10月26日開催のドラフト会議まで2週間を切った。連日、ドラフト上位候補に関する報道であふれている。 しかし、ドラフト…
10月26日開催のドラフト会議まで2週間を切った。連日、ドラフト上位候補に関する報道であふれている。
しかし、ドラフト中位から下位で指名されながら、一流選手へと成長するケースがあるのもドラフトの面白いところだ。今季、筒香嘉智(レイズ)が抜けた穴を補ってあまりある活躍を見せる佐野恵太(DeNA)など、4年前のドラフト9位指名選手だった。
なぜ佐野が下位指名だったかといえば、佐野が打撃面に特化した「一芸選手」だったからだ。明治大での佐野は「4番・ファースト」として秋の明治神宮大会優勝に貢献している。だが、プロではファーストは外国人選手が守ることが多く、よほど打力が高くなければレギュラーを奪うのは厳しい。ハードルの高さゆえ、9位まで佐野が残っていたのだろう。
しかし、すべてのバランスが整っていればいいというものではない。佐野だけでなく、「甲斐キャノン」を武器に、育成選手から球界を代表する捕手に成長した甲斐拓也(ソフトバンク)のような例もある。たとえプロ入り時の評価は低くても、一芸選手には大化けの夢が広がるのだ。
今年のドラフト候補のなかで、さまざまな角度から一芸選手をピックアップしてみた。

神奈川大学リーグでヒットを量産している関東学院大の関龍摩
ひとり目は、バットコントロールという一芸を持つ関龍摩(関東学院大)である。
関は神奈川大学リーグで通算106安打(10月11日現在、以下同)を放っているヒットメーカーだ。1年春からコンスタントに結果を残し続け、今春のリーグ戦が中止になっていなければさらに数字を伸ばしたことだろう。
しなやかにバットを振りこなしている証拠だろう、打席での関はバットが長く見える。速球には強く、変化球には柔らかく、対応できる幅が広い。
本人が打撃で大事にしている感覚は「グリップを残すこと」だという。
「グリップを残しておけば、そこから振れる幅も広くなりますし、右方向にも強い打球が打てますから」
その独特の感性が感じられたのは、変則投手への対応に話が及んだときだった。関は「変則ピッチャーと対戦する時はフォームを見ない」と語った。
「変則ピッチャーはフォームで崩されるので。だったらフォームよりボールを見て、体が前に突っ込まないようにする。ボールはどのピッチャーが投げても一緒なので」
大学4年の主力にもかかわらず、1年時から背番号36をつけ続ける。「変えるのが好きじゃないし、36で覚えてくれている人もいるのでいいかな」と、いかにも職人肌の雰囲気がある。とはいえ、ウェアはすべて1年時のサイズのため、肉体的にたくましくなった今は「みんなちっちゃいです」と笑う。
プロで成功するイメージは「右の清水隆行(元巨人ほか)」。独特の感性がプロの世界で花開くのか、見てみたい。
ふたり目は関と同じ神奈川大学リーグの渡部健人(桐蔭横浜大)というスラッガー。身長175センチ、体重113キロという体軀ながら、身のこなしは軽やかでヒザ関節を痛めた経験もないという。
「自分の場合は強く振るとスイングが弱くなるので、力を抜いて振ったほうがスイングスピードは上がるんです」
本人がそう語るように、強振するというより、ふわりと柔らかく運んで飛ばすタイプ。中村剛也(西武)に近い系譜だろう。
だが、高い能力とは裏腹に、春のオープン戦では結果が出ず、桐蔭横浜大の齊藤博久監督も「まだ素材段階なので、渡部を育てられる自信を持った球団じゃないと指名は厳しいかもしれない」と見通しを語っていた。
ところが、秋のリーグ戦が始まるとその打棒が大爆発。8試合で7本塁打(10月11日現在)の固め打ちで猛アピールをしている。右のスラッガーは希少なだけに、渡部の需要は高まるかもしれない。
3人目と4人目は足の速い「韋駄天」のふたり。俊足の選手は体にキレがあり、攻守ともプロのスピードに順応しやすい傾向がある。その意味で注目したいのが並木秀尊(ひでたか/獨協大)と奥野翔琉(かける/明徳義塾)だ。
並木は首都大学2部リーグの選手ながら、昨年12月に日本代表候補合宿に選出された。手動のストップウォッチで計測した50メートル走では、参加選手トップの5秒32を叩き出した。
奥野は今夏の甲子園交流試合で2盗塁をマークしただけでなく、浅い外野フライでタッチアップして生還するなど、実戦に強い走塁能力の高さを見せつけた。快足といえば五十幡亮汰(中央大)ばかりが注目を集めるが、五十幡は上位指名でなければ獲れない存在になった。上位で外野手を指名できない球団にとって、並木と奥野は触手を伸ばしたくなる選手に違いない。
5人目は捕手。評価するうえで重視されやすいのが肩の強さだ。ここにきて強肩捕手として存在感を増してきているのが榮枝裕貴(さかえだ・ゆうき/立命館大)である。
身長180センチ、体重81キロの体は、不思議とプロテクターを装着している時にもっと大きく見える。ただ馬力に頼ったスローイングではなく、握り換えが速く弾力のある腕の振りで、イニング間の二塁送球だけで相手にプレッシャーをかけられる。
昨年は大本拓海(現・ヤマハ)という主力捕手がいたため、正捕手としてマスクを被るのは今季が初めてとキャリアは浅い。それでも、捕手としての気配りやセンスも非凡なものがある。
今秋の関西大との優勝をかけた大事な一戦では、不調の投手を巧みにリード。「左バッターへのカットボール、スライダーはいいから、真っすぐを見せ球にしよう」と即座に配球を定める鋭敏な思考力を見せた。
捕手は大まかに分けると、相手打者の嫌がる球ばかりを要求するタイプと、投手のよさを引き出そうと腐心するタイプに大別される。榮枝は自身を「その両方」と自己診断する。
「相手がインコースを打てないと思ったら、ずっと内ばかりを突いて、いよいよ相手も狙ってくると思ったら逆に外にいって『内にこんのかい!』と思わせる。ピッチャーのよさを引き出すのも大事ですし、使い分けのバランスが大事だと思います」
もはや鉄砲肩だけが売りの選手ではない。捕手の素材としての魅力は、今年のドラフト候補のなかでもトップクラスだろう。
6人目は投手。投手にもさまざまなタイプの一芸選手がいるが、ここでピックアップしたいのは「特殊な変化球」を持つ投手だ。
今秋、ヒジの故障から復活してドラフト戦線に戻ってきた小郷賢人(東海大)は必殺のタテスライダーを武器にする。ストレートの球速も最速155キロと速いのだが、それ以上にタテに鋭く落ちるスライダーのインパクトが大きい。東海大では守護神を務めていたように、プロでもリリーフとして期待したい存在だ。
小郷は自身のスライダーの投げ方について、このように語っている。
「切るのではなく、抜く感じで、速いカーブを投げるような感覚です」
プロの強打者相手でも、小郷のスライダーに腰砕けになって空振りするシーンが思い描ける。わかりやすい武器を持った投手なのだ。
一芸選手は武器がある反面、課題を抱えているケースが多いためスカウトによって評価が分かれやすい。だが、彼らがドラフト会議で指名され、勝負のステージに立てさえすれば、きっとバランス型の選手にはない突出した魅力を放つはずだ。