第3回に登場するのは3年女子。主将として、実力でもチームをけん引する中村美優(スポ=北海道・旭川北)、それを支える横塚葵副将(文構=埼玉・栄東)、高木陽菜(スポ=東京・国際基督教大高)の3人だ。今年は全日本学生王座決定戦(王座)に日体大を…

 第3回に登場するのは3年女子。主将として、実力でもチームをけん引する中村美優(スポ=北海道・旭川北)、それを支える横塚葵副将(文構=埼玉・栄東)、高木陽菜(スポ=東京・国際基督教大高)の3人だ。今年は全日本学生王座決定戦(王座)に日体大を抑えた関東女王として挑む。いよいよ今週開幕する王座に向けて、どのような練習を積んでいるのだろうか。

※この取材は9月5日にオンラインで行われたものです。

「(自粛期間は)アーチェリーから離れて、いい気分転換だった」(高木)


初めて王座メンバーの4人に選ばれた高木

――自粛期間中にどのような練習をされていましたか

中村 3月か4月くらいからずっと北海道に帰って家での近射の練習と、射場が使えるようになってからは70メートルとかをコーチに見てもらって練習を重ねていたので、みんなよりはけっこう練習ができていた方かなと思います。

横塚 私は全然練習ができなかったので、家で近射したりとか弓を引いたりがほとんどでした。6月の末くらいに近くの学校で射て(うて)るようになったので軽く2、3回くらいは射っていて、7月に入って部活が順次再開ということになったので、部活の土日練をメインで練習していました。

高木 私は自粛期間中はほぼ筋トレと、家で近射を少しだけやっているという感じでした。7月は週末に一般の大会があったので、それに出場しながらというかたちで、本格的に練習を始めたのは夏休みに入ってからです。

――自粛期間中の練習だったからこそ伸ばせたことはありますか

横塚 自粛期間だからというので言えば、弓を引いた回数ですかね。近射と弓を引くトレーニングが主だったので、それこそ4月の最初の方とかは今思い返せば普通に射っていたらありえないくらいの回数弓を引いていて、1日でこれだけできるんだと分かったのは自粛期間ならではでした。

中村 私も似ていて、珍しく家でしか射てないという状況が続いたので、近射に今までないくらい取り組めました。高校の時みたいに久しぶりに1日何百本も射ったり、基礎体力という面では今につながる大きい部分だったのかなと改めて思います。

高木 私は逆になってしまうんですが、自粛期間前は点数や射型に悩んでいたので、ある意味アーチェリーから少し離れて、いい気分転換だったのかなという気がしています。自粛期間中は最低限くらいしかトレーニングしていなかったので、正直あまりアーチェリーのことは考えていなかったです。

――筋力や感覚の変化はありましたか

横塚 やっぱり的を狙って射つ競技なので、狙おうと思えば狙えるんですが、自粛明けで距離を射った時は感覚の違いもありましたし、狙わないとつかない筋肉もあったので、最初はすごく苦労しました。

中村 4月に帰って1カ月くらいはずっと家の中で近射をして射ち込んだんですが、そこからは高校の時のコーチについていただけたので、スムーズに狙う練習に入っていけました。射ち込んだ結果が、教えてもらったことがすぐに再現できるようなかたちにつながっていて、タイミングとしてはよかったかなと思っています。

高木 私は自粛期間中最低限のことしかできなくて、8月から本格的に練習し始めた時に、それまではアーチェリー楽しくないっていう気持ちだったんですが、自粛明けてアーチェリーして楽しいかもしれないという気持ちになって、そこから射ち込んだという感じですね。感覚はそんなに変わらなかった気がします。

――続いて、昨シーズン全体を振り返っていかがでしたか

横塚 私は、去年全体だと6月末にあった試合で自分の試合新(記録)を射てたりとか、今まで試合で600点を超えられないことが課題だったんですが韓国遠征でそれが超えられたりして、点数はけっこう伸ばせたかなと思っています。でもそれが毎回にはならなくて安定には遠かったという印象です。

中村 私は調子の波が大きい1年だった気がします。リーグ戦(関東学生リーグ戦)、優決(同リーグ優勝決定戦)、王座と、要所では合わせられたんですが、その中で72射の中でM(0点)が出てしまったり、大事な大会で大きな点数を出せなかったりと、点数にも波があるし、不安定な1年だったかなと思っています。

高木 私は点数的にも射型的にもボロボロだった気がしていて。振り返ってみると点数はそんな悪いわけではなさそうなんですが、自分としては射型にめちゃくちゃ悩んでいて、思い通りに体が動かないという感覚が続いていたので、すごくつらかったですね。一つ良くなったらだめになってというのを繰り返していた気がします。

――関東学生個人選手権(個選本選)について振り返っていただけますか

高木 個選本選に関しては、けっこう練習と同じように射てたような気がしています。個選本選まではすごく調子が悪かったんですが、その前々日くらいに一気に戻ったような感じで点数が上がって、そこから練習通りに射てたような点数でした。直前に、あ、これだ! という射型が見つかったので、それがよかったなと思います。

――夏の集中練習をされていましたが、振り返っていかがでしたか、印象的だった練習などはありますか

横塚 集中練習で毎日一つゲームを取り入れていたんですが、その中の『パーフェクトショット』というのがあって。8本射って全て黄色(9点か10点)に入れて、入らなかった矢は抜いてもう1回その本数を射って、誰が一番早く黄色に入れられるかというゲームをやりました。最後の1射を「何点射ちます」と宣言してから入れて、外してしまったら入れるまで終われないというプレッシャーがかかっていたんですが、その時に自分でも思ったより早く抜けられて。最後も10点入れますと宣言してちゃんと入れて終えられたというのは自信がついたので、印象に残っています。

高木 私も葵ちゃんと同じパーフェクトショットが印象に残っています。私はいつも8点くらいのぼんやりした当たりなんですが、パーフェクトショットは黄色以内に入れないといけなくて集中力や狙う力を鍛えられたので、今後の練習にも取り入れてみたいなと思っています。

中村 私もパーフェクトショットかなと思っています。チューニングとかで他の練習に参加できなかったんですが、パーフェクトショットを初めてやって、最初はすんなりいったんですが最後の2射が本当に入らなくて。本当に最後の最後でぎりぎり終わったという感じだったので、午前の人すごいなと。葵ちゃんと陽菜とは練習が違ったんですが私は午後練で、久々に集中して狙ったのでいい取り組みだったなと思っています。

――点数や射型を振り返っていかがでしたか

横塚 私は集中練習中に改善できたこともあったんですが、やっぱり少し不安が残っている部分もあって、うまくいかないだろうなという不安を抱えつつの納射会でした。点数はあまり伸びてないんですが、まあ仕方ないかなというのもあって。その中でもしっかり点数が出たエンドはあったので、試合の中で良かったところと改善点が明確に見えた点では、有意義な納射会にできたのではないかなと思います。

――課題とはどのようなことでしょうか

横塚 いつもはサイトの真ん中に弦が見えるんですが、それが今右側にずれてついていて。それってアンカーがちゃんと引き込めていない、今まで通りのポジションに入らなくなったということがあるんですね。自分でもどうやったら入るのか今試行錯誤している状態で、集中練習が終わってこれから早急に解決しなきゃいけない課題だなと思っています。感覚も全然違いますし、射っていてもどこに当たるか、自信を持って射てないという状況です。

中村 納射会の2日前に試合に出ていて、そこで弓が傾いててばらばらというだめなところを見つけていたので、そこだけを意識して平射ちは射っていました。それは結構よくできたので、点数は安定したのはそのおかげかなという感じなんですが、トーナメントは本当に苦手で。シードで2回戦からちょうど葵ちゃんと当たったんですが、最初は本当にぼろぼろで、なんとなくそこからつかんだという感じでした。だんだん勝っていくと応援が増えるので、応援が増えたら頑張れたかなと思うんですけど(笑)。決勝でも自信を持って射てた射はすごくいいところに当たったんですが、私のいつもの欠点で手が滑る、外れるというのがひどくなって、時間内に3本射てなくなって負けたところも大きいかなと思います。久しぶりのトーナメントでいい練習になりましたし、課題が見つかってよかったです。

高木 平射ちの72射の前半はぼろぼろで、練習で調子が良かったのが思い通りにできないような感じでした。間の休憩の時に中村に「押す場所を意識して射て」と言われたので、それを意識して射ったらだいぶ戻って良くなりました。トーナメントは私はいつも8点くらいしか射てなくて、平射ちだとなんとかなるんですが、トーナメントになると黄色を狙って射たないと勝てないので、自分の欠点がもろに出たかなという感じです。

「みんなよく笑って、笑顔が似合うチーム」(横塚)


インタビューでは横塚の笑顔ももちろん多く見られた

――お互いの印象についてはいかがですか

横塚 2人ともよく笑うなって。今年の王座メンバーの特徴だと思うんですが、みんなよく笑うので、すごく笑顔が似合うチームだなと思っています。2人もそれに当てはまってて、私はすぐ怒ったりするんですが、2人とも常ににこにこしてるので、私的には助かってます(笑)。

中村 陽菜ちゃんは話してて分かる通りふわっふわですよね。葵ちゃんはどっちかというとしっかりしてて、頼れる女子副将です。いないと私本当に何もできないので(笑)。しっかりして優しい良い子です本当に。

横塚 本当か?(笑)

中村 なんで疑われてんの(笑)。陽菜はふわっふわです。

高木 葵ちゃんは美優も言ってたんですがすごくしっかりしています。思ってることを言ってくれるタイプで、本当に嘘をつかないというか、言葉一つ一つを信じられるという感じです。美優は・・・。(考え込む)

中村 ない?!もう3年目なのに高木~(笑)。

高木 美優ちゃんはなんか、しっかりしてないようでしっかりしているという。

中村 ほめてる?(笑)

高木 ほめてる(笑)。頼れる存在です、精神的にも点数的にも。

中村 なんか雑にまとめられたね葵ちゃん。

横塚 ねー、3年目なのにね。

中村 ちょっと根に持つかもしれない。

高木 でも私ふわふわしてるしか言われてないから(笑)。

――3年生全体の雰囲気などについてはいかがですか

横塚 男子はしゃべらないというわけではないんですが、女子ほど親密に話すことは少ないかなという感じです。女子は誰とでも、もう3年目ということもあるので、結構仲良くて、こうやって急に夜にZoomしよって言っても結構参加してくれます。

中村 女子とは、女子チームだからというのもあるんですが、射型を見合ったり、いろんなことを話したりしていて。今も練習が分かれていて全員とコミュニケーションが取れているわけではないので、まだまだ話したいこと、話せてないこともあるかなという感じですね。

高木 女子とも男子とも話すけど、女子の方が練習中とか練習後によく話すかなという感じですね。3年生はすごく個性豊かなので、話していておもしろいです。

――中村主将の雰囲気はいかがですか

横塚 本当に頼もしい限りです。

中村 嘘くさい!(笑)

横塚 それこそこの間のトーナメントを見ていても、本人的には満足できない面もあったかもしれないんですが、後ろから応援する側としては射てば当たるという安心感はあります。決めるべきところできっちり決めてくれるので、アーチェリー面ではしっかり引っ張ってくれているなというのは感じます。主将としての仕事面でも、チームの中で、ちゃんとして・・・。(どもる)

中村 最初よかったのになー(笑)。上げて落とすタイプだよね。

横塚 でも1、2年生の時からは想像できないくらいしっかりしたので、主将として動いたことで3年目にして新しい一面が見られたかなというふうに思っています。

高木 同じく(笑)。主将になってすごくしっかりしたなと思うし、周りをすごく把握してるなという感じが前より出た印象があります。

――新入生の実力や雰囲気はいかがですか

横塚 髙見ちゃん(愛佳、スポ1=東京・エリートアカデミー/足立新田)は笑顔が似合ってかわいくて(笑)。部を明るくしてくれますし点数面でもすごく支えてくれて、貴重な人材が入ってきてくれたなと思います。まみこちゃん(細井眞美子、人1=東京・早実)は練習があまり被ってなくて、そこまで密にコミュニケーション取れてないですがすごくいい子だなというのはたまに会っただけでも分かるくらいですし、他の3人も明るいです。3年がそんなに底抜けて明るいというメンバーがいないので、1年生の若さという偉大なパワーでチーム全体を明るく盛り上げてくれてるのかなという印象があります。

中村 本当に同感ですね。愛佳とは長くて、U20に入ってた時に一緒のチームで、そこからずっと仲良くしてくれるいい子です。愛佳だけじゃなくてみんな本当にコミュニケーション能力が高くて、よく話しかけてくれたり、にこにこしているので、何の手もかからず元気だなーって(笑)。本当にいい子たちだなと思って助かってます。

高木 愛佳ちゃんに関してはめちゃくちゃいい子だし明るくてたくさん話しかけてくれる上に、アーチェリーの知識も豊富なので、弓のことや射型に関してもアドバイスをたくさんくれて、本当に助かっているなという印象があります。他の1年生に関しては、正直まだそんなに関われてないです。練習が被ってないのか、私が話しかけていないのか分からないんですが、今はもっとしゃべりたいなと思っています。

「もちろん大前提には王座制覇」(中村)


3年連続早稲田代表として王座に挑む中村。今年もこんな笑顔が見たい!

――今後の話に移っていきます。今の状態や調子はいかがですか

横塚 個人的にはさっきも挙げた弦サイトとアンカーの位置を直すことが最優先で、その後はいい感覚、こう射てばこう当たるっていうところまで、自分が自信を持って射てるまで練習を積みたいです。それができるようになってから点数面は考えていきたいなと思っています。

中村 今は自分の課題だったり、これを絶対やるぞという私の中での細かいポイントが一つ一つ明確になっているので、そこだけ守って一射一射の精度を高めていければという状態です。自分としては強い気持ちとそのポイントを守れば当たるというのが分かっているので、精度を高めたいのと、これからは王座に向かって団体戦になるので、周りのことを見て雰囲気を作っていけたらなと思っています。

高木 私はいつも通り射っているはずなのに大きなミスになる射があったりして、自分ではまだ気づけていない癖があるのかなと感じています。引きの肩とかの違和感がありながらも射っているので、そのあたりを直したいと思いつつ直せないという感じです。とりあえず王座までできることを考えたとき、大きなミスを減らすことが一番大事なので、それにつながる癖を見つけ出して意識しながら射っていきたいなと思っています。

――王座とインカレの目標はありますか

横塚 私は本当に辛くもインカレを通過していて、ありがたいことなんですが全然通ると思っていなかったので、いまだに本当なのかな?という認識です。でもせっかくいただいたチャンスですので、いかに練習通りに平常心で射てるかを考えて、なるべく気負わず楽しめるようにインカレは射っていきたいと思います。王座も現地で応援できるかは分からないんですが、残れたら応援したいと思いますし、残れなくてもそれまで4日間は一緒にいるので、王座選手が気持ちよく臨めるようにサポートしていきたいなと思っています。

中村 インカレ単体だけで言えば1年生の時は苦手な雨で対応できなかったり、2年生は不安定でMって外したりでトーナメントに行けたことがないんですね。せっかく今回練習もできたので、絶対にトーナメントまで進みたいなと思っています。王座は1年で1回や2回しかない団体戦のチャンスである国体(国民体育大会)がなくなってしまったので、もちろん大前提に王座制覇はあるんですが、チームとして4人選手がいて3人が射つ、どの立場でもチームを引っ張っていけるような存在でありたいなと思っています。

高木 私は王座に初めて出場することになったので、今のところ緊張はもちろんたくさんしてますし、点数が出なかったらどうしようと不安ではあります。それでも練習でやっていることをしっかり本番でもやって、4番手として選ばれましたが、上の3人が安心できるくらいの点数を本番でも出したいなと思っています。

――ライバルなど、意識している選手や大学はありますか

横塚 応援側としてはぜひとも近畿大学さんに勝ってほしいなと思っています。

中村 近大や同志社にはオリンピックに行けるか行けないかという選手がたくさんいて、やっぱり自分とその選手の間には壁があると思っているので、意識はしてるんですがライバルとは言い切れないかなと思っています。個人的には同志社や近大の選手にも個人としても団体としても勝ちたいなと思ってはいます。

高木 私も近畿や同志社の選手と並べるような点数を射てていないので、どちらかというと早稲田の3人についていくような気持ちで頑張ろうと思っています。

――最後に、王座とインカレへの意気込みをお願いします

横塚 インカレはせっかくいただけたチャンスなので、しっかり準備をしつつ、本番でも楽しめるように気持ちを持っていきたいなと思っています。王座に関しても出るメンバーには今のところ心配している面はないので、彼女たちがいつも通りのパフォーマンスをしてくれることを祈りつつ、応援しています。

中村 無観客でいつもとは違う状況での王座やインカレになりますが、早稲田は今回12人くらいで行くのと監督やコーチも来てくださるので、みんな心強い味方だと思っています。王座制覇するのでぜひ皆さん応援していただけたらと思います。

高木 私も王座制覇に貢献できるような選手になれるように残り1週間と少ししかないですがしっかり練習を重ねて、王座本番でも点数を出したいなと思っています。応援してくれる方々の期待に応えられるように頑張っていきます。

――ありがとうございました!

(取材・編集 朝岡里奈)

◆中村美優(なかむら・みゆ)

1999(平11)年11月17日生まれ。北海道・旭川北高出身。スポーツ科学部3年。自粛期間中は実家に帰り、家族で過ごす時間と楽しんだという中村選手。今後の女子部を引っ張る主将の活躍に期待です!

◆横塚葵(よこづか・あおい)

1999(平11)年7月24日生まれ。埼玉・栄東高出身。文化構想学部3年。自粛期間中は資格試験の勉強にも励んでいたという横塚選手。インタビューも落ち着いて話してくださり、頼れる副将のしっかりした一面が見られました。

◆高木陽菜(たかぎ・はるな)

2000(平12)年2月9日生まれ。東京・国際基督教大高出身。スポーツ科学部3年。とても柔らかい雰囲気が印象的な高木選手。自粛中は料理をすることもあり、家族のためにとんかつやハンバーグを作ったそうです!