ウィンブルドン・チャンピオンのアンディ・マレー(イギリス)は世界ランキング1位の座を確実なものとするために、シーズン最後の試合に勝つ必要があった。そして彼はそれを比較的簡単にやってのけた。 世界トップ8による「バークレイズATPワールド…
ウィンブルドン・チャンピオンのアンディ・マレー(イギリス)は世界ランキング1位の座を確実なものとするために、シーズン最後の試合に勝つ必要があった。そして彼はそれを比較的簡単にやってのけた。
世界トップ8による「バークレイズATPワールドツアー・ファイナルズ」(イギリス・ロンドン/賞金総額750万ドル/室内ハードコート)のシングルス決勝で、マレーはノバク・ジョコビッチ(セルビア)を6-3 6-4で倒し、来シーズンまで世界1位であり続けることを確実にした。 「もちろん、そこにとどまれるよう努力したい。1位にたどりつくために、ここ5、6ヵ月は膨大な努力が必要だったのだからね」とマレー。彼は2週間前にジョコビッチから世界1位の座を引き継ぎ、今や24連勝を記録した。
「今年、素晴らしい年を送れ、それを来年も、というのが非常に難しいことはわかっている。僕はそれをたった一試合(の差)によってやってのけた。それを来年も繰り返すというのは、とてつもなく難しいことだ」 マレーはパリ・マスターズでジョコビッチから首位の座を奪った。
2位となったジョコビッチは、ATPファイナルズの決勝で勝てばその座を奪い返すことができたはずだった。
決勝を前にしたマレーは、あまり優勢であるようには見えなかった。準決勝でミロシュ・ラオニッチ(カナダ)と3時間を超える激しい戦いをし、さらに遡ればラウンドロビン(総当たり戦)をくぐり抜けるための戦いも接戦で、錦織圭(日清食品)を倒すためにやはり3時間を超える戦いをして、かなりの疲労を訴えていた。
ジョコビッチとの決勝でマレーは第1ゲームを2本のダブルフォールトをもって始めたが、その後、度重なるアンフォーストエラーだけでなく、サービスでも苦しむことになるのはジョコビッチのほうだった。 「今日の僕には勝つチャンスがなかった」とジョコビッチ。「出だしから、それは見てとれたよ。全体的に今日の彼は、よりいいプレーヤーだった」 いつもならグラウンドストロークが非常に安定しているジョコビッチだが、この日の彼はそこここでイージーショットのミスをおかし、計30本のアンフォーストエラーと13本のウィナーを記録した。対してマレーは15本のアンフォーストエラーと13本のウィナーだった。 第1セットでジョコビッチはごく普通のスマッシュをサイドに外した。第2セットでは何の変哲もないフォアボレーをネットに引っ掛けた。 ジョコビッチは今シーズン最後の大会で6度目の優勝と5度目の年末ランキング1位を目指していたが、試合が進んでもジョコビッチにとって状況が改善されることはなかった。 「自分の側からは、大したことができなかった。チャンスを得るたびにミスしてしまっていた」とジョコビッチは言った。 2003年のアンディ・ロディック(アメリカ)以降、世界1位の座はジョコビッチ、ロジャー・フェデラー(スイス)、ラファエル・ナダル(スペイン)のうちのひとりのものだった。しかし今、マレーがようやくそこに割って入ったのだ。 マレーはパリ・マスターズで今年8度目のタイトルをつかみ、その後発表された11月7日付の世界ランキングで1位の座を引き継いだ。彼は全豪オープン、全仏オープンで決勝に進み、そこではジョコビッチに敗れたが、ウィンブルドンで2度目の優勝を果たしたあと、リオ五輪でロンドン五輪に続く2度目の金メダルを獲得した。 決勝のあった日曜日に、マレーは人生で最高のテニスを見せてきた期間をさらに延長した。
「必要な瞬間に、十分なだけの堅固なプレーができた」とマレーはやや謙虚に言った。「いいプレーをしなければ、ノバクほど優秀な選手を倒すことは決してできない」 シーズン最後の試合が年末ランキングを決めることになったのは、2000年以来のことだ。16年前にグスタボ・クエルテン(ブラジル)がアンドレ・アガシ(アメリカ)を下し、マラト・サフィン(ロシア)を抜いてトップ・ランキングをつかんだ。 今年最初の2つのグランドスラムで優勝したにも関わらずジョコビッチは、シーズン後半に四苦八苦することになった。彼はウィンブルドンの3回戦でサム・クエリー(アメリカ)に敗れ、グランドスラム大会30連勝の快走に終止符を打つと、リオ五輪では初戦でフアン マルティン・デル ポトロ(アルゼンチン)に敗れ、さらに全米では決勝でスタン・ワウリンカ(スイス)に敗れた。 「ここ5、6ヵ月は理想的ではなかった」とジョコビッチ。「でもときに、このようなこと----シーズンの半分で願っているほど、過去3、4年ほどよい時期を送れない、というようなことを経験するのはごく普通のことだとも言える。それだけだよ」。(C)AP