつくりあげていきたいなと思います。

――やはり早めに分析することが大事ですか

松本 相手の弱点が見つかったとしても、その弱点につけこむ自分のショットがないと勝てないので。相手の弱点を見つけて、それを生かせるように早めから練習することが大事です。

――個人のことについて伺っていきます。チームづくりを行っていく中で、具体的にどのようなことをしていきたいと考えていますか

松本 やはり全員のお手本になれるように、みんなが付いていきたいなと思えるような主将になりたいので。自分が一番に行動するとか、練習中の雰囲気をよくするために自分が一番頑張るとか声を出していくとか、そうやってチームを盛り上げていけるように頑張りたいです。

畠山 僕は今、テニスで引っ張れるほど結果が出ていないので。テニスの結果で示していくのもそうですけど、部員一人一人にフォーカスを当てて、チーム全員で戦っていけるようにしたいです。坂井さんはただ付いてこいという感じではなくて、部員一人一人を分かったうえで、その人に合ったアドバイスをしてくれました。ただ4年生で遠い存在みたいな感じではなくて、身近な存在で気軽に話しかけやすいというか、一人一人ともっと話して、付いてきてもらえるように頑張りたいと思います。

「僕の代にしか出せない色を来年の王座で出し切れるように」(畠山)


真剣に受け答えする畠山

――ここまでコロナで大会がない期間が続きましたが、練習ではどのようなことに取り組んできましたか

松本 コロナの影響で練習できない時期が長く続いて。その間はみんな地元に帰って一緒に顔を合わせて練習できなかったんですけど、清水さんが試行錯誤していただいて。各々テニスはやって、ZOOMで顔を合わせてみんなの近況を知ったり。ZOOMでみんなでトレーニングしたりして、できないなりにみんなで協力してできていたと思います。

――自粛が明けて練習ができるようになってからはどのようなことに取り組みましたか

松本 試合ができるかできないかがまだ分からない状態の中で、みんなモチベーションが少し下がっていました。私自身も試合があるかどうかが分からなくて、何に向かって頑張ればいいのかという不安がみんなあったと思うんですけど。その不安をなくしてくれるかのように4年生の方が試合ができるようになった時のために頑張ろうという声掛けをしてくれて、その取り組みがすごく力になったなと思います。

――試合ができると決まってからはモチベーションが上がっていきましたか

松本 早慶戦とか春関があると分かってからは、目標ができたのでそれに向かって各々みんな頑張っていました。

――畠山さんの方はいかがですか

畠山 僕は部活動ができない時は4年生の長倉(謙伸、スポ4=静岡)さんとひたすら寮で筋トレしていました(笑)。毎日馬鹿みたいに筋トレして(笑)。自粛期間はそれぐらいですかね。練習ができるようになってからは、僕一カ月くらい掃除部に転部しました(笑)。

松本 (笑)

畠山 それでずっと掃除していたんですけど、ひたすらデッキブラシで磨いていたのでグリップ力とか足腰は鍛えられたと思います(笑)。テニスができるようになってからは、体力面が課題だと思ったのでトレーニングだけは誰にも負けないように、走るメニューや一個一個の動きを意識し。まず体力を戻すことをメインに練習しました。試合が決まってからは、ダブルスメインで出る予定だったので、2年の増田(健吾、社2=東京・早実)と対抗戦に出させてもらって多く試合をすることを意識して練習していました。

――プレー面で課題はどこにあると考えていますか

松本 私はけがが多いので体調管理だったり栄養管理だったりと体のケアはもちろんのこと、プレーでは昨年の早慶戦でも最後の方で足がつってしまったので、もう少し体力の強化や筋力をつけていきたいです。

畠山 フィジカル的にはだいぶ強くなったと思います。試合においての戦術だったり、いろいろな相手がいる中でその相手にどうやって勝つのかという泥臭い部分だったり、そういう面を今後は磨いていきたいです。

――チームとしての目標とそこに向けた意気込みをお願いします

松本 女子の今年のチームの目標は王座奪還で、それに向かって常に緊張感ある雰囲気で練習して、みんなが一つの目標に向かって頑張って、各々が成長できるように練習に全力で取り組んでいきたいと思います。

畠山 今年は王座がなかったので、来年王座があるなら16連覇に向けて活動していきたいです。練習をいい雰囲気でやるのはもちろんなんですけど、このままで達成できるわけではないので、僕の代にしかできない取り組みや僕の代にしか出せない色を来年の王座で出し切れるように一日一日を無駄にせず、みんなと関わってチームとして成長できるように頑張ります。

――最後に、個人としての目標とそこに向けた意気込みをお願いします

松本 ラスト1年は個人戦でも団体戦でもしっかりコートに立って今まで以上にいい結果を出すというのが目標です。団体戦ではしっかり早慶戦、リーグ、王座でメンバーに入って、コートでみんなを引っ張っていけるように頑張るというのと。個人戦ではインカレで昨年はベスト32で負けてしまったので、ベスト8以上はいくことを目標に頑張ります!

畠山 僕はインカレダブルスで優勝します!

――ありがとうございました!

(取材・編集 大島悠希・山床啓太)

◆松本妃那(まつもと・ひな)

2000(平12)年2月19日生まれのO型。福岡・柳川高出身。スポーツ科学部3年。色紙に何を書くかでかなり考えていた松本選手。昨年はかわいいイラストつきでしたが、今年は力強い言葉を書いていただきました。主将としての『覚悟』と、仲間との『協力』でチームを勝利に導いてくれることでしょう!

◆畠山尚(はたけやま・なお)

1999(平11)年4月2日生まれのA型。神奈川・湘南工大付高出身。スポーツ科学部3年。昨年からヘラクレスオオカブトを飼い始めたという畠山選手。色紙にカブトムシの絵を描こうとするなど、そのカブトムシ愛は本物な様子。カブトムシのようなかっこいい活躍に期待です!